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さんじゅういち
しおりを挟む「リアの実だよ」
「リアの実………」
「まあ、毒の中でも有名だよな。すり潰してスープの中に入っていたらしい」
「毒味は?毒味はしたんでしょう?」
「グルだろうなぁ。毒味係は今行方不明。間違いなく共犯者だ」
「………」
リアの実………それは猛毒として知られる植物のひとつ。でもどうして、暗殺するのだとしたらほんなわかりやすい毒を使ったのかしら………。そして、私は少しだけ安堵していた。
それは、私と同じ毒ではなかったということーーー。
以前私を毒殺してきたのはシアを慕っていた人達だった。反貴族派、反王制派と呼ばれる人達のことだ。そして使われた毒は恐らく無味無臭の薬品が使われたに違いない。私だって王太子妃として嫁ぐために色々と勉強してきた身。容易く毒を口に含んだりはしない。
リアの実は酸味が強く、スープの中になど入れたらすぐに匂いで気づくはず。だけど陛下は気づかなかった。もしかして………。
「まぁそういうわけだから暫くはシャルロットも城にいた方がいい」
「………そう、ね。そうするわ」
「多分、ここからが大変だからさ」
「………そうね」
陛下の崩御、国王の代替わり。そして殿下にはまだ世継ぎがいない。ここからの王太子妃ーーーいや、王妃争いは熾烈なものになるだろう。
ラーセルが部屋に案内してくれると言うのでついていこうとすると、ふと侍従に呼び止められた。サラサラな黒髪が目立つ青年だった。
「恐れ入ります、シャルロット様、ラーセル様。お客様がお見えです」
「お客様………って言ったってこの状況じゃぁなぁ。誰だ?」
聞くと、目の前の侍従ーーー恐らく彼が私付きになるのだろうか。彼は戸惑いを隠せない顔で言った。
「リーリア・カミラと名乗るもので、火急の用件があると言っています」
「リーリア………」
「あの女か………」
私とラーセルがそれぞれ目を合わせる。リーリアは私の婚約について一時預りをしているものだ。陛下が崩御した以上、この婚約破棄について保留するのは得策ではない。
だけど陛下が崩御したことを他国民であるリーリアに言ってもいいものか。私にその判別はつかない。殿下から何か聞いてないかとラーセルを見るが、ラーセルも難しい顔をしているだけだ。
「………客間に案内。シャルロット、殿下に判断を仰いでくる」
「……かしこまりました」
「シャルロットは控え室で待ってて。人をよこすから」
「はい」
ラーセルの言葉に従って控え室で待っていると、すぐに侍女が訪れた。ラーセルと別れてからまだ十分も経っていないのだが、そんな早く殿下と話せたのか。内心少し驚いた。もう少しかかるかと思ったわ。
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