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第五章・帝国の王女
577.Main Story:Ameless
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「……──え? あい、されている? あたし、が……?」
唖然とする彼女の唇が、僅かに震える。それと同時に、その可愛らしい顔が、ある一点へと向けられた。
彼女も元アンディザプレイヤーだからだろうか。きっと、『王子様』という言葉を聞いて察しがついたのだろう。
「……ロイ。あたし、のこと……あいしてる、の?」
問われたロイは少し間を置いて、真剣な面持ちで頷き、
「──うん。おれは、ミシェルのことを愛してる。あの日……きみがおれの手を握って走り出してくれた、あの時から。おれはずっと、ミシェルのことが大好きだよ」
はにかみながら、ゲームの彼とは違う告白の言葉を口にした。
『あの日……きみが、親に捨てられたおれに手を差し伸べてくれたあの時から。おれはずっと、ミシェルのことが大好きだよ』
そう言って告白していたあのロイが、ゲームとは違う言葉で懸命に想いを伝えようとしている。
その事実が、彼女に現実を受け入れさせたのだ。
「ほん、とうに……あたし、あいされて、いたんだ……こんな『あたし』が…………っ」
「こんな、なんて言わないでよ。おれのミシェルは世界で一番可愛くて、優しい女の子なんだから」
「~~っ」
涙ぐむミシェルちゃんの背中を、ロイがゆっくりと擦る。
その光景を見守っていたら、「世界一可愛いのはうちの妹だが」とフリードルが突然ボケはじめて、「激しく同意する」「そうですね!」「ハイ世界の真理ィ~~」「(ヘドバンのようなキレのある首肯)」と男性陣が続々とそのボケに乗っかったのだ。
自由すぎるよ、この天使を自称する美男子達。少しぐらい空気を読んでくれ。
まあ──学ばずに繰り出された、アルベルトの「それに、主君はとても優しいよね」という発言に関しては甘んじて受け入れたが。
アルベルトはいい子ね~~っ! 今度、お団子でも作ってあげちゃおうかしら。
「……ほら、もう分かったろ。アンタの願いはわざわざ願わずとも既に叶ってるんだよ、女子大生」
わいわいと賑わうガヤの中から、一等強く聞こえてきた声。それはカイル・ディ・ハミルのものでありながら、どこか彼らしくない音色だった。
「────え?」
カイルの言葉が聞こえたのだろう。ミシェルちゃんはバッと顔を上げて、目を丸くする。
「アンタは“普通に愛されたい”のであって、“皆に愛されたい”訳じゃねぇだろ。自分を見失い過ぎだ、アホ娘。……願いは叶ったんだ。だからもうこれ以上、無意味な願いを抱くのはやめろ──『佐倉愛奈花』」
「~~~~っ!!」
私達にしか聞こえない声──日本語で放たれた、聞き馴染みのある語感の人名。
サクラマナカ……まさか、『彼女』の名前なの? 仮にそうだとして、どうしてカイルがそれを知って…………?
「おにい、さん……?」
あれれぇ? なんか知り合いっぽいぞぅ。
「なんだよ。女子大生」
「なんで、あたしって分かったの?」
「そりゃあそんだけ口調や振る舞いが似てたら気づくだろ。つーか、俺の受け売りまで話してた自覚ねぇの? ……まあ、あれもこれも全部、気づいたのはカイルだけどな」
何やら本当に前世の知り合い同士らしい二人が、えらく親しげに話す。
「……っお兄さんのキザ男!」
「は!?」
「あたしなんて全然分からなかったのに! なんでお兄さんばっかり!!」
「だって俺はちゃんとカイルやってたから……って、オイ! 水飛ばすなっ、服が濡れるだろうが!!」
本当に、とても、仲良く二人は騒ぎ出す。
これにはもう、誰もが置いてけぼり。水を飛ばしそれを避ける。そんな攻防を繰り広げる二人を、ただ眺める事しか出来なかった。
……私だって転生者なのに。私だって元日本人なのに。なんでこんなに、疎外感に襲われるんだろうか。
せっかくの転生者仲間なのに……二人だけ知り合いで私だけ無関係の第三者なの、なんかやだなぁ…………。
と、友達を取られた子供のように拗ねてみる。
「……イリオーデ。GO」
「仰せのままに」
胸がモヤモヤしたまま話を進めたくないので、カイルを指差し番犬を出動させる。イリオーデがカイルをヘッドロックで仕留め、捕獲。俵担ぎで帰還した。
「なんで…………??」
