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それぞれの進む道

お城へ

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 カトレアは、私の近くまで来ると、そっと、頭に被っていたフードを取り外した。
「!カトレアっ?!」
 露わになった紅の瞳を、ハッキリと門番に見られた!このまま、王都の立ち入りを禁止されたらどうしよう?!ドキドキしながら、私は目をギュッとつぶった。

「おお!立派な紅い瞳ですな!さぞ、特別な力をお持ちなのでしょうな!」
「流石カトレア様!優秀な人材を見付けるのがお上手ですな」
「ーーーへ?」

 凄く、呆気に取られたような、間抜けな声が出た。あれ?何この反応?特別な力?優秀な人材?私のこと?
 意味が分からなくてカトレアを見ると、彼はニコリと微笑んだ。

「紅の瞳の差別は大分無くなったと言ったでしょう?」

 言ってたけど、ここまでとは知らなかったけど?!優秀って何?!カトレアとラット王子様は、一体何を国民の皆様に吹き込んでいるんですか?!まさか、ケイ先生がよく言ってる、神様に愛されてる証とかなんとかを言ってます?!

 心配していた爪弾きはされず、容易に、寧ろ歓迎され、王都に入る。

(なんか…緊張し過ぎたのかな……気分悪い……)
 胸を撫で下ろすと同時に、眩暈がしたが、心配をかけたくなくて、気を取り直した。


「ーーー」
 王都の中は、人、人、人で、沢山の人が、街中を歩き、商店には沢山の品物が並び、中心には、大きな、目指す城が見えた。
「凄い…」
「お城まで案内しますね」
 カトレアに促されるまま、王都の中を進む。
「あ!私ーー」
 途中、フードを外したままだったと気付いたが、こんな沢山の人間がいる中で、誰も、私に何かを言ってくる人はいなかった。どうして?紅の瞳の持ち主がいるのに?差別が無くなりかけてるとはいえ、少しは差別されるんじゃないかって覚悟してたのに……。
「えっ」
 そのまま街を進むと、同じ、紅の瞳の持ち主の姿を発見して、息を飲んだ。
「……凄く、普通に生活してるのね」
 その人達は、ただの人間と同じように、買い物袋を手に持ち、街の中を歩いていて、以前までは考えられないような光景だった。
「紅の瞳が優秀だとの噂は、急速に広がりましたからね。王都では今、手のひら返しで、優秀な紅い瞳の持ち主の争奪戦が繰り広げられてますよ」

 紅い瞳の中には、私達と同じ様に、迫害されて生きて来た者も、家族に大切に守られ過ごして来た者、瞳の色を隠して生きて来た者、中には、奴隷として過ごして来た者達もいた。過ごして来た過程は皆違い、心の回復に時間がかかる者もいるが、それはこれから、過ちを犯してしまった者達の責任として、ゆっくりと回復のサポートをする必要があると、カトレアは話した。

 そうだね……。急に態度が変わっても、今までされて来た仕打ちを忘れる事は出来ないし、受け入れる事が出来ない人もいる……ジュン兄さんみたいに。
 ジュン兄さんは、まだ、人間に対して、許せない感情が強い。
 その事を理解しているから、ジュン兄さんは優秀過ぎる魔法使いだけど、カトレアはスカウトしなかった。

「まぁ、王都の国民が急速に紅の瞳を受け入れたのは、紅い瞳の方々の頑張りが大きいですね」
「私…達?」
「はい。キリア達がラット兄様達の命を救ったのは勿論。その後、王宮にスカウトされた紅い瞳の持ち主達が、それはもう素晴らしい勢いで優秀さをアピールして下さいましたから」

 ニコニコと答えるカトレア。
 アピール?何?他の紅い瞳の人達が、成果を出してるって事?

「例えば、キリアのお兄さん、クラ」
「!クラ兄さん?」
「はい。ラット兄様にそれはそれは気に入られまして、もうすぐ副団長に昇格するんじゃないか?って所まで進んでいます」
「嘘でしょう?!」

 初めは、紅い瞳を隠していたようだけど、直ぐに紅い瞳として、騎士団に所属したと聞いたクラ兄さん。
 普通の人間でも騎士団に入るのは難しいのに、紅の瞳として、王宮の騎士団に所属するのは、とても凄い事。なのに、それよりも上?副団長?たった半年で?!ラット王子様、クラ兄さんの事気に入り過ぎじゃない?!

「勿論、クラに実力があってこそですよ」
「た、確かにクラ兄さんは強いけど…」

 魔法に関しては、私達程魔力が高くないのもあって、植物の魔法以外上手く使えないが、その分、魔力を自身の身体能力の向上に使ったり、剣士として、とても優秀。

「確かに、クラは優秀だな……生意気だが」
「あ、兄がすみません」
 アレンさんも同意して褒めてくれるけど、どうやら兄は、アレンさんに失礼な態度をとっているらしい。直ぐに謝罪。同じ王宮に仕える者として、この2人も交流があるんだね。

「着きましたよ」
 城の入り口には、王都の門番よりも遥かに強そうな門番ーー騎士の一員がいて、カトレアの姿を見ると、頭を下げ、門を開けた。
 白を基調とした、豪華な造り。敷地には城だけで無く、騎士や魔法使い達が訓練を行う訓練場や、専属の寮も有り、ここで生活している者が多くいるらしい。
 明らかに場違いな気がして、足を踏み入れるのに躊躇してしまうくらい、綺麗で豪華なお城。

「キリア?」
「ほ、本当に…私なんかが、入っていいのかな…?」

 私は、呪われている紅い瞳なのに…。

「……本当に、ごめんね、キリア」
「え?」

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