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1章

射程

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 テイムの射程範囲ってどのくらいなんだろう?

 クリスのテイムをした時は結構距離があったと思うけれど、厳密に測ったことはなかったな。

 スキルを意識して射程を確かめる。

 意識するだけでどこまで届くかは大体分かる。

 これがチートなのか、そうじゃないのかは分からないけれど、結構長いな。
 えー、っと……五十メートルくらいはあるだろうか。

 半径五十メートルだから、直径で言えば百メートルだ。
 私の目測だから結構ずれはあると思うけどね。

 ここからだと、少し距離が足りないかな?

 もうちょっと近づかないとテイム出来そうにない。


「うむ」


 クリスが頷いて、スケルトンナイトに向かって歩いて行く。

 見える範囲には六体いるのだけれど、その内の一体が私たちに気づき、こちらに小走りで近寄って来る。

 小走りと言ってもそう見えるだけで、速度は異常に出ている。
 普通に私が走るよりも速いと思う。

 とても、スケルトンとは思えない足の速さだ。


「て、テイム!」


 猛スピードで突っ込んでくる骸骨にビビりながらスキルを使うが、残念ながらまだ射程外だったようで、当たらなかった。


「テイム!」


 一拍も置かずに射程内に踏み込んで来た骸骨に、再びテイムを放つ。

 射程内にいるので今度は当たった。

 当たったのは当たったんだけど、失敗した。

 テイムの成功確率は本来、あんまり高くないらしい。
 弱いモンスターでも一割、二割程度。

 スケルトンナイトは、私よりもずっと強い。

 私の配下のスケルトンたちですら、進化した後は私よりもSTRが高かった。

 弱点は打たれ弱さと足が遅いことだけど、スケルトンナイトはそれすらも克服しているように見える。

 たぶん、ほとんどの項目で、私よりもステータスが高いんじゃないかな。

 そんな相手だから、本来のテイム成功確率は恐ろしいほどに低くなっていることだろう。

 だから実質、私がスケルトンナイトをテイム出来る確率は、チートでプラスされる20%だ。

 五回当てて一回テイム出来る確率だから、一回当てた程度で成功しないのは仕方ない。

 けどまあ、このスキルは使用回数制限とかないし、成功しないなら数打てばいいだけだ。


「テイム! テイム! テイム!」


 四回目くらいで成功した。

 スケルトンナイトがピコーンと光って、私の配下に加わる。

 ほっと胸を撫で下ろして安堵していると……。

 ふぁっ!?

 鼻先を剣が掠めた。
 いや、鼻先ってほど近くはないんだけどね。

 けど、それくらいの印象。

 安心してたら、急に剣が自分に向かって振り下ろされるんだから、びっくりしちゃうよ。

 大丈夫?
 ちびってないよね?

 クリスの背中でガサゴソと確認。

 ふー、大丈夫だった。
 私、膀胱は強い方だよ、うん。

 そんなことより、今の何!?
 なんで剣が迫って来るの!?

 スケルトンナイトはテイムしたのにっ!
 テイムしても、必ずしも配下になるわけじゃないとか!?

 それテイムって言う?

 きょろ、きょろと首を振る。

 首を振って、状況を確認する。

 …………うん。

 分かった。
 テイムは出来ていた。

 テイムは間違いなく成功していて、スケルトンナイトは私の配下になっている。
 たぶん。

 動かないからまだ何とも言えない部分もあるけれど、テイムスキルで伝わってくるのは、ちゃんとスケルトンナイトを従えたという感触だ。

 じゃあどうして剣が迫って来たのか。

 単純な話。

 別のスケルトンナイトが攻撃してたみたいっ!

 わー!
 どうしよう!
 わー!

 次から次へと剣が振り下ろされる。
 ぶおん、ぶおんと私の鼻先(当社比)を掠めて行く。

 ひぃいいぃいい!

 この世界に来てから、骸骨とか幽霊とかのせいで何度も怖くて悲鳴を上げたけれど、命の危険を感じて悲鳴を上げるのは初めてだ。

 いや、クリスと出会った時も死ぬかと思ったけど、あの時は戦闘になる前にテイムしちゃったから、今の状況とは違う。

 どうすんの、これ!?
 全部テイムすれば良い?

 いや、うん、分かってんだけどさ。

 ひいいいいぃいぃいぃ!

 怖い!
 めちゃめちゃ怖い!

 クリスがぴょんぴょん跳ねて避けてくれるから当たってないけど、私だけだったらとっくに死んでる!
 最初の一撃で死んでる!

 ガックンガックンと、新型のアトラクション並みに揺れるクリスの背中で吐き気を催しながら、私は二体目のスケルトンナイトに向かってテイムを放った。
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