3 / 17
2回目の人生の終わり
しおりを挟む「大罪人テレスティア・レベーゼを捉えよ!!」
結果として、私はウィリアム様に相談すると逆に私が怪しまれるという下手を踏んでしまった。
我ながら焦りすぎていたとも思う。そして恐らく現実離れした経験に忘れていたのだと思う。ここが、何事も思い通りにはならない現実だということを。どこか浮ついていた。なんでも出来る気になっていたのだ。
ここにきて自分の失敗を痛感した私だが、しかしもう遅い。
ウィリアム様に爆発事故の件を相談したところ、あっという間に。本当にあっという間に拘束されてしまった。えっ、私の話って聞かれないの?そんなことある?もちろん夫のセレベークは我関せずと速攻離婚の手続きをとった。
セレベークの思考など分かりきっている事だけれど相手からその手を取られたことに殺したいくらいの殺意が湧いた。
半日の間で私は牢に拘束される手筈となり、その日のうちに毒を仰ぐよう言われた。
悔しい。せっかく戻ったのに、また死んでしまう。正直怒りとか焦燥とかで死への不安はなかった。だけど私は思った。
ーーーもしかしたらまた、戻れるかもしれない
そうすれば、私はまたやり直せる。
大丈夫、以前やり直したのだから、きっとまたやり直せる。そう思わないとこの怒りと苦しみから抜け出せなかった。しかし、爆発事件の関与を疑われたにしてもあまりにも運びが早い。私はそれに違和感を覚えた。しかも、重役の人間には一切あわされないという徹底ぶりと、私に話を聞くことすらしない。本当に私が犯人だと思っているのなら、手口などを聞き出すはずでは?
私はここに来て、ひとつの失敗に気づいた。
ーーー恐らく、ウィリアムが犯人なのかもしれない。
そうだとすれば全て辻褄が合う。不自然なまでに早い拘束、話を聞き出すことすらせず、仮にも騎士団長の妻、貴族の女だと言うのに誰も面会にはこない。ただ、牢の前でひたすら見張りの男が立つのみ。
そして私の隣には今か今かと毒を飲むのを待つ男。ウィリアムである。
私は彼を睨むようにして見た。
色素の薄い金髪を腰あたりまで伸ばし、どこか吟遊詩人の雰囲気を漂わせるウィリアムが笑う。
「何か?時間が押してるのですが」
「あなたね……?あなたが爆発事故を企て………」
そこまで言った時、私は自分の頬に酷い衝撃を感じた。殴られたのだ。それを知ると同時に、猛烈な怒りを覚えた。思わず立ち上がりそうになったが、何とか踏ん張った。じわじわと痛む頬。思わず頬を抑える私に、ウィリアムはやはり優しい声で告げた。
「何の話をしているのか………。ほら、早く飲んでください、大罪人の死はこれだと古より決まっているのです」
「私の話すら聞かず、証拠もないのに、それを捕まえて大罪人?笑わせるのね。どんだけ無能なのよ」
そう言うと、酷い打撃音が続いた。どうやら椅子ごと蹴飛ばされたらしい。私は内心舌打ちしながら口元に手を当てた。口が切れて血が出ている。
「それ以上仰るのであれば、国への不敬とみなし刑を重くいたしますよ、あなたも辛い思いはしたくないでしょう?」
ーーーこの、サイコパス野郎
ウィリアムの目は笑っていなかった。ただ、楽しそうに言っていることから彼ならば何をしてもおかしくない狂気を感じとった。
人選を間違えた。それが一番の過ちだ。私はこれ以上口に出さないのが自分のためだと思い、勢いよく毒を煽った。喉を通過する、凄まじいまでの痛みーーー。
ついで、頭を殴られたような感覚に陥り、視界が黒くなった。
ーーーこれが、2回目の人生の終わりである。
31
お気に入りに追加
2,482
あなたにおすすめの小説
殿下、婚約者の私より幼馴染の侯爵令嬢が大事だと言うなら、それはもはや浮気です。
和泉鷹央
恋愛
子爵令嬢サラは困っていた。
婚約者の王太子ロイズは、年下で病弱な幼馴染の侯爵令嬢レイニーをいつも優先する。
会話は幼馴染の相談ばかり。
自分をもっと知って欲しいとサラが不満を漏らすと、しまいには逆ギレされる始末。
いい加減、サラもロイズが嫌になりかけていた。
そんなある日、王太子になった祝いをサラの実家でするという約束は、毎度のごとくレイニーを持ち出してすっぽかされてしまう。
お客様も呼んであるのに最悪だわ。
そうぼやくサラの愚痴を聞くのは、いつも幼馴染のアルナルドの役割だ。
「殿下は幼馴染のレイニー様が私より大事だって言われるし、でもこれって浮気じゃないかしら?」
「君さえよければ、僕が悪者になるよ、サラ?」
隣国の帝国皇太子であるアルナルドは、もうすぐ十年の留学期間が終わる。
君さえよければ僕の国に来ないかい?
