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第3章 修学旅行で何も起こらないなんて誰が決めた? 前半:〇〇が黙っているわけがない

第24話 最終戦 その8

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 バチン!ドゴン!

 

 部屋中に響いた音ともに起こった出来事に、私は頭の理解が追いつかなかった。

 政信に止められ、しぶしぶ座った瞬間。

 私を抑えるために立っていた政信の手が素早く動き。



 千春の顔が90度横に曲がり、邦彦が椅子ごと吹っ飛ぶ。



「ま、政信……?」



 政信が手を出すところは見たことがなかった。

 びっくりした私は、恐る恐る声をかける。



「ちとせ」



 静かな、けれども迫力のある声で名前を呼ばれる。



「耳と目、塞いでおけ。俺ももう限界だ」

「へ?」



 急に変なことを言い出す政信。

 私がその意味を理解しかねていると。



「てめぇら、人のこと舐めんのいい加減にしろ!」



 その場にいた全員が恐怖のあまり硬直するほどの殺気とともに、大きな怒号が部屋中に響き渡った。





――――――――――――――――――




 俺の中で弾けたのは、千春たちへのすさまじい量の怒りだった。

 人に罪をなすりつけようとするだけですらキレそうだったのに、自分の大切な人を犯罪者に仕立て上げようとしてニヤつかれれば、もう我慢の限界は超えてしまう。

 ちとせを下がらせ、千春に平手打ちを食らわせ、そのままの勢いで邦彦の顔面に拳をめり込ませ、吹っ飛ばす。

 本来ならば千春も投げたいところだが、流石にお腹の子になにかあってからではまずいので、自重する。

 何度も言うようだが、千春たちにはたくさんの罪があるけれども、子供には何の罪もない。

 罪の無き子を万が一でも殺してしまってはならないので、若干邦彦のほうを強めに攻撃する。



 念の為ちとせに耳と目を塞ぐよう言ってから。



「てめぇら、人のこと舐めんのいい加減にしろ!」



 思い切り怒鳴りつけた。

 もう我慢の限界はとっくの昔に超えている。

 それでもちとせがいるから自重してきていたが、肝心のちとせがやられたなら話は別。

 端から許すつもりなんぞ毛頭ない状態でそれをやられたものだから、怒りを抑え込むのがバカバカしくなってしまったのだ。



「さっきから大人しくしてりゃ煽りばっかりしやがって。前に約束したときに言ったよな、命の保証はしないって。死なない程度に痛めつけるだけっつってんだから大人しくしろよ。お前に間接的にとはいえ味わわされた痛みに比べりゃこんなもん全然平気だわ!貴様のような貧弱おバカ野郎どもには耐えられないかもしれないけどな!」



 俺の怒鳴りに頭にきたのか。



「あんたのほうがよっぽど貧弱でしょうが!だいたいさっきから全然大人しくないじゃないの!」

「人に嘘つくなだの何だのと言っておきながら嘘ついてんじゃねぇよ!」



 千春と邦彦がほぼ同時に怒鳴ると、俺に平手打ちする。



 別に痛くもなんとも無いが、あえて痛みに苦しむ様子を演じる。

 それを見て。



「やっぱりあんたのほうが貧弱じゃない。私たちに逆らうからそうなるのよ」



 千春のセリフにうなずき、2人で見下してくる。



 俺はそんな二人を見ながら内心ほくそ笑んでいた。







 未だに俺をぶったこと自体が罠だということに気づいていないのだから。
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