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最終章
【レジナルド】ネックレスに仕込まれたもの
しおりを挟むレジナルドは大切なことを忘れていたことを再確認せずにはいられなかった。
あのネックレスはリリネリア好みに作ったものだが、エリザベートの好みには合わせていなかった。
レジナルドはエリザベートについて何も知らない。彼女はリリネリアであって、リリネリアではないのだ。綺麗なものを好み、繊細なものを愛おしむ彼女ではない。今はどちらと言うと毒々しい作りをしたものや、ダーティな色合いのものを好んでいた。
彼女が気に入らないという選択肢をすっかり忘れていた。彼女にプレゼントするというところに重点を当てすぎて、エリザベートの好みにまで気が回っていなかったのだ。
それを激しく食いていると、カイに思わぬ事を言われた。
「エリザベートが…………?」
レジナルドが思わず、と言った形で細い声を出す。それをカイは変わらずの無表情で話を続ける。
「部屋に、これがありました」
「それは………!!」
カイがポケットから出したものを見て、レジナルドは咄嗟に声を上げる。カイの手の上にはレジナルドがエレンに託したーーーそして、エレンの手からエリザベートに渡されたであろうはずの小箱があった。黒の小箱は、カイの上に小さく鎮座している。レジナルドがそれを見ていることを確認したカイはあっさりとその口を開けた。ぽかり、という間抜けな音が響く。
「……………ほら」
「中、身が…………ない?」
「あの娘、ネックレスしてたのかぁ…………」
レジナルドが呟き、エレンが驚いたように言葉を重ねた。カイは何も言わずに、それを執務机に置いた。王都ほどでは無いが、仮の執務をこなすのにはちょうどいい机に置かれたそれを見て、レジナルドはひとつ息を飲む。
「………………リリィが、ネックレスを…………」
「レジナルド。ひとつ聞いていいか?………その、ネックレスは一体ーーー」
「居場所検知を付けてるんですよ」
しかし、それに答えたのはまたもやカイだった。
それにエレンは言葉をなくしたようだ。そして、それをレジナルドが言葉を続けた。
「………居場所探知の術を仕込んでいる。また、彼女に何かあったら嫌だからとーーー」
「………だからって。居場所探知までするか………?」
普通はものを失くした時になど使う術である。
それか、束縛の激しい恋人が片方にそれを使う場合、など。とてもではないが普通の恋人同士はそれを仕込んだものを相手にプレゼントなどしない。もっといえばレジナルドとリリネリアは今やただの他人同士である。エレンが引くのも当然といえた。
だけど、そんなのはどうだっていい。今大切なのは、リリネリアがそれをしているということ。レジナルドは僅かに自分が息を取り戻したのを痛感していた。
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