そう誘うのだった。
他の投稿サイトにも掲載しております。
4/20 帝国編開始します。
9/07 完結しました。
貴方は翼を失くさない
鏡野ゆう
ライト文芸
ほんの偶然から出会うことになった航空自衛隊航空学生の天音(あまね)ちはると戦闘機パイロットの榎本雄介。そんな二人の、周りから見たら長くて緩い遠距離恋愛的なお話。『空と彼女と不埒なパイロット』に登場した整備員の榎本さんとその奥さんとの馴れ初め話です。設定的には少し昔の話になるので現在の国際情勢とはちょっと異なるところもあります。
【本編完結】【番外編】【番外小話】【小話】
※R15版が「小説家になろう」「カクヨム」で公開中
番外小話では小説家になろうで佐伯瑠璃さんが書かれた『スワローテイルになりたいの』
https://ncode.syosetu.com/n9795dg/
に登場した天衣ちゃんと千斗星君が登場します。佐伯瑠璃さんには許可をいただいています(^^♪
【完結】2愛されない伯爵令嬢が、愛される公爵令嬢へ
華蓮
恋愛
ルーセント伯爵家のシャーロットは、幼い頃に母に先立たれ、すぐに再婚した義母に嫌われ、父にも冷たくされ、義妹に全てのものを奪われていく、、、
R18は、後半になります!!
☆私が初めて書いた作品です。
ポンコツαの初恋事情
🏮大衆居酒屋おやどり🏮
BL
人見知りでコミュニケーション能力皆無で恋愛経験のない、照日日向(テルイヒナタ)は入社式当日、会社のビルに向かって立ち並ぶ桜の木々を眺めていると、望月帳と名乗る人物に声をかけられる。
舞い散る桜が霞むほどに美しい顔で、悪戯が成功した子供の様に笑う帳に一目惚れした日向と日向の猛アタックにたじたじな、帳のドタバタラブコメラブコメディ。
※この作品はオメガバース要素が含まれております。
2日に1度連載致しております。
夜24時更新
土日は2日連続更新となります。
(イラストはAIではなく自分で描いております為、挿し絵は濡れ場を中心に、あとから追加していく事もございます。ご了承お願い申し上げます。)
吸血鬼公爵に嫁いだ私は血を吸われることもなく、もふもふ堪能しながら溺愛されまくってます
リオール
恋愛
吸血鬼公爵に嫁ぐこととなったフィーリアラはとても嬉しかった。
金を食い潰すだけの両親に妹。売り飛ばすような形で自分を嫁に出そうとする家族にウンザリ!
おまけに婚約者と妹の裏切りも発覚。こんな連中はこっちから捨ててやる!と家を出たのはいいけれど。
逃げるつもりが逃げれなくて恐る恐る吸血鬼の元へと嫁ぐのだった。
結果、血なんて吸われることもなく、吸血鬼公爵にひたすら愛されて愛されて溺愛されてイチャイチャしちゃって。
いつの間にか実家にざまぁしてました。
そんなイチャラブざまぁコメディ?なお話しです。R15は保険です。
=====
2020/12月某日
第二部を執筆中でしたが、続きが書けそうにないので、一旦非公開にして第一部で完結と致しました。
楽しみにしていただいてた方、申し訳ありません。
また何かの形で公開出来たらいいのですが…完全に未定です。
お読みいただきありがとうございました。
幕末純情列伝~そして少年は大人になる 【京都編】
斑鳩陽菜
歴史・時代
新選組副長・土方歳三_、戊辰戦争の最中、彼の傍には付き従う一人の少年がいた。
その名を市村鉄之助。
のちに、土方の形見を土方の故郷まで届けに行くことになる鉄之助。
新選組の仲間や、坂本龍馬との出会いを通し、新選組隊として成長していく。
-------------------------------------------------
【京都編】では、慶応二年秋から、鳥羽・伏見開戦までとなります。
どうかよろしくお願いいたします。
欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします
ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、
王太子からは拒絶されてしまった。
欲情しない?
ならば白い結婚で。
同伴公務も拒否します。
だけど王太子が何故か付き纏い出す。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
「僕は病弱なので面倒な政務は全部やってね」と言う婚約者にビンタくらわした私が聖女です
リオール
恋愛
これは聖女が阿呆な婚約者(王太子)との婚約を解消して、惚れた大魔法使い(見た目若いイケメン…年齢は桁が違う)と結ばれるために奮闘する話。
でも周囲は認めてくれないし、婚約者はどこまでも阿呆だし、好きな人は塩対応だし、婚約者はやっぱり阿呆だし(二度言う)
はたして聖女は自身の望みを叶えられるのだろうか?
それとも聖女として辛い道を選ぶのか?
※筆者注※
基本、コメディな雰囲気なので、苦手な方はご注意ください。
(たまにシリアスが入ります)
勢いで書き始めて、駆け足で終わってます(汗
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる