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ドレス(2)
しおりを挟む「ネア、元気だった?」
元気だったかと聞くほど間は空いてないがそれにも関わらずアルフェインはネアモネに尋ねた。
今日のネアモネの装いは真っ赤なドレスだった。優しい顔立ちをしている彼女がそれを着るとかなり雰囲気が華やいだ。実を言うとこのドレスは彼女のものではなく姉のものを何とか着込んでいる状態なのだが、それを知らないアルフェインは彼女の姿を見るとすっと瞳を細めた。
「ドレスがあってないみたいだね?」
「…………え、ぁ」
ネアモネはいざ決断したものの、やはり王太子を前にすると頭が真っ暗になってしまう。
そのままぐっと唇をかみ締めて細やかな声を漏らす。
「………そんなことは」
「あるよ。ほら、胸のところがブカブカ」
王太子はほかに指摘するところもあるだろうに、なぜか胸の所を言ってきた。それにネアモネは屈辱と恥辱を感じてますます俯く。胸の慎ましさはネアモネが成人しても全く変わらなかった。閨の時に彼が言っていた言葉が思い起こされる。
ーーー全く、お前相手にどう欲情しろというんだ
自分のような貧弱なからだでは彼のお相手は出来ないのだろう。それを思い出して小さく息をかみ殺した。悔しい、とネアモネは思った。
しかし指摘したアルフェインは特に意図があったわけではないのか、すっと視線をネアモネから逸らした。
そして部屋を見回す。彼が案内されたのは公爵家の客間で、そしてネアモネがその対応を任されている。ネアモネのドレスが姉のものなのは単純な理由だ。ネアモネは綺麗なドレスなど持っていないから。そして突然届いた王太子の先触れ。
三日でドレスを仕立て上げることは出来ない。既製品を買うのは公爵家の恥になる。そういった理由からネアモネは姉のダリアのドレスを着せられていたのだった。
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