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苦しみと幸福は、常に表裏一体で ※R18
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「ぁ……あ──」
はら、と視界が開ける。
突然光が飛び込んできて、眩しい。
視界の先には、リュアンダル殿下がいて、どこか苦しそうに私を見ていた。
「でん、か……ぁッ!」
ふと、彼の指が引き抜かれて、それにすら甘い声が出る。
たくさん喘いでしまったためか、私の声は掠れていた。
「……手のこれも、解くけど。逃げないでね」
「……?」
彼の言葉を、不思議に思う。
この状況で、逃げられるはずがない。
いや、そもそも私が彼から逃げるはずがないのに。
それでも、こくりとちいさく頷いた。
「このまま──」
彼の指先が、なにかを確認するように私の首筋に触れる。
そのまま彼の指が、撫でていく。私の肌を、皮膚を。
「きみを、この手にかけたら。きみは僕のものになる?」
「──ぅ」
彼の指が、私の喉を押す。
少し苦しく身をよじると、その手は直ぐに離れた。
彼は、少し泣きそうな顔で笑っていた。
「……なんてね。冗談」
「……リュアンダル……殿下?」
「うん」
彼はそれしか言わなかったけど、私の手の拘束をするりと解いた。
手に自由が戻る。
リュアンダル殿下はそのまま、トラウザーズの前を寛げた。
なんてことなさそうに、いつも通りの顔をしているのに、していることはいやらしくて、そのちぐはぐさに目をそらす。
そうすると、彼に手を握られた。
そっと、指先が絡められる。
「ごめんね、シュネイリア」
彼はまた、謝る。
なぜ彼が謝るのか、私には分からない。
彼を見ると、リュアンダル殿下と視線が絡む。
彼が、柔らかく笑った。
お日様のような、穏やかであたたかな微笑みだ。
「やめられない」
「あっ……!?」
ぐっと腰を押し付けられて、彼のものが、なかに入ってくるのがわかった。
感覚は如実で、彼を、とても感じる。
以前はもう、何が何だかわからなかった。
だけど、今は。
「あっ……ぁ、あ、あ!」
声が、出てしまう。抑えようが無い。
だって、こんなに嬉しい。
こんなにも、私は幸を感じている。
嬉しくて、幸せで、同じくらい、少し苦しい。
「リュ、アンダル殿下っ……ぁっ……くる、し」
それは、彼を受けいれているからこその苦しみなのか、この胸がもたらすものなのか。
もう私にはわからない。
だけど彼は前者だと判断したようで、彼もまた軽く息を詰めながら言った。
「大丈夫。ゆっくり、やるから」
「ぁっ……ぁ、あ!?やっ、だめ、そこ、や、ァッ……ああ!!」
彼の指が、互いに繋がる場所に触れる。
その指が滑ると、先程の痺れる快楽が、否応なしに這い上がってきた。
逃げようがなくて、それを受け止めるしかない。
私は、彼と握った手に力を込めた。
縋りたくて。
「あっ、あっ……!だめ、やっ……ぁ、ああ!あっ……!」
「き、ついけど……入りそう、だね。一回、達しておこうか」
彼が囁くように私に言った。
私はソファの座面に頬を擦り付けて、首を横に振る。
ひとりで乱れて、ひとりだけ快楽を極めてしまうのは、悲しい。
ひとりは、いや。
「やっ……もう、いい、の!いい、からぁ」
声に、甘さが交ざってしまう。
鼻にかかった、女の声だ。
私はそんな声で、彼にすがった。
彼の指が、淫液をまとって、女の性感帯に触れる。
そのまま擦られるように、追い詰めるようにして触れられれば、快楽の先に達するのはすぐだった。
「あっ、あ、いや、ぁっ……!ぁ、────!っ……!う、ぁ、は、あぅっ……!」
体がびくびくと震える。
その反応を殺すことはできず、私は彼の手に自身の頬を擦り付けた。
「っ……うん、はいった。わかる?ほら」
彼が、私の手を握る。
指を絡めて、きゅ、と握られる。
奥を突かれて、あまりにも敏感に私は反応してしまった。
「ぁっ!?」
「……うん、痛くはなさそう、だね」
彼は、私の顔を見てそう判断したようだった。
そのまま、彼は私と手を握ったまま、腰を動かす。
擦られる度、押し上げられる度に甘い快楽が走る。
もう、どうしようもない。
どうしようもなく、私は今、自分が女であることを実感していた。
だって、こんなにも。
こんなにも、気持ちが良くて、幸せだ。
好きなひとに抱かれて、好きな人に触れられて。
例えそこに私の求めるものがなかったのだとしても、今この時だけは幸福を感じてしまう。
どうしようもない女だ。
「ぁっ……あ、あっ……!」
繋いでない手は、彼の背に回す。
そうすると、リュアンダル殿下が屈んでくれて、額に、頬に、口付けを落としてくれた。
そして、涙が残っているのだろう。
その飛沫を、舌で舐め取られた。
「きゃ、う……っ」
「は、……気持ちいい、ね?」
彼が、頬を赤く染めて、笑った。
それがなんだか、とても幸せで。
嬉しくて、それだけで、また甘い快楽が走ったような気がした。
それから、リュアンダル殿下は私の中に熱を放つと、私をベッドに運んだ。
性行為は、思った以上の疲労を伴う。
夜会の疲れも合わさってうとうととしていると、彼の手が私の目元を覆った。
「寝ていていいよ。ゆっくり、休んで」
彼の声が、遠くに聞こえる。
穏やかで、優しい声だ。
リュアンダル殿下。
あなたは、何を考え、何を思っているのだろうか。
私が死ぬまでに、それは、わかるのだろうか……?
