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第1章
4話~洞窟探検・後編~
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十分後、俺達は洞窟の先に進んだ。相変わらずカブトムシっぽいのやらクワガタっぽいのやら、ちっこいカマキリだとか(ちっこいといっても五十センチ程の大きさだが)が攻撃してくる。さっきの話だとこの二人をここに行くように命令した人物がいるみたいだ。人なのか組織なのかはわからないが。
「大分進んだか」
「そうね。あともう少しで最下層かしら」
グラッセさんと鈴(りん)さんの会話が聞こえる。その口ぶりから一度ここに来たことがいるみたいだ。まぁ、初心者が来るような場所だから、二人もここを攻略したのだろう。
そんなことを考えながら先に進んでいると分岐に出た。いや、分岐と思った場所はひとつの部屋のようだ。壁が何ヵ所もあり、まるで迷路のようだ。
「ここを抜けたら最深部だ。恐らくそこには突然現れたモンスターがいるはずだ。この先以外に場所はないからな。気を引き閉めていくぞ」
この言葉に俺も鈴さんもわかったと答えた。
迷路のような場所を進んでいると、まだモンスターが襲ってくる。しかもゴキブリ型のモンスターまでいる。鈴さんは「汚物!くるなぁ!」と言いながらG型モンスターを倒していく。グラッセさんは当たり前のように燃やす。燃やして燃やして燃やし尽くそうとしている。俺?決まってるでしょ、逃げてたよ。うん。しかも奴ら、逃げるやつを追ってくるみたいで、前後から挟まれた。もちろん半狂乱になったよ。文句言うなよ、嫌いなんだもの。半狂乱になって、剣をぶん回す。きっと、あのときもこんな風にモンスターを倒してたんだろうな。
グラッセさんが燃やし鈴さんが切る。俺はひたすら叩いて切る。そんなことをずっと続けてればそのうち疲れる。G型モンスターは倒しても倒しても沸いてくる。はっきり言って分が悪い。ついでだが、こいつら今回の討伐目標であるモンスターと同じタイミングで確認されたらしい。もう、嫌な予感しかしない。
どのくらい戦っていたのか分からないがやっとG型モンスターがいなくなった。というか、向こうから引いていった。少しばかり休んでから次へ進む。
再び進んでいくと、今度はG型モンスターは沸いてこない。グラッセさんが「今の内に奥まで突っ切る」と言いながらスピードを速めていく。鈴さんと俺も同じように速くなる。すると、グラッセさんが口を開く。
「耀一君、さっきの戦い方はなんなんだい?剣を振り回すだけじゃ勝てないよ?」
「あ、その、自分はゴキブリが嫌いで、見るだけで発狂してしまうことがあるんです…」
「たしかにあんなのは嫌よね」
「はい」
「ふーん。僕には分からないな。実際見るのは初めてだ」
「何がです?」
「ゴキブリごときに発狂する奴さ」
俺はその言葉にものすごい傷つけられた気がした。
「ごっ…ゴキブリごときに発狂する奴って、酷くないですか!?ていうか、迷路抜けません?」
「おう、そうだった、そうだった。でも、あとはこの先真っ直ぐで良かったはず」
「真っ直ぐよ、グラッセ…」
「ん、そうか。じゃ、行くか」
そう言ってさらに足を速めるグラッセさん。
「「は、速い」」
俺と鈴さんは二人揃って同じことを言ったのだった。
およそ二分。ひたすら真っ直ぐ進むとコロトックがいた部屋より広い部屋に着いた。十メートル四方はありそうな大部屋の奥にいたのは、固い甲羅に足が六本。触角が二本。予感的中。もう嫌だ…
「何であいつなんだよ…」
「よく燃えそうだ」
「また、なの?一体、今日は何匹駆除すればいいのかしら?」
悪い予感って当たるときゃおかしいくらいに当たるよね。ん?どうなったかって?………覚えてないよ。気を失ってたもん。あんなでっかいの目の前にして正気を保てると思った?ねぇ、思った?あははは…
気がついたら洞窟から出ていた。グラッセさんが運び出してくれたようだ。どうなったのかたずねてみると、
「いやぁ、ついつい本気になって燃やしてしまった。いやはや、二人ともノックダウンしてしまったのでね?それで一人じゃ危ないかなと思って、盛大に灰にしてしまった」
と大笑いしながら答えてくれた。灰にって…跡形も残ってないってことだよね?
