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予知夢
しおりを挟む何から調べればいいのか分からないわ……………。
公爵邸の蔵書室は広すぎてどこに何があるのか全く分からない。3階まである蔵書室は、欲しい本のためにそれぞれ階段を登らなければならない。
(とはいえ………どこに何があるかも分からないのに本を探すなんて無理にか決まってるわ………)
まさか1冊ずつ本を見ていくわけにもいかない。私は手近にある本棚に近づいて内容を見た。
『シェフミランダの五つ星料理の作り方~デザート編~』
隣の本には
『もう失敗しない!簡単レシピ100』
がある。どうやらここら辺は料理の本がある棚らしい。私はちらりと上を眺めた。そびえ立つ本棚に、ぎっしりと詰め込まれた本の数々。頭が痛くなってくる。
私ひとりで見つけるのは絶対に無理。至難の業だ。欲しい情報を莫大な本の中から見つけ出すのはこうも大変なのかと私は初めて知った。もっと、周りの人は簡単そうに探しているのに。ローズだって私が聞いたことは次のご飯の時までにはしっかりと調べていた。だからすごく簡単な事だと思ったのに………。
そこでハッとする。
そうだ、ここには司書係というのがいたはず。私は一回あったことがあるかどうか、という程度の認識だが聞いた方が圧倒的に早いだろう。私はすぐさまその司書係というのを探した。
いた。カウンターの中に座って本を読んでいる。彼こそがこの蔵書室の司書係なのだろう。赤髪に黒メガネをして、いかにも暗そうな見た目をしている。私は半ば緊張しながら彼に声をかけた。
「あの!探しものがあるのだけど」
「…………えっ!?せ、セシリアお嬢様!?」
私がここに来たのは初めてである。司書係の彼は目を見開いて驚いていた。………何よ、そんな驚かなくたっていいじゃない。半ばむしゃくしゃしながら、私はカウンターに近づくと彼に聞いた。
「『龍神の儀式』についての本を探しているの!」
***
優秀な司書係はすぐに本を見つけてくれた。伊達に司書係を務めてないというところだろうか。何冊かそれに関する本を持ってきた彼はやはりビクビクしたような、オドオドしたような態度でカウンターの中に戻って行った。気に入らない。
しかしまずはこの本だ。私はそれを跳ねる心音を抑えながら開いた。
パラパラと有益そうな情報だけ見ていった結果、あることが分かった。
龍神の儀式は、昔はフェルランミュア山の頂きにほど近い湖で行っていたらしい。その場で、その国一番の豊作品を龍神に捧げていたとか。
フェルランミュア山…………。それは夢の中でも話していたことだ。
別の本を手に取る。そして、そこにはその湖の外観が挿絵として載せられていた。息を飲む。
(こ、れ………!!)
これ、夢の中で見たあの湖そのままだわ…………!!もしかして、あれはやっぱりただの夢では無いのだろうか!?夢であれば、見た事もない場所を明確に知るのなんて不可能だ!!やはりあれは、予知夢……!?それか…………。私は息を飲んだ。
「…………………そんな、そんなことって………………」
もしあの夢がただの夢ではなく、私の未来、だとするのならば…………。
私は将来、16の歳で死ぬことになる…………!!
「そっ…………そんなの、そんなの絶対いやよ!!!」
カウンターの方からガタッと音がする。あまりの大声に驚いたのだろう。だけどそんなことはどうでも良くてただ私は震えるしかなかった。またあの震えるような痛みと、恐怖に耐えなければならないと言うの!?
そんなの………そんなの、絶対いや!!
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