6 / 17
6話 私がヒロインと?
しおりを挟む「あの……ティセ様……助けて頂き、ありがとうございます」
マリアは、私に深く頭を下げて、感謝の言葉を伝えた。その手はまだ震えていて、心から怖い思いをしていたと分かる。
私は、こんないたいけなヒロインを虐めつくす予定だったのね……。
自分が虐めていないのに湧く罪悪感。
「気にしないで下さい!マリアさんが無事で良かったです」
「……ティセ様……あの、本当に……サステナ王子との婚約破棄の件も……ごめんなさい……」
「え?」
「私、ティセ様に虐められていないこと、ちゃんとサステナ王子に伝えたんです。でもーーー信じてくれなくてーーー」
私がマリアさんと関わったのは、入学式を含んで、三回だけ。一回目は、入学早々、気に食わないからとマリアさんを突き飛ばし、その弾みで頭を打って記憶を戻した時。
二回目は、学園のダンスパーティで、マリアさんが、婚約者のいる方々に誘われ、ファーストダンスを踊っていたのを、注意した時。
三回目は、婚約者がいる男性と二人でデートをしていると耳にしたので、注意した時。
どれもこれも、ゲームのイベントなんですけどね!
一回目は記憶を思い出す前で、私が完全に悪いのですが、二回目以降は、もうマリアさんが見るに堪えないくらい可哀想で、好意で声をかけた。
「私……学園に少しも馴染めなくて……でも、サステナ王子や、他の方々も、凄く私に良くしてくれて……誘われたからと、つい、了承の返事をしてしまっていたんです……ダンスも、ファーストダンスは婚約者と踊る決まりがあるなんて知らなくて……」
マリアーーーヒロインは、生まれながらの貴族じゃない。
マリアは、魔力を秘めているのを現義父であるルドルフ男爵に見つけられ、養女として、ルドルフ男爵に迎え入れられた。だから、マリアが貴族の常識に疎くても、仕方が無かった。
サステナ王子だけなら私しか被害はいなし、別に構わなかったのですが、聖女を狙う不埒な男共があれよこれよとマリアに声をかけるから、優しいマリアは断り切れず、全部引き受けていたんですよね。
そしたら私以外にも婚約者に色目を使われたと、マリアを敵視する女子生徒が増えて増えてーーーあまりヒロインに関わりたくなかったのに、つい、注意をしてしまった。
そもそもが、婚約者がいるのにマリアに声をかける男が悪いんですけどーーー。
それを見たサステナ王子は、私がマリアを虐めたと勘違いをした。
「ティセ様は、私に貴族の常識を教えて下さっただけで、虐められていませんと何度もお伝えしたのにーーあんな事になってしまって……」
始業式の婚約破棄ですね。確かに、マリアさん心配になるくらい、顔色真っ青でしたもんね。
「本当に……申し訳ありませんでした」
「マリアさんが謝罪することじゃありませんよ。それに、婚約破棄は私も賛成だったので、結果オーライだったんです!」
「そ、そうなんですか?」
私の発言に、マリアさんは心底、安堵した表情を浮かべた。
きっとずっと気に病んでいたんでしょうね……何だか、申し訳ない事をしてしまった気分……。
「はい!だからマリアさんも、私の事は気にせず、ガンガン好きに生きて下さいね!」
どうぞどうぞサステナ王子でも他の攻略対象でも、好きに攻略しちゃって下さい!何なら、ハーレムエンドでも応援しちゃいます!
「好きに……」
「はい!聖女だなんて堅苦しい肩書を付けられて窮屈でしょうし、せめて学園生活は好きに過ごして下さい!」
ヒロインは選んだ攻略対象キャラが王太子になり、自分も将来、王太子妃になる。
国を背負って生きていかなければならないなんて、重圧もあるし、絶対大変だもの……!せめて恋愛くらい、好きにさせてあげたいしね。
「………そうです……よね。私、好きに過ごしてもいいですよね。私が、誰と一緒に過ごしても、自由ですよね」
「勿論です!」
「じゃあ、ティセ様……!私と、お友達になって下さい!」
ーーーん?何だって?
「え?今、なんて……」
「