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3章

にじゅーはち

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「猫を祓われたらどうしようかと思った。見えなくても、大事な猫だ」

猫?
いつ猫の話をしていたのだろうか。ちょっとビックリする。
白猫は私をじっと見ていた。前は忙しなかったしっぽは今は落ち着いている。

「猫は祓いませんよ」

「え」

「猫又ですから、祓う必要がありません」

「待って、猫又って何」

そこからか。
猫又を知らないとは面倒な。私は陛下に、猫又の存在を教えることにした。

「猫の高位霊です。寿命を終えた猫が修行をしてなった姿と言われています。守護霊に近いかと」

「守護霊…………!?」

裏返った声で陛下が言う。そんなに驚いたのか。
白猫は満足そうに喉を鳴らした。

だけど陛下、白猫が見えていないのはちょっと可哀想だな。白猫はこんなに陛下が好きなのに。
何かいい方法がないかと考えて、私はふと手元に神楽鈴を呼び出した。突然現れた神楽鈴に陛下が腰を引いた。何も神楽鈴で殴ろうという訳では無いのに。

「それは?」

「私の武器です」

陛下は黙ってしまった。しゃん、しゃん、と2回振る。
鈴は未だにひとつ取れたままだ。
私が回復するまではこのままだろう。
2回振ると白い塊だった白猫が徐々に鮮明に形を持ってくる。ぱちりとした青い瞳が見える。綺麗な白猫だ。

「にゃおん」

白猫がくるくるとベッドの上を歩いた。

「猫!」

陛下が叫んだ。え。猫って白猫の名前なの。

「猫だ……猫…」

「猫とは、白猫の名前ですか?」

聞くと陛下はこちらを見ずに答えた。
陛下の手は白猫の顎を撫でている。白猫は満足そうだ。

「ああ。他にもエレンヌホァッガードとかレリーヌリーズリー、パトリシアネットとか色々あったんだけど全然決まらなくて結果猫になった」

どうしてそうなった。
少し気になったけど陛下が楽しそうだからまあいいかと思う。
私は神楽鈴を手の中に収めながら陛下に聞いた。

「眷属にしたらいかがですか?」

「眷属?」

「このままでは野良猫同然なので」 

ふわふわとした存在だった猫又ではなく、もう既に白猫は立派な使い魔だ。
主が居ないのは不便だと思う。
そう思って言うと、陛下は目を細めた。

「眷属か……それは契約主が僕じゃなくてもいいのかな」

「問題ありません」

だけど陛下以外に誰を主にするのだろう。

「きみが、猫の主になって」

白猫がこちらを見る。
つぶらな瞳は不満そうにも見えた。

「それはちょっと」 

「僕だと何かあっと時対処出来ない。だけど、きみだったら何とかできるだろう?」

出来ないかもしれないけど。
私が黙ってると急に陛下は真剣な顔をした。

「でも、基本的に猫は僕のところに置いて欲しい」

陛下は本当に猫が好きなようだ。
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