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ソフィア

どう見てもおねショタ

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「そうか、魔女イゾルデが死んだか」

国王はあごひげを撫で付けて笑みを浮かべた。
息子に異様な執着を見せる魔女が消えたと知り、親としては一安心なのだろう。
ソフィアは報告に訪れながらも、奇妙な焦りを隠せない。
宰相であるソフィアの父は、ソフィアを見て尋ねた。

「それで、呪いの解呪の方はどうなのです」

父に無機質に尋ねられたソフィアは真っ直ぐに見返して答える。

「変化はありません」

「ふむ……魔女を殺しても解呪はしない、と」

「宮廷魔導師によると、魔女が死んだことで呪いが変質している可能性があると」

宰相の言葉に国王はますます思案顔だ。
あごひげを撫で付けた国王はちらりとソフィアに意味深な視線を投げる。その視線ひとつで、ソフィアは任務が終わっていないことを知る。

「ソフィアよ。お前とロウディオの関係は良好か」

「は。陛下……。変わりなくお優しくしていただいております」

(変わりなく……)

ソフィアが頭を垂れて肯定すると、国王はでは、と続けた。

「ではもう少しだけ……我が息子を手伝ってはもらえぬか」

「……かしこまりました」

国王の"頼み"という名の命令を拒否するほどの権力を、ソフィアは持っていない。


◆◆◆


まるで初夜床の娘のように純白の絹の夜着に身を包んだソフィアは気が重かった。化粧台の鏡の中には憂鬱そうにしている娘の顔がある。ソフィアは今から行うことを考えて、腰が重い。
十三歳のロウディオは、性教育の座学を受けているだろうか。もはや何の知識もない状態でソフィアと……など、それこそ気が重い。
ソフィアは半ば祈るような気持ちで夫婦の寝室へと向かった。向かう途中、彼女は色々なことを思い出した。
それは、ふたりの紛れもない初夜の時のことだとか、だんだんと見知らぬ女の香水の残り香をつけてくるようになった彼のことだとか。思い出す度に足は重くなる、そちらに向かうのが億劫になる。

(私がリードするの……)

半ば絶望的な思いでソフィアはのろのろとそちらに向かった。
貴族の男子の閨教育は未亡人か高級娼婦が定石だが、この分では例えソフィアが未亡人になろうと閨教育を施す教師にはなれないだろう。夫との経験がそれなりにある彼女だというのに、戸惑いが隠せない。
それでもようやく夫婦の寝室へと辿り着くと、ソフィアの後ろに控える侍女はほっとしたような顔をした。ソフィアの足取りがあまりにも亀よろしくのろのろとしたものだったので、ようやくたどり着けたことに安心したのである。
ソフィアは扉を守る騎士と侍女に見送られ、寝室へと踏み込んだ。
まだ、ロウディオは来ていないらしかった。ソフィアはそれに息を吐く。
そして、震える手を抑えるようにサイドテーブルにあるカップから水を一口飲む。心做しか落ち着いた気がする。
間もなく、ロウディオが現れる。
彼の黄金の毛先はまだ濡れているようだ。湯上りのようで、頬も赤く染まっている。
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