投げ捨てるように乱雑に降ろされ、「ぶへっ」と情けない声を発した直後。カイルが地面にへたり込み、困惑した様子でこちらを見上げてきた──が。とりあえずスルーして話を進めよう。勿論、ただの腹いせだ。
唖然とする彼女の唇が、僅かに震える。それと同時に、その可愛らしい顔が、ある一点へと向けられた。
彼女も元アンディザプレイヤーだからだろうか。きっと、『王子様』という言葉を聞いて察しがついたのだろう。
「……ロイ。あたし、のこと……あいしてる、の?」
問われたロイは少し間を置いて、真剣な面持ちで頷き、
「──うん。おれは、ミシェルのことを愛してる。あの日……きみがおれの手を握って走り出してくれた、あの時から。おれはずっと、ミシェルのことが大好きだよ」
はにかみながら、ゲームの彼とは違う告白の言葉を口にした。
『あの日……きみが、親に捨てられたおれに手を差し伸べてくれたあの時から。おれはずっと、ミシェルのことが大好きだよ』
そう言って告白していたあのロイが、ゲームとは違う言葉で懸命に想いを伝えようとしている。
その事実が、彼女に現実を受け入れさせたのだ。
「ほん、とうに……あたし、あいされて、いたんだ……こんな『あたし』が…………っ」
「こんな、なんて言わないでよ。おれのミシェルは世界で一番可愛くて、優しい女の子なんだから」
「~~っ」
涙ぐむミシェルちゃんの背中を、ロイがゆっくりと擦る。
その光景を見守っていたら、「世界一可愛いのはうちの妹だが」とフリードルが突然ボケはじめて、「激しく同意する」「そうですね!」「ハイ世界の真理ィ~~」「(ヘドバンのようなキレのある首肯)」と男性陣が続々とそのボケに乗っかったのだ。
自由すぎるよ、この天使を自称する美男子達。少しぐらい空気を読んでくれ。
まあ──学ばずに繰り出された、アルベルトの「それに、主君はとても優しいよね」という発言に関しては甘んじて受け入れたが。
アルベルトはいい子ね~~っ! 今度、お団子でも作ってあげちゃおうかしら。
「……ほら、もう分かったろ。アンタの願いはわざわざ願わずとも既に叶ってるんだよ、女子大生」
わいわいと賑わうガヤの中から、一等強く聞こえてきた声。それはカイル・ディ・ハミルのものでありながら、どこか彼らしくない音色だった。
「────え?」
カイルの言葉が聞こえたのだろう。ミシェルちゃんはバッと顔を上げて、目を丸くする。
「アンタは“普通に愛されたい”のであって、“皆に愛されたい”訳じゃねぇだろ。自分を見失い過ぎだ、アホ娘。……願いは叶ったんだ。だからもうこれ以上、無意味な願いを抱くのはやめろ──『佐倉愛奈花』」
「~~~~っ!!」
私達にしか聞こえない声──日本語で放たれた、聞き馴染みのある語感の人名。
サクラマナカ……まさか、『彼女』の名前なの? 仮にそうだとして、どうしてカイルがそれを知って…………?
「おにい、さん……?」
あれれぇ? なんか知り合いっぽいぞぅ。
「なんだよ。女子大生」
「なんで、あたしって分かったの?」
「そりゃあそんだけ口調や振る舞いが似てたら気づくだろ。つーか、俺の受け売りまで話してた自覚ねぇの? ……まあ、あれもこれも全部、気づいたのはカイルだけどな」
何やら本当に前世の知り合い同士らしい二人が、えらく親しげに話す。
「……っお兄さんのキザ男!」
「は!?」
「あたしなんて全然分からなかったのに! なんでお兄さんばっかり!!」
「だって俺はちゃんとカイルやってたから……って、オイ! 水飛ばすなっ、服が濡れるだろうが!!」
本当に、とても、仲良く二人は騒ぎ出す。
これにはもう、誰もが置いてけぼり。水を飛ばしそれを避ける。そんな攻防を繰り広げる二人を、ただ眺める事しか出来なかった。
……私だって転生者なのに。私だって元日本人なのに。なんでこんなに、疎外感に襲われるんだろうか。
せっかくの転生者仲間なのに……二人だけ知り合いで私だけ無関係の第三者なの、なんかやだなぁ…………。
と、友達を取られた子供のように拗ねてみる。
「……イリオーデ。GO」
「仰せのままに」
胸がモヤモヤしたまま話を進めたくないので、カイルを指差し番犬を出動させる。イリオーデがカイルをヘッドロックで仕留め、捕獲。俵担ぎで帰還した。
「なんで…………??」
投げ捨てるように乱雑に降ろされ、「ぶへっ」と情けない声を発した直後。カイルが地面にへたり込み、困惑した様子でこちらを見上げてきた──が。とりあえずスルーして話を進めよう。勿論、ただの腹いせだ。
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