「あんなの相手に出来るあんたがおかしいわよ…」
そんな愚痴を言っているのは鈴さん。俺としてはたしかにそう思う。いや、あんなの見たら誰だってそう思う。グロテスク&クレイジー&ヒステリックな現場?だったし。よくよく考えたらあいつ食事中だったのか?…肉食昆虫?あ、不味い、思い出しそうになった。
「で、でも倒したんですよね?」
「ん?ああ、灰にしてやったからね。しかもそれは全部消えてったから大丈夫だよ」
恐ろしい、この人恐ろしい!
「て、ていうか、何で今回俺をつれていったんですか?」
「何故かって?いや、パーティメンバー以外でフレンドいなかったからさ~…し、しかもなんか暇そうだったからさぁ、ついつい呼んでしまった。いや、すまない」
そうか、以外にフレンドいないんだ。いや、何で俺?何で俺はフレンドになれたの?
「そういえば何で自分とフレンドになったんですか?」
「え、あ、い、いや、その…初心者を諭したり稽古するのもいいかなって…ね?あは、あははは…」
「どういうこと?初心者には関わらないって言ってたのに?」
「う…」
なんだ、この会話。裏がありそうだな。
「グラッセさん。本当のところどうなんですか?」
「ま、まあとにかくここの洞窟のモンスターは倒したし、いいよね!?じゃ、そういうことで!」
グラッセさんが街の方へ逃げていく。鈴さんが「まちなさーい」と言いながら追いかける。
俺、なんか悪いことしたな…。後でメールしておこう。
「ピコン!」
メールが来たらしい。誰だ?
「耀一君、すまないかくまってくれ!じ…を……に……。」
うん?文面がおかしいな。そのあとの文章が読めないぞ?おかしいな。
―――耀一君、すまないかくまってくれ!実は鈴が僕を監禁しようとしてくるんだ!君に僕の代わりに彼女に捕まってくれ!頼む!
実は君を鈴避けにしようとしてたんだ。本当にすまない。だが、今回はお願いしたい!頼む。その代わり今後もパーティを組んでいこう。
あ、やっと読めた。うん、グラッセさん、ごめんなさい。捕まってください。
このあとグラッセさんがあんな風になってるとはなぁ。
「大分進んだか」
「そうね。あともう少しで最下層かしら」
グラッセさんと鈴(りん)さんの会話が聞こえる。その口ぶりから一度ここに来たことがいるみたいだ。まぁ、初心者が来るような場所だから、二人もここを攻略したのだろう。
そんなことを考えながら先に進んでいると分岐に出た。いや、分岐と思った場所はひとつの部屋のようだ。壁が何ヵ所もあり、まるで迷路のようだ。
「ここを抜けたら最深部だ。恐らくそこには突然現れたモンスターがいるはずだ。この先以外に場所はないからな。気を引き閉めていくぞ」
この言葉に俺も鈴さんもわかったと答えた。
迷路のような場所を進んでいると、まだモンスターが襲ってくる。しかもゴキブリ型のモンスターまでいる。鈴さんは「汚物!くるなぁ!」と言いながらG型モンスターを倒していく。グラッセさんは当たり前のように燃やす。燃やして燃やして燃やし尽くそうとしている。俺?決まってるでしょ、逃げてたよ。うん。しかも奴ら、逃げるやつを追ってくるみたいで、前後から挟まれた。もちろん半狂乱になったよ。文句言うなよ、嫌いなんだもの。半狂乱になって、剣をぶん回す。きっと、あのときもこんな風にモンスターを倒してたんだろうな。
グラッセさんが燃やし鈴さんが切る。俺はひたすら叩いて切る。そんなことをずっと続けてればそのうち疲れる。G型モンスターは倒しても倒しても沸いてくる。はっきり言って分が悪い。ついでだが、こいつら今回の討伐目標であるモンスターと同じタイミングで確認されたらしい。もう、嫌な予感しかしない。
どのくらい戦っていたのか分からないがやっとG型モンスターがいなくなった。というか、向こうから引いていった。少しばかり休んでから次へ進む。
再び進んでいくと、今度はG型モンスターは沸いてこない。グラッセさんが「今の内に奥まで突っ切る」と言いながらスピードを速めていく。鈴さんと俺も同じように速くなる。すると、グラッセさんが口を開く。
