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1章
なな!
しおりを挟む厨房でご飯を食べて自室に帰ろうとすれば、金髪の少年が話しかけてきた。
どうやら彼も私が見えるようだ。嬉しい。
前髪くるくる少年は一見女の子と思うほど可愛らしい顔立ちをしていたが、声が低かった。
「デボラが言っていたことは本当だったな。幽鬼のような女だ」
少年は私を見るとすぐさま下から睨みつけるようにして言った。
屈んであげた方がいいのかな。
少し迷ったけどそのままでいることにした。
この年頃の男の子は繊細だと言うし、下手にプライドを傷つけたら可哀想だ。
それにしても勇気のある人間だなんて褒めてくれたのは一体誰なのだろう。
母国とこの国はあまり仲が良くない。
母国は昔ながらの歴史ある国で、この国は最近興ったばかりで歴史が浅い。
それを私の国は軽んじていた。
だけどこの国からしてみたら歴史こそ長いものの、文化力も国事力もこちらの方が上なのに偉そうにされるのは気に食わないのだろう。
国交が穏やかとは言い難いこの国に単身でやってきた私をそのデボラというひとは評価してくれたのだろう。私は嬉しくなった。
「デボラさんにお礼を言わないけといけませんね」
「な………!デボラにお礼参りをするつもりか!」
少年も喜んでくれるだろうと思ったのに、なぜか彼は顔を青ざめさせた。
なにか私にお礼を言われて困ることでもあるのだろうか。
デボラさんがかなりの照れ屋さんとか?
だけどせっかくだからお礼を伝えたいし、仲良くなりたいな。
「そのつもりです」
「王妃の権限で罰を与えるのか!本当のことだろう!幽鬼のような女というのは!そんな物の怪ともひととも判別できないような出で立ちで~~~༄〰ゞ■◎」
どうやら少年も私のことを褒めてくれているらしい。勇気のある女だって。嬉しいな。
少年とも仲良くなれたらいい。
でも、そもそもこの子は誰なのだろう。
そう思ったところで少年が声をはりあげて言った。
「僕は兄上の弟だぞ!わかってるのか。皇帝陛下の弟なんだ!!」
どうやら陛下の弟らしい。
少年は顔を真っ赤にさせて怒っている。
何でさっきからそんなに怒ってるのか不思議だったけど、ようやくわかった。
きっと突然お兄様が結婚して寂しくなっちゃったのだわ。
せっかく少年が名前を名乗ってくれたのだから、私も名乗ろうと思う。
だけどブラコンを拗らせている少年の前で妃と言ったら余計に怒らせてしまうかもしれない。
「霊媒師のミシェラです」
「だ、だからなんだ。幽霊なんて怖くないからな!」
「陛下はずっと見守ってくださると思いますよ」
私がお兄様をとることはないから安心して欲しい。
そのつもりでにこりと微笑めば、しかし少年は今度こそ固まってしまった。
「あ、兄上が殺される……………」
突然そんなことを呟いて少年は走り出してしまった。
陛下が殺されそうだなんて何で分かるのだろう。
もしかして予言者かなにかなのかしら。あの少年も異能力者なのかもしれない。
それにしても、陛下は大丈夫かしら。
少し心配になったが猫又もいることだしきっと大丈夫だろう。
少年も走っていったしね。
私はデボラさんを探さなきゃ。
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