「おやすみ、シュネイリア。いい夢を」
彼のその声を聞いたのを最後に、私の意識は闇に沈んだ。
はら、と視界が開ける。
突然光が飛び込んできて、眩しい。
視界の先には、リュアンダル殿下がいて、どこか苦しそうに私を見ていた。
「でん、か……ぁッ!」
ふと、彼の指が引き抜かれて、それにすら甘い声が出る。
たくさん喘いでしまったためか、私の声は掠れていた。
「……手のこれも、解くけど。逃げないでね」
「……?」
彼の言葉を、不思議に思う。
この状況で、逃げられるはずがない。
いや、そもそも私が彼から逃げるはずがないのに。
それでも、こくりとちいさく頷いた。
「このまま──」
彼の指先が、なにかを確認するように私の首筋に触れる。
そのまま彼の指が、撫でていく。私の肌を、皮膚を。
「きみを、この手にかけたら。きみは僕のものになる?」
「──ぅ」
彼の指が、私の喉を押す。
少し苦しく身をよじると、その手は直ぐに離れた。
彼は、少し泣きそうな顔で笑っていた。
「……なんてね。冗談」
「……リュアンダル……殿下?」
「うん」
彼はそれしか言わなかったけど、私の手の拘束をするりと解いた。
手に自由が戻る。
リュアンダル殿下はそのまま、トラウザーズの前を寛げた。
なんてことなさそうに、いつも通りの顔をしているのに、していることはいやらしくて、そのちぐはぐさに目をそらす。
そうすると、彼に手を握られた。
そっと、指先が絡められる。
「ごめんね、シュネイリア」
彼はまた、謝る。
なぜ彼が謝るのか、私には分からない。
彼を見ると、リュアンダル殿下と視線が絡む。
彼が、柔らかく笑った。
お日様のような、穏やかであたたかな微笑みだ。
「やめられない」
「あっ……!?」
ぐっと腰を押し付けられて、彼のものが、なかに入ってくるのがわかった。
感覚は如実で、彼を、とても感じる。
以前はもう、何が何だかわからなかった。
だけど、今は。
「あっ……ぁ、あ、あ!」
声が、出てしまう。抑えようが無い。
だって、こんなに嬉しい。
こんなにも、私は幸を感じている。
嬉しくて、幸せで、同じくらい、少し苦しい。
「リュ、アンダル殿下っ……ぁっ……くる、し」
それは、彼を受けいれているからこその苦しみなのか、この胸がもたらすものなのか。
もう私にはわからない。
だけど彼は前者だと判断したようで、彼もまた軽く息を詰めながら言った。
「大丈夫。ゆっくり、やるから」
「ぁっ……ぁ、あ!?やっ、だめ、そこ、や、ァッ……ああ!!」
彼の指が、互いに繋がる場所に触れる。
その指が滑ると、先程の痺れる快楽が、否応なしに這い上がってきた。
逃げようがなくて、それを受け止めるしかない。
私は、彼と握った手に力を込めた。
縋りたくて。
「あっ、あっ……!だめ、やっ……ぁ、ああ!あっ……!」
「き、ついけど……入りそう、だね。一回、達しておこうか」
彼が囁くように私に言った。
私はソファの座面に頬を擦り付けて、首を横に振る。
ひとりで乱れて、ひとりだけ快楽を極めてしまうのは、悲しい。
ひとりは、いや。
「やっ……もう、いい、の!いい、からぁ」
声に、甘さが交ざってしまう。
鼻にかかった、女の声だ。
私はそんな声で、彼にすがった。
彼の指が、淫液をまとって、女の性感帯に触れる。
そのまま擦られるように、追い詰めるようにして触れられれば、快楽の先に達するのはすぐだった。
「あっ、あ、いや、ぁっ……!ぁ、────!っ……!う、ぁ、は、あぅっ……!」
体がびくびくと震える。
その反応を殺すことはできず、私は彼の手に自身の頬を擦り付けた。
「っ……うん、はいった。わかる?ほら」
彼が、私の手を握る。
指を絡めて、きゅ、と握られる。
奥を突かれて、あまりにも敏感に私は反応してしまった。
「ぁっ!?」
「……うん、痛くはなさそう、だね」
彼は、私の顔を見てそう判断したようだった。
そのまま、彼は私と手を握ったまま、腰を動かす。
擦られる度、押し上げられる度に甘い快楽が走る。
もう、どうしようもない。
どうしようもなく、私は今、自分が女であることを実感していた。
だって、こんなにも。
こんなにも、気持ちが良くて、幸せだ。
好きなひとに抱かれて、好きな人に触れられて。
例えそこに私の求めるものがなかったのだとしても、今この時だけは幸福を感じてしまう。
どうしようもない女だ。
「ぁっ……あ、あっ……!」
繋いでない手は、彼の背に回す。
そうすると、リュアンダル殿下が屈んでくれて、額に、頬に、口付けを落としてくれた。
そして、涙が残っているのだろう。
その飛沫を、舌で舐め取られた。
「きゃ、う……っ」
「は、……気持ちいい、ね?」
彼が、頬を赤く染めて、笑った。
それがなんだか、とても幸せで。
嬉しくて、それだけで、また甘い快楽が走ったような気がした。
それから、リュアンダル殿下は私の中に熱を放つと、私をベッドに運んだ。
性行為は、思った以上の疲労を伴う。
夜会の疲れも合わさってうとうととしていると、彼の手が私の目元を覆った。
「寝ていていいよ。ゆっくり、休んで」
彼の声が、遠くに聞こえる。
穏やかで、優しい声だ。
リュアンダル殿下。
あなたは、何を考え、何を思っているのだろうか。
私が死ぬまでに、それは、わかるのだろうか……?
「おやすみ、シュネイリア。いい夢を」
彼のその声を聞いたのを最後に、私の意識は闇に沈んだ。
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