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15話 イベント②

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 分かってるんです!私だって、出来ることなら華麗にサッと倒したいんです!でも悪役令嬢のスペックでは出来ないんです!

「あーうっぜ!もう俺がさっさと倒して終わりにしてやるよ!」

 業を煮やしたサステナ王子は立ち上がり、魔法を放つために、手の平を魔物に向けた。

「待って下さいサステナ王子!」

 魔法には様々な魔法の種類があって、その中には、攻撃魔法が得意な生徒もいれば、回復魔法しか使えない生徒もいる。本人が倒さなくても、ペアを組んだ相手が自分の分の魔物を倒せば、それで討伐はクリアになる。
 サステナ王子が倒してくれれば、私も、今日の授業をクリアしたことにはなるけどーー

「駄目なんです!自分で倒さないと、意味が無いんです!」

 回復魔法が使える人は、低ランクのステージではあんまり活躍しないかもだけど、魔物のレベルが上がれば上がるほど、重宝される。同じ非戦闘魔法使いでも、陰に隠れるしか能の無い私とは違う!
 戦いにおいて、誰とペアになるかは、自分の命を預ける上でも非常に重要。役立たずの私とペアを組みたい人なんて、公爵令嬢の権力をフル活用しない限りいないの!なんとか、最低ランクの魔物くらい倒せるようにならないとーー!!

「……お前、本当にティセか?」
「?はい、正真正銘、ティセ=キュリアスですが……」

 急に何の質問?

「昔のお前とは別人だな。昔のお前は、公爵家の力を振りかざして、取り巻き達に全部させて、手柄だけを横取りしてたじゃねーか」

 黒歴史ーー!もう、昔の話を持ち出さないで欲しいところなんですけどーーー本当に反省してるんです!

「私、生まれ変わったんです」

「はぁ?ふざけたこと言うんじゃねー!」

 全く聞く耳持たない……ある意味、本当なんですけどね。まぁでも、信じてもらえるはずないか。

「お願いします!もう少しだけ!もう少しだけ、挑戦させて下さい!」

 マリアだって、いつ私とペアを組めなくなるか分からないんだから、こんなチャンス、もう二度とないかもしれない!ペアが見つからず、Fランクの魔物も一人で倒せず、授業に参加出来なかったらーーー私、最悪退学?!それは嫌!

「……ちっ!さっさとしろ!もうあと少ししか待たねーからな!」

 不機嫌で不服そうだが、何とかあと少し時間を作ってもらえたことに、ひとまず安堵して、息を吐き出した。

 よしーーーもう一回ーーー!

 目の前の魔物に集中する。
 私が考えた魔物の討伐法ーーー私が使える闇の魔法で、陰に隠れる魔法。これを応用して、魔物を、闇の中に閉じ込めて、あとは物理で倒す!これしかない!
 攻撃魔法を一切使えない私が、一人で魔物を倒そうと思ったら、残る手段は物理のみ。力も全く無いけど、Fランクの魔物なら、何とかギリ!倒せるーーーかもしれない!

 私は手を魔物に向けてかざした。

 この魔法を別の誰かに向けた事も無いけどーーー足止めしないと、力も体力もスピードもFランクの魔物にすら劣る私には、倒せない!きっとこのヤケクソの手は、Fランク以上の魔物には通じないでしょうけど、もとより、Fランク以上の魔物を私が倒せると思っていないので、Fランクの魔物さえ倒せれば、問題無し!

闇魔法ダークディテイン

 何度目かの魔法を放つも、華麗に避ける魔物。

「おい!いい加減真面目にやれや!そんな威力もよえー上にちんたらしたスピードじゃ、避けられるに決まってんだろ!」

 えーん!そんなの分かってるんです!私はいつでも真面目で、これ以上は無理なんです!今のが、私の精一杯なんです!

 チュートリアルに出てくるFランクの魔物は、ゲーム内で初めての魔物との対戦なので、基本、簡単に避けれる仕様になっており、危険が無いようになっている。のだがーーー

「!きゃっーー!」

 やばい!ぶつかるーー!!
 急に向きを変えて突進してくるFランクの魔物に、身体能力も最低水準の私は避けきれず、思わず、痛みを覚悟して目をつぶった。


「ーーー炎魔法フレイム


 激しい炎に身を包まれ、一瞬で消えゆく魔物。

「す、凄い……!」

 サステナ王子の魔法属性は、火。
 攻略対象キャラなだけあってその威力は凄まじく、Fランクの魔物はその身に何が起きたかも分からないうちに、サステナ王子の放った魔法に、その身を焼き尽くされた。

「ちっ!んな雑魚魔物にやられそうになってんじゃねーぞ!手間かけさせやがって!言っとくけどな!俺は金輪際お前なんかとペアにならなーーー」

「ありがとうございますサステナ王子!おかげで助かりました!」

「なっーー!」

 本当に感謝!あのまま攻撃されてたら、死んだりはしないだろうけど、絶対に怪我してた!痛かったに違いない!

「た、助けたくて助けたわけじゃねー!今回は、お前がペアだったから仕方なくーー」
「はい!それでも、ありがとうございました!やっぱりサステナ王子は強いんですね」

「ーーっ!」

 助けてもらったことに素直に感謝を伝えると、何故かサステナ王子は頬を赤らめ、戸惑っているように見えた。
 あれかな?悪役令嬢が素直にお礼を言うなんて、変!おかしい!ってやつかな?でも、助けて貰ったんだから、お礼を伝えるのは当然!あー、ちょっと雰囲気悪くてどうなる事かと思っていましたが、サステナ王子とペアを組んでて良かった!


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