「耀一君、さっきの戦い方はなんなんだい?剣を振り回すだけじゃ勝てないよ?」
「あ、その、自分はゴキブリが嫌いで、見るだけで発狂してしまうことがあるんです…」
「たしかにあんなのは嫌よね」
「はい」
「ふーん。僕には分からないな。実際見るのは初めてだ」
「何がです?」
「ゴキブリごときに発狂する奴さ」
俺はその言葉にものすごい傷つけられた気がした。
「ごっ…ゴキブリごときに発狂する奴って、酷くないですか!?ていうか、迷路抜けません?」
「おう、そうだった、そうだった。でも、あとはこの先真っ直ぐで良かったはず」
「真っ直ぐよ、グラッセ…」
「ん、そうか。じゃ、行くか」
そう言ってさらに足を速めるグラッセさん。
「「は、速い」」
俺と鈴さんは二人揃って同じことを言ったのだった。
およそ二分。ひたすら真っ直ぐ進むとコロトックがいた部屋より広い部屋に着いた。十メートル四方はありそうな大部屋の奥にいたのは、固い甲羅に足が六本。触角が二本。予感的中。もう嫌だ…
「何であいつなんだよ…」
「よく燃えそうだ」
「また、なの?一体、今日は何匹駆除すればいいのかしら?」
悪い予感って当たるときゃおかしいくらいに当たるよね。ん?どうなったかって?………覚えてないよ。気を失ってたもん。あんなでっかいの目の前にして正気を保てると思った?ねぇ、思った?あははは…
気がついたら洞窟から出ていた。グラッセさんが運び出してくれたようだ。どうなったのかたずねてみると、
「いやぁ、ついつい本気になって燃やしてしまった。いやはや、二人ともノックダウンしてしまったのでね?それで一人じゃ危ないかなと思って、盛大に灰にしてしまった」
と大笑いしながら答えてくれた。灰にって…跡形も残ってないってことだよね?
「あんなの相手に出来るあんたがおかしいわよ…」
そんな愚痴を言っているのは鈴さん。俺としてはたしかにそう思う。いや、あんなの見たら誰だってそう思う。グロテスク&クレイジー&ヒステリックな現場?だったし。よくよく考えたらあいつ食事中だったのか?…肉食昆虫?あ、不味い、思い出しそうになった。
「で、でも倒したんですよね?」
「ん?ああ、灰にしてやったからね。しかもそれは全部消えてったから大丈夫だよ」
恐ろしい、この人恐ろしい!
「て、ていうか、何で今回俺をつれていったんですか?」
「何故かって?いや、パーティメンバー以外でフレンドいなかったからさ~…し、しかもなんか暇そうだったからさぁ、ついつい呼んでしまった。いや、すまない」
そうか、以外にフレンドいないんだ。いや、何で俺?何で俺はフレンドになれたの?
「そういえば何で自分とフレンドになったんですか?」
「え、あ、い、いや、その…初心者を諭したり稽古するのもいいかなって…ね?あは、あははは…」
「どういうこと?初心者には関わらないって言ってたのに?」
「う…」
なんだ、この会話。裏がありそうだな。
「グラッセさん。本当のところどうなんですか?」
「ま、まあとにかくここの洞窟のモンスターは倒したし、いいよね!?じゃ、そういうことで!」
グラッセさんが街の方へ逃げていく。鈴さんが「まちなさーい」と言いながら追いかける。
俺、なんか悪いことしたな…。後でメールしておこう。
「ピコン!」
メールが来たらしい。誰だ?
「耀一君、すまないかくまってくれ!じ…を……に……。」
うん?文面がおかしいな。そのあとの文章が読めないぞ?おかしいな。
―――耀一君、すまないかくまってくれ!実は鈴が僕を監禁しようとしてくるんだ!君に僕の代わりに彼女に捕まってくれ!頼む!
実は君を鈴避けにしようとしてたんだ。本当にすまない。だが、今回はお願いしたい!頼む。その代わり今後もパーティを組んでいこう。
あ、やっと読めた。うん、グラッセさん、ごめんなさい。捕まってください。
このあとグラッセさんがあんな風になってるとはなぁ。
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