上 下
8 / 12

公爵令嬢と約束

しおりを挟む

「リア、運命の相手ってどういうこと?」

アルの手首を掴むタイミングを完全に逃したわ………
今も私の手の中にアルの手首がある。見目麗しい中性的な美人なのに手首はゴツゴツしていててちゃんと男性なんだなと変なところで感心してしまう。そうよね。殿下も今年で十七。立派な男性だわ。

「アル、アルは運命ってあると思う?」

あら?私どこぞの宗教勧誘みたいな事言ってるわね……?アルは私の言葉に眉をしかめた。アルも怪しがってるわ!私はまともです!

「僕の運命はリアだよ」

「うっ」

ドストレートにいってくるわね!正直結構照れるわ………!かーっと顔が熱を持つのがわかる。
私は顔を隠すようにアルの視線から逸らしながら咳払いをした。
いけません。このままじゃアルのペースに呑まれてしまうわ…………

「あのね、アル。私も運命ってあると思うの」

「そうだね、僕とリアは運命だ」

「アル、話を聞いて?」

「いいや、聞かなくても十分だよ。リア。《僕の運命の相手が現れるかもしれないから》ーーー………そんな理由で本当に僕と婚約を破棄できると思ったの?ねえ、リアは馬鹿なの?」

「なっ……酷い!さっきからアルは私のことバカバカって。アルこそ本当に私の事好きなの!?」

「好きだよ?愛してる。だから早く結婚しようか、リア?」

「なっ、なんでそうなるのー!」

少しでも私のことが好きなら私の言うことを信じてくれてもいいじゃない!?
いえそうじゃないわ。アルの好きは本当に恋愛の好きなのかしら?
それにヒロインは必ず現れる。
ヒロインと私は同い年で、今年十五。学園入学の歳だ。まさかこのギリギリになって前世………と読んでいいのかわかりませんがそれを思い出すなんて………。タイミングが恨めしい。
ヒロインは学園でアルと出会って恋に落ちる。そしてそれを私が邪魔をする………
絶対絶対断罪なんてされたくありません!ヒロインとの邪魔もしないので早く婚約破棄をさせて欲しいのだわ!
少しでも可能性があるのなら潰しておきたい。もしかしたら私、死ぬのかも………?なんて思いながら過ごす毎日なんてまっぴらごめんです!
私の強い視線にアルの眉がよる。そんな顔をしていてもアルは美しいんだから美人は得意よね。羨ましいわ。

「リア、何でそんなに婚約破棄したいの?」

「アル、もしかしたら私は死ぬかもしれないの」

「っは!?」

「だから婚約破棄したいのよ」

いきなり『ヒロインが現れて私は断罪される』なんて言ってもキャロルのようにしんじてくれない可能性が高い。
これを聞いたキャロルの一言目知ってる?『頭大丈夫?ついに壊れた?』よ?従姉妹にひどいと思いません?
私はじっとアルを見るとアルの瞳は随分揺れていた。

「死ぬ…………って、どうして?リア。いちから教えて」

「かっ…………ーーー勘よ!」
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

くだらない毎日に終止符を

ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢フランチェスカ・ヴィヴィアナは既に何回目かの婚約破棄騒動に挑んでいた。この流れは既に知っているものである。なぜなら、フランチェスカは何度も婚約破棄を繰り返しているからである。フランチェスカから婚約破棄しても、王太子であるユーリスから婚約破棄をされてもこのループは止まらない。 そんな中、フランチェスカが選んだのは『婚約を継続する』というものであった。 ループから抜け出したフランチェスは代わり映えのない婚姻生活を送る。そんな中、ある日フランチェスカは拾い物をする。それは、路地裏で倒れていた金髪の少年でーーー

円満婚約破棄をしたらゆるい王妃様生活を送ることになりました

ごろごろみかん。
恋愛
死霊を祓うことのできる霊媒師・ミシェラは皇太子から婚約破棄を告げられた。だけどそれは皇太子の優しさだと知っているミシェラは彼に恩返しの手紙を送る。 そのまま新興国の王妃となったミシェラは夫となった皇帝が優しい人で安心する。しかもゆるい王妃様ライフを送ってもいいと言う。 破格の条件だとにこにこするミシェラはとてつもないポジティブ思考の持ち主だった。 勘違いものです ゆるゆる更新で気が向いた時に更新します

最後に報われるのは誰でしょう?

