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1章

本当の終わり

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 なんか凄いね。

 凄いとしか言えないんだけどさ。


 人外の戦いって、こういうのを言うんだと思うよ。

 速すぎて見えないし、すっごいでかい音が響く。

 爆発音だったり、金属のぶつかるような音だったり。

 私に分かるのは、彼らがどこにいるのかぐらいで、そこで何をしてるのかなんて速すぎて分からないよ。

 実況したくても出来ない。

 けどあえて戦況を伝えようと思うなら、クリスが劣勢に見える。

 さすがにクリスも魔法を使ってるみたいだね。
 それでも押されてるように見えるんだから、大丈夫? って思っちゃうよ。

 黒いスケルトンナイトが見えない速度で剣を振り、クリスを吹き飛ばす。

 クリスは衝撃で吹き飛ばされながらも、魔法で制動を掛けてその場に止まる。

 押されてはいるけれど、ダメージは受けてないみたいだ。

 スケルトンナイトの攻撃は杖で受け止めていたり、結界で弾いたりしている。

 見てるとハラハラする。

 うー、なんかお腹痛くなってきた。
 緊張するとお腹痛くなっちゃうんだよね、私。

 ただ観戦するだけなら良いんだけど、クリスが負けたら私もどうなっちゃうか分かんないしね。

 っていうかめっちゃ強くない?

 あのクリスを相手にここまで戦えるとか、確かにあれが仲間になったら凄い戦力だよね。

 でも、今の状態だとテイムも出来ないかな。

 当たらなくても撃ちまくればいずれテイム出来るのはスケルトンナイトで分かったけど、早すぎて狙うことさえ難しいんだから。

 再びクリスが吹き飛ばされる。

 そこには黒いスケルトンナイトが従えていたスケルトンナイトたちがいて、一斉にクリスに躍りかかる。

 クリスはそれを杖でばしばし弾いてるけど、黒いスケルトンナイトに回り込まれてしまう。

 がつっ!

 背後から切られてよろけるクリス。

 大丈夫なのかな?

 うーん!
 がんばれー!
 がんばれー、クリスー!

 私は応援する。

 さすがにここで声を出して応援するのは場違いだから、心の中で叫ぶだけだけど。

 両手をギュッと握って、ほっぺたぷくっと膨らませて、クリスを応援する。

 はー!
 伝われー!

 ブオン、とクリスが縦横に杖を振りまわしてスケルトンナイトたちから距離をとる。

 やられないようにか、黒いスケルトンナイト以外のスケルトンナイトがカクカクとした動きで下がった。

 ぶしゅっ!
 ふぁっ!?


 突如、クリスの身体から煙が漏れる。


 えー!?
 うそー!?
 あれって、瘴気?

 クリスも出せたの?

 クリスですら出てない瘴気を放っているのだから、黒いスケルトンナイトはクリスよりも上なのかもしれないとか思ってたけど、クリスも出せるんだね。

 出せて、普段は抑えてたみたい。

 しかも……。


 もくもくもくもく。


 す、すごい量……。

 何あれ。

 黒いスケルトンナイトが放つのよりも、濃くて禍々しい。

 え?
 クリスってあんな怖かったの?

 いや、最初に会った時は、そりゃ怖かったけどさ。

 でも、瘴気とか出てないから、強そうなスケルトンくらいにしか思ってなかった。

 けど、瘴気を放ったクリスはマジでヤバい。

 地獄の使者って感じ。

 骸骨だけど、今までは優しいお兄ちゃんって感じだったのに、なんかもうヤバい本性を見ちゃった感じだよね。

 実はやくざだった、みたいな。

 背中に入ってる竜の刺青見て引いちゃうみたいな。

 まあ、でも、クリスが強くてヤバいなら、私にとっては大歓迎だ。

 がんばれー!
 クリス、がんばれー!

 ふんふんと鼻を鳴らして応援する。

 黒いスケルトンナイトも、あまりの瘴気に少し引いてるっぽいね。

 けど、踏みとどまってクリスに向かって突進する。

 がしん!

 なのに、スケルトンナイトはすぐに止まった。

 自分で止まったんじゃなくて、結界に押し戻されたみたい。

 結界って見えないからね。

 自由自在に結界張られると、まともに身動きとれなくなる。

 黒いスケルトンナイトは一歩退いて、巨大な剣を振り下ろす。


 ばきぃん!


 一発で結界を叩き割ってしまう。

 クリスの結界って、そん所そこらのモンスターじゃ永遠に割れないくらい頑丈なんだけど、一撃って凄いよね。

 でも……。
 がしん!

 再び動き出そうとした黒いスケルトンナイトは、再び動きが止まる。

 クリスの結界は、何も一個だけしか張れないわけではないみたい。

 主のピンチに、他のスケルトンナイトが助けに行くけれど、結界を前にがしゃがしゃしてるだけだ。

 あ、そうだ。


「テイム! テイム! テイム!」


 動きが止まったのでテイムを発動する。

 周囲のスケルトンナイトから順番に、テイムに成功していく。

 配下の様子がおかしいことに気づいたのか、黒いスケルトンナイトがこちらを見る。


 ひいぃいぃいいいぃ!


 なんか怖い!

 さっさとテイムしちゃわないと。


「テイム! テイム! テイム!」


 私はテイムを放った。

 黒いスケルトンナイトは避けようとするけれど、クリスの結界に阻まれて身動き出来たのはちょっとだけだ。

 神様のチートは確かなもので、五回くらい当てたらテイムには成功していた。

 これでやっと、ここのモンスターのテイムは完了かな?
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