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ふたりの初夜 5*
しおりを挟む「………僕は、あなたの瞳が見れないから、視界を覆うのは好きじゃないよ」
「え………?」
「だけどあなたが恥ずかしいと言うから。だから、目を覆ったんだ。…………嫌なら取るけれど?」
「大丈夫です」
見られるより見ない方がいい。
瞬時に判断した私は即答した。忘れていたが今の私は胸元があらわだ。とても恥ずかしい。だけど視覚の情報が遮断されてるおかげで羞恥心は辛うじて抑えられていた。
「そう。ならよかった。でもこれはこれで………」
「きゃあっ…!?」
太ももに触れられたのだと一拍遅れて気づく。これは…………これはダメだわ!いつどこに触れられるか全くわからないもの!
動揺する私に、ユーリアス殿下が小さく笑みを浮かべたのが気配でわかった。
「背徳感があっていいかもね」
そんな初夜があるかしら…………!?
ユーリアス殿下によってネグリジェを捲られた私は、哀れ足の間とショーツもぺいっと脱がされた。とても恥ずかしかったが、ユーリアス殿下が「恥ずかしかったら枕に顔を埋めていてもいいよ。だけど………そうされたら僕は少し寂しいな」と言うので根気で耐えている。その声音はずるい。脳裏にはくぅんと鳴く子犬が浮かび上がった。だけど薄々わかってきた。ユーリアス殿下は絶対寂しがらないし、もしそんなことをしたら枕なんてぽーいってされてしまう気がする。わかってきたわ………!ユーリアス殿下って結構性格が悪い気がする。そうね、底意地が悪いって言うのかしら。だめだわ。どうしましょう。何を言っても悪口になってしまう…………
「リーデ」
「はい!」
思わぬタイミングで話しかけられて場にそぐわぬ元気な声を出してしまう。ユーリアス殿下が胸元にひとつキスを落として聞いてくる。
「あなたは今何を考えている?」
まさか、ユーリアス殿下って性格悪いわよね……とか思ってましたとか言えない。私は黙った。
「僕は………けほっ、こほっ」
「殿下!」
その時、忘れていたがユーリアス殿下は体が弱いことを思い出した。そうだ。今の今まで腹黒鬼畜変態王太子殿下だと思っていたが、この人は病人なのだった………!
咄嗟に体を起こし、目元の隠しを取ると、ユーリアス殿下が口元を手で覆っていた。
「大丈夫ですか?!」
「うん。………ごめんね、心配させてしまったかな。…………それより、目隠しはいいの?」
「え?」
「取れてしまってるけれど」
「…………!!」
自分の体はネグリジェがまとわりつくだけで、肌を隠すという大切な役割を何一つ果たしていなかった。思いっきり露出である。これが閨の儀でなければ私はとんだ痴女である。そして目の前には真っ白のシャツに黒のズボンというシンプルな装いのユーリアス殿下。久しぶりという程でもないが、改めて見たユーリアス殿下はやはり見目麗しかった。そんな殿下の前で、間抜けにも裸な私………。月とすっぽんという言葉を思い出した。なぜこのタイミングで。
「ふふ、やっぱりあなたの瞳が見えている方がずっといい」
「ユーリアス殿下………?きゃっ……!」
肩を押されてそのままポスリとベッドに逆戻り。
ユーリアス殿下の繊細な指先がそっと太もものあいだに触れ、ぴくりと体が動いた。
「ん………や………」
「多少は濡れてるけどまだいれるには足りないかな…………」
「あ、あの………ユーリアス殿下………」
「ユーリって呼んで」
「ユーリアス殿下………あの、変な、感じです………」
「変な感じ?」
「お腹が、へん………」
異物感というか、中になにか入ってるって言うか。いやユーリアス殿下の指が入っているのだから当たり前なのだけど。思わずすがるように見ると、ユーリアス殿下がすこし驚いたような顔をした。切れ長の瞳は一瞬だったが確かに見開かれーーーそして、口元に笑みを浮かべる。だけどその笑みは今までのような優しげなものではなくどことなく濡れた、色っぽいものだった。その色気にあてられぞくりと肌が震えた。
「ちゃんと濡れてはいるんだよね。媚薬は使いたくないし…………そうだ。こうしようか。リーデ、嫌だったら言って」
「え………?」
言うと、ユーリアス殿下が不意に体を起こし手のひらをぐっと握りしめた。一体何を………?と思いつつ見ていれば、再度開かれた手のひらの上にはころりとした丸い石がひとつ。透明に透き通った青色の石は、宝石のように見えなくもなかった。
「ユーリアス殿下………これは?」
「見てればわかるよ」
言って、ユーリアス殿下がその石を指先でつまむと、瞳を細めた。その僅か一瞬だけで石がヴヴ、と動き出す。まさか、と思わず足を引く。
「そう。これは僕の魔力で作った魔石。魔力をこねればこういうこともできる。………リーデにもできるんじゃないかな」
「あ、あいにく私はそこまで魔力が高い訳ではありませんので………」
魔力を石にするとか、簡単に言うけどそれがどれくらい難しいことかこの人はわかって言ってるのか。少なくとも並大抵のひとにはできないわよ。もちろん私もできない。私が言うと、ユーリアス殿下は「そう」と言うだけで他に言葉はなかった。
そして、彼の指先はそのまま太ももを伝う。
「ひゃぁっ…………!!」
「初めては感じにくいというけれど、リーデはそうでもないね。これなら早いうちに慣れそうかな?………慣れて欲しいな。そのためにも色々としよう」
「色々………!?」
「聞きたい?」
ユーリアス殿下に聞き返されて、私はとっさに首を振った。今聞いたらいけない気がする。予想もつかないことになる気がした。
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