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1章

さん。

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次の日、どうやら陛下が落ち込んでいるようだと風の噂で聞いた。
侍女たちがきゃぁ、落ち込んでる陛下も様になるわなんて言ってたけど狐の面をつけていてそんなのわかるのだろうか。

もしかしたらこの城にいる侍女には特殊能力が備わっているのかもしれない。
だからその代償というか、仕様というか、他国民である私のことは認識できないのだろう。
基本的に侍女たちは私が見えないようだだ。だからお腹が減ったら勝手に厨房に忍び込んでいる。

厨房に入ると驚いた顔をされるから厨房務めの人は見えるのだろうか。
お腹減ったのでなにかご飯くださいと言ってテーブルに着くと不味そうな塩水っぽいスープが出された。ほかの侍女たちは湯気のたつ美味しそうなスープを飲んでいたからわたしだけ特別なのかもしれない。これがこの国流のおもてなし方法なのだろう。
せっかく特別仕様の食事を出したけれど私は塩水は嫌いだ。

幼い頃水の代わりに塩水をよく飲んでいたからだ。

塩分補給のためにせっせと姉は私に飲ませてくれたけれど、塩水は逆に喉が乾いてくるからこっそりお姉様の育てていたプランターに捨てておいた。
お姉様は母親が違うけれど私にとても優しくしてくれる。お姉様は優しいひとだ。

第二王子殿下からいただいたお花が急に枯れてしまった時もとても泣いていた。
あまりにもお姉様が泣くものだからお姉様が悪いんじゃない、と伝えるために「死霊の仕業よ」と嘘を教えたら余計に泣いてしまった。
どうしてかしら。
それからお姉様は私に塩水を飲ませようとすることもなくなってしまった。
成長期の私にはもう不要だと思ったのだろう。

そんなことを思い出しながら、お姉様に申し訳なく思う。
あの国はあと一週間も持たないだろうから。

あの国は過去何をしでかしたのか死霊がうじゃうじゃいた。それを私が頑張って食い止めていたのだ。食い止めが無くなれば増殖するのは当然だろう。
それをわかっていながら私を国から逃がしてくれたのだからお父様は本当に娘思いだ。

おもてなし仕様のスープは食べれないが捨てるのは勿体ない。私は近くにいた顔見知りの侍女と食事を交換した。
そして彼女の食事を食べれば自国と似たような味がして美味しかった。
交換した侍女は顔を青ざめさせていた。
もしかしたらこの特製スープが嫌いなのかもしれない。特別だからってみんな好きとは限らないわよね。私だって年跨ぎを祝う時に食べる豆は嫌いだわ。
だけど私と違って彼女は仲のいい友人もいるだろうしきっとその友達に分けるだろう。

王妃が侍女に毒入りのスープを飲ませようとしたと噂になっている。全くそんな酷い噂を流すのは誰なんだ。
だけどよくよく考えてみれば私はあまり侍女と接していないし、他国の話かもしれない。そんな王妃に仕える侍女は可哀想だ。
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