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7話 俗に言う大人買いです
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手当り次第…?!これだけの量を何も考えずにとりあえず買ったというのかしら、ライアーは!?
「ささ、お嬢様。あちらの衝立の向こうでお着替えくださいませ。念の為に僕は隣の部屋で待機しておりますので……何かあればお呼びくださいまし」
そうやってライアーは箱の山を前にして呆然とする私を置いて、ぺこりとお辞儀をして部屋を後にする。
「…とりあえず、どれか着てみようかしら」
がさつに箱を選んで、中身を取り出す。
出てきたのは裾や袖がフリルになっていて私が思い描いた、可愛い服と呼ぶに相応しいそれだった。
「まぁ、すごく可愛い服ねこれ…!」
他にも似た基調の帽子や靴や鞄もあったことから察するに、この辺りは同じ服飾店の商品なんだろう。
次々箱に手を出し服を出してはそれを着て、1人着せ替えごっこを楽しんでいた。
スカートを少しつまみ、翻したり振り返ったりしていると、ついつい笑みがこぼれる。
憧れの可愛い服をこんなにもたくさん着ることができて、それによる嬉しさとこそばゆさに頬が緩んでしまったらしい。
「これ……あの子に似合いそう」
新たに手に取った1着のドレスを見て、ふとそう思った。
桃色と白のシンプルでありながらもリボンとフリルが、たくさんあしらわれている可愛いドレス。
こういう服を見ると、思い出してしまう。
あの子が──妹がよく着ていたから。
馬鹿だけど、純粋で無垢で…こんな私でも、お姉様と慕ってくれていた可愛い妹。
可愛い可愛い私の妹。
お家のしがらみを全て貴女に任せる事になってしまってごめんなさい。
幼い貴女を残して逃げ出した事を許して。
「………セルナの事を考えていても服は決まらないわ。今は、普通に服を選びましょう」
もうきっと、二度とあの子に会うことはないのだろうから。
どうせなら最後にもう一度だけ、お姉様と呼んでもらえばよかった。
もっとも…犯罪者となってしまった姉のことなんて、名前で呼びたくないかもしれないけど。
「…名前と言えば、私の新し名前を考えないといけないんだった」
私はもうセレスティアでは無いから、別の名前が必要になってくる。
これからことある事に自身をセレスティアと名乗ることになるのは、非常にまずいですから。
「名前……うーん、名前…そうだ。アレとかいいかもしれないわ…」
*
人の行き交う昼下がり。髪や服を変えて少し化粧をした私は、ものの見事に別人となる事ができた。
もうこれで大丈夫だと思い、ローブを被ることなく普通に食事をとる。
それにしては、やけに周りからの視線が多い。気づかれてない…よね?
「そうだ、ライアー」
「なんでしょうか、お嬢様」
手にしていた食器を置いてこちらを見る。
「あのね……名前…考えてみたの」
「そうなのですか?一体、どのようなお名前なのか…僕にもお教えいただけませんか?」
すぅ、と肩を上下して呼吸を整える。
「…リリィ……なんてどう、かしら?」
やっぱり、私みたいな人には似合わない可愛い名前だから…少し反応が微妙な気もする。
と思ったのは杞憂だったようで。
「とても良いお名前です、お嬢様。美しく聡明な貴女様に相応しい名前かと」
想像以上に褒めてくれる。
人間というものをよくわかっているなぁ、ほんと。
ちなみに。このリリィという名は…実は、ライアーの名前の文字を少し借りて考えたものだ。
ライアーの字に少し言葉を付け足すとリリィとなった。
これからもずっと一緒にいてくれるという、今となっては私の唯一の家族となってしまった執事。
とはいっても、少し恥ずかしから由来なんてものは無いことにしよう。
もし話す時が来ても…それはいつになるのかしら。
「ささ、お嬢様。あちらの衝立の向こうでお着替えくださいませ。念の為に僕は隣の部屋で待機しておりますので……何かあればお呼びくださいまし」
そうやってライアーは箱の山を前にして呆然とする私を置いて、ぺこりとお辞儀をして部屋を後にする。
「…とりあえず、どれか着てみようかしら」
がさつに箱を選んで、中身を取り出す。
出てきたのは裾や袖がフリルになっていて私が思い描いた、可愛い服と呼ぶに相応しいそれだった。
「まぁ、すごく可愛い服ねこれ…!」
他にも似た基調の帽子や靴や鞄もあったことから察するに、この辺りは同じ服飾店の商品なんだろう。
次々箱に手を出し服を出してはそれを着て、1人着せ替えごっこを楽しんでいた。
スカートを少しつまみ、翻したり振り返ったりしていると、ついつい笑みがこぼれる。
憧れの可愛い服をこんなにもたくさん着ることができて、それによる嬉しさとこそばゆさに頬が緩んでしまったらしい。
「これ……あの子に似合いそう」
新たに手に取った1着のドレスを見て、ふとそう思った。
桃色と白のシンプルでありながらもリボンとフリルが、たくさんあしらわれている可愛いドレス。
こういう服を見ると、思い出してしまう。
あの子が──妹がよく着ていたから。
馬鹿だけど、純粋で無垢で…こんな私でも、お姉様と慕ってくれていた可愛い妹。
可愛い可愛い私の妹。
お家のしがらみを全て貴女に任せる事になってしまってごめんなさい。
幼い貴女を残して逃げ出した事を許して。
「………セルナの事を考えていても服は決まらないわ。今は、普通に服を選びましょう」
もうきっと、二度とあの子に会うことはないのだろうから。
どうせなら最後にもう一度だけ、お姉様と呼んでもらえばよかった。
もっとも…犯罪者となってしまった姉のことなんて、名前で呼びたくないかもしれないけど。
「…名前と言えば、私の新し名前を考えないといけないんだった」
私はもうセレスティアでは無いから、別の名前が必要になってくる。
これからことある事に自身をセレスティアと名乗ることになるのは、非常にまずいですから。
「名前……うーん、名前…そうだ。アレとかいいかもしれないわ…」
*
人の行き交う昼下がり。髪や服を変えて少し化粧をした私は、ものの見事に別人となる事ができた。
もうこれで大丈夫だと思い、ローブを被ることなく普通に食事をとる。
それにしては、やけに周りからの視線が多い。気づかれてない…よね?
「そうだ、ライアー」
「なんでしょうか、お嬢様」
手にしていた食器を置いてこちらを見る。
「あのね……名前…考えてみたの」
「そうなのですか?一体、どのようなお名前なのか…僕にもお教えいただけませんか?」
すぅ、と肩を上下して呼吸を整える。
「…リリィ……なんてどう、かしら?」
やっぱり、私みたいな人には似合わない可愛い名前だから…少し反応が微妙な気もする。
と思ったのは杞憂だったようで。
「とても良いお名前です、お嬢様。美しく聡明な貴女様に相応しい名前かと」
想像以上に褒めてくれる。
人間というものをよくわかっているなぁ、ほんと。
ちなみに。このリリィという名は…実は、ライアーの名前の文字を少し借りて考えたものだ。
ライアーの字に少し言葉を付け足すとリリィとなった。
これからもずっと一緒にいてくれるという、今となっては私の唯一の家族となってしまった執事。
とはいっても、少し恥ずかしから由来なんてものは無いことにしよう。
もし話す時が来ても…それはいつになるのかしら。
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