ごろごろみかん。
恋愛
散々婚約者に罵倒され侮辱されてきたリリアは、いい加減我慢の限界を迎える。 「もう限界だ、きみとは婚約破棄をさせてもらう!」と婚約者に突きつけられたリリアはそれを聞いてラッキーだと思った。 限界なのはリリアの方だったからだ。 なので彼女は、ある提案をする。 「婚約者を取り替えっこしませんか?」と。 リリアの婚約者、ホシュアは婚約者のいる令嬢に手を出していたのだ。その令嬢とリリア、ホシュアと令嬢の婚約者を取り替えようとリリアは提案する。 「別にどちらでも私は構わないのです。どちらにせよ、私は痛くも痒くもないですから」 リリアには考えがある。どっちに転ぼうが、リリアにはどうだっていいのだ。 だけど、提案したリリアにこれからどう物事が進むか理解していないホシュアは一も二もなく頷く。 そうして婚約者を取り替えてからしばらくして、辺境の街で聖女が現れたと報告が入った。

婚約者の心の声が聞こえてくるんですけど!!

ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢ミレイユは、婚約者である王太子に聞きただすつもりだった。「最近あなたと仲がよろしいと噂のミシェルとはどんなご関係なの?」と。ミレイユと婚約者ユリウスの仲はとてもいいとは言えない。ここ数年は定例の茶会以外ではまともに話したことすらなかった。ミレイユは悪女顔だった。黒の巻き髪に気の強そうな青い瞳。これは良くない傾向だとミレイユが危惧していた、その時。 不意にとんでもない声が頭の中に流れ込んできたのである!! *短めです。さくっと終わる

死にたくないので真っ当な人間になります

ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢セシリアは《王妃の条件》を何一つ守らなかった。 16のある日、セシリアは婚約者のレイアルドに「醜悪だ」と言われる。そしてレイアルドはセシリアとの婚約を無に帰し、子爵令嬢のエミリアと婚約を結び直すと告げた。 「龍神の贄としてセシリア。きみが選ばれた」 レイアルドは人柱にセシリアが選ばれたと言う。しかしそれはただ単純に、セシリアを厄介払いする為であった。龍神の贄の儀式のため、セシリアは真冬の冷たい湖の中にひとり飛び込み、凄まじい痛みと凍えを知る。 痛みの中、セシリアが思うのは今までの後悔と、酷い悔しさだった。 (やり直せるものならば、やり直したいーーー) そう願ったセシリアは、痛みのあまり意識を失ってしまう。そして、目を覚ますとそこは自室でーーー。 これは屑で惰性な人生を歩んでいたセシリアが、何の因果か10歳に戻り、死なないために真っ当な人間になろうとするお話です。

宝石姫は二度死ぬ

ごろごろみかん。
恋愛
涙が、血が、宝石となる世にも珍しい宝石姫ーーーだけど彼女は生まれが所以で長らく虐げられていた。一度は死んだ身、どうやら過去に戻ったようなので好き勝手させてもらいます!

王子様の呪い

ごろごろみかん。
恋愛
「お前との婚約を破棄する!!リーゼロッテ!!」 突如告げられたのは婚約破棄を告げる言葉だった。しかしリーゼロッテは動じず、むしろこの状況を喜ばしく思っていた。なぜなら彼女には、やりたいことがあったから。 *ざまぁから始まるあっさり恋愛小説です。短くおわる

婚約破棄までの大切なプロセス

ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢シャーロットは暗雲たる気持ちで目を開けた。これで三回目だからだ。二回殺され、殺される度に過去に戻っているシャルロット。 三度目の人生。今度こそ殺されずに生き抜いてみせる。 一回目は処刑され、二回目は毒殺された。 一回目は何も知らず、二回目は想いを、気持ちを諦められなかった。 だけど三回目。さすがに期待なんてしない。希望なんて抱かない。 二回の死を経て、公爵令嬢シャーロットは令嬢としての幸せを掴むことを諦めた。 三回目の人生こそ好きに生きさせていただくわ!町娘でも村娘でも、好きなことをして生きていくんだから………! これは公爵令嬢シャルロットが自由を求め、必死に生きようとする話

処理中です...