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10話 サラ王妃のお茶会
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アシュレイ殿下の王太子剥奪が決まり、ルイ殿下王太子就任が決まったとして、それだけに集中するワケにはいかない。他にもやるべきことは山のようにあり、その中には王家が開く催しが幾つかある。その中の一つが、貴族夫人とご令嬢を招いたお茶会だった。
月に一度行われるこの催しは、王妃様が主催となって行われ、陛下は参加されない。基本、男性は不参加だが、未婚の王子だけは例外として挨拶に訪れることが出来る。
その為、国中のご令嬢達が王子に見初めて貰おうと躍起になるお茶会でもある。
今回開かれるお茶会の主催者は、第二王妃。
最も、最近の第一王妃は体調不良を理由にお茶会の主催を拒んでいるので、ずっと第二王妃がお茶会の主催を務めておられるのだけど……。
「いつも手伝ってくれてありがとうね、リンカちゃん」
「いえ。サラ王妃のお役に立てるのなら身に余る光栄でございます」
「もーそんなにかしこまらなくていいのに!昔は普通にお喋りしてくれていたのに、寂しいわ……」
第二王妃であるサラ王妃は、私がまだ幼い頃からの顔見知りで、見習い宰相としてお父様にくっついて王城に来ていた時も、優しく接してくれた。
「いえ……そういうわけには参りません」
――サラ王妃の身分は、第一王妃よりも低い。
ご本人はそれを気にされていないが、少なからず、嫌な思いをしてきただろう。私が敬語を使うのは、ガルドルシア公爵令嬢であり、この国宰相である私が、サラ王妃に仕えていると周囲に知らしめるためでもある。
「母様、あまりリンカを困らせないで下さい」
息子であるルイ殿下は、私の意図を理解し、尊重して下さるから助かる。
「そう……?分かったわ」
ああ、そんな捨てられた子犬みたいにシュンっとされないで下さい!こっちが心苦しくなります!
「いつも母様を助けてくれてありがとうね、リンカ」
貴族夫人に呼ばれ、その場を離れたサラ王妃の後姿を見送っている最中に向けられるルイ殿下の笑顔。
……眩しい笑顔ですね、それを横目で見ていた貴婦人やご令嬢達が歓喜の悲鳴を上げていますよ。
「こんな所にいてよろしいのですか?多くのご令嬢のお目当てはルイ殿下ですよ」
「それを言うならリンカも、ガルドルシア公爵令嬢なのにこんな壁の花になっていていいの?君とお近づきになりたい貴族夫人やご令嬢は沢山いると思うけどな」
……そうでしょうね。自分で言うのも何ですか、私と仲良くなりたい方は沢山おられるでしょうね。それはそれは、夫や父親から再三言われているでしょう。宰相に取り入れ!とかなんとか。
「今日の私はお茶会の参加者ではなく、グレゴリー国の宰相として、サラ王妃のお手伝いで参加しました」
一応、ドレスは着てきましたけどね。
ついこの間までは王太子妃としても嫌々参加していましたし……もう今日はいいでしょう。今日の私は、皆様の会話には参加せず、見学に回らせて下さい。
「なら、今日は僕も休もうかな。最近忙しいし」
まだ正式に発表されてはいないが、王太子になることが決まったルイ殿下は、今まで以上に色々なことを学ぼうと、忙しくされている。アシュレイ殿下は王太子になった後も毎日遊び歩いていましたねー。それどころか、俺様が王太子になったぜ!と、偉そうな態度に拍車がかかって、本当に鬱陶しかったです。
「無理に参加されなくても良かったんですよ?あの馬鹿王子……アシュレイ殿下は最近、顔を見せにも来ないんですから」
第一王妃が主催していた時はまだ時折来ていたけど、以降は一切来ない。いや、来たらややこしくなるから来なくて良いんですけどね。
「……リンカは、兄様のことを本当に好きじゃなかったの?」
「はい、欠片も好きではありません」
自分の目的の為に、結婚を受け入れたに過ぎない。私もガルドルシア公爵令嬢ですから、政略結婚のような愛の無い結婚をする覚悟は持っていましたし。
「そっか……なら良かった」
何故かホッとされているみたいですが、そもそもそうやって聞かれることが心外なんですけどね。あんな男を好きになるなんて、男を見る目無さ過ぎでしょう。
「暫くは結婚は諦めて、宰相の仕事に集中しようと思います。離婚歴のある私に声をかけてくる男性も中々いらっしゃらないと思いますし」
一度結婚に失敗している身ですから、暫くは結婚結婚と周りも騒がしく言ってはこない……はず!もし縁談を持ちかけられたら、傷心のフリをして断ろう。今の私は……この国の未来のために、ルイ殿下を将来の国王陛下にすることしか考えていない。
「そう?リンカなら引く手あまただと思うよ」
「お世辞でも感謝します、ありがとうございます」
「お世辞じゃないんだけどぁ」
本当にルイ殿下はお優しいし、気遣いが出来るし、素敵な殿方ですね。父親だけとは言え血が繋がっているのに、どうしてこうもあの馬鹿王子と差があるのか……辛い現実ですね。
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