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第9章

6話~逃避行は終わりを告げるが災難は終わらない~

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 あれから数十分くらい走り続けた。もう何度目になるか分からないほど曲がった。そして、今ようやく悪魔の追撃を振り切り、一息着いていたところだった。
「はあ、はあ、はあ…。なんとか、逃げ、きれた、な…」
「すみません~また迷惑をかけてしまって~…」
とりあえず大丈夫だとだけ伝えてパーティチャットを開く。何とか逃げきったことを伝えるために。
〈耀一だが、何とか逃げきれた。そっちは?〉
これに答えてきたのはゴロウ。てか、最近パーティ内でまともに返事をしてくれるのゴロウくらいになったなぁ。
〈こちらは例のモンスターが近くを通っている。耀一の方のメンバー以外は合流して出口を探してる〉
〈そうか。それで、モンスターはどっちに行った?〉
これにはカナが答えた。マッピングをやっていたらしく、大体の場所はマッピング済みだという。それをふまえて聞いてほしい、とのこと。
〈まだマッピングしてないエリアに入っていったわ。耀一達は今どこにいるの?〉
〈あいつがいたことを考えると近くだろう。マッピングのデータを送れるか?〉
〈ちょっと待って、試してみる。…………駄目、データにしようとしたら全部真っ黒になったわ〉
ふむ、データの送受信が制限されている不思議のダンジョンタイプのマップか。自力のマッピングなら残るがデータにした途端マッピングが無効化されたことと質の悪い迷路タイプであることからそう考えたが…でだ、あそこに悪魔がいたことからこの迷路の出口を守っていると見て間違いないだろうな。ともかく合流しないと。
〈そうか。じゃあこっちはこっちで先程見つけた出口をもう一度探してみる。予測が正しければ…例のモンスターが向かった先が出口だ〉
この言葉に対して、ゴロウから〈本当か?それなら出口近くで待機していれば大丈夫か?〉と聞いてきたので〈大丈夫だ〉とだけ返しておく。
 悪魔がいたことから考えて…まだこの近くに出口があると思われる。だから、来た道を戻れば一番確実なんだが、追い回されてあちこちをくるくるしたせいで方向感覚が麻痺している。前の場所に戻れれば道は覚えているのだが…とりあえずマッピングに使えそうなものをアイテムバッグ内から探す。一番良いのは紙に書くものなんだが…この際、包丁代わりの鱗で壁に跡をつけていこう。ここを追い回され辿り着いた場所として…スタート位置だな。なのでSと跡をつける。こっちから左に行って…右に行こうか。それからとりあえずまっすぐ進む。なんか前の方から音が聞こえるが、悪魔の足音ではないな。てことはゴロウ達か?
 警戒しながらも歩を速め、前にいる何かが目視できる距離まで来た。で、見えたのは…鎧に杖、剣かな?もう少し距離を詰めてみよう。
 そして距離を詰めること二十メートルほど。前にいたのはゴロウ達。ホッと安心したせいか、少し大きな音を立ててしまった。手に持っていた鱗を落としてしまったのだ。カランというかカタンというか…そんな音が後方からしたものだから、ゴロウらは剣を抜き杖を構え戦闘体勢に。うーん、敵意を向けられた側としてはなんかあれだけど、パーティリーダーとしては危険を感じたら戦闘体勢になる、まぁ、良い反応だから複雑なんだよなぁ。
「俺、俺。耀一だ」
名前を言いながら近づく。勿論、盾なんかは構えずに。
「耀一か。心配したぞ。しかし、メイさんがしがみついてるのは何でだ?」
ん?なんのことだ?メイなら横で普通に立って…なかった。てか、いつの間に…?
「さ、先に言っておきます~…ここ、怖いです~…なので、耀一で怖さをまぎらわしてました~」
おーい、帰っておいで~?なんか言ってることが分からなくなりつつあるぞー?俺で怖さをまぎらわすってどういうことー?
「お、メイさんやるぅ~」【狙ってたのに…】
いや、カナ。やるぅ~じゃない!シノンに至っては何言っているんだ!隣か?隣なのか?そんなん三人の時にいっつも横にいたじゃないか?しかも顔がぷくーってなってるし!このゲーム、こんなに感情の表現豊かだったっけ?
「いや、ちょっと待て。なんか絶対勘違いしてるから言っておくぞ?メイとは付き合ったりしてないからな?おっと、これに関しては今後何も言うなよ?」
ミユが悪乗りで何か言ってきそうだったので先に釘を刺す。カナは「えー、そうなのー?」と言ってるし、シノンは物凄い安心したという顔をしている。なんか、この世界では俺、何に関してもとことん面倒なことしか起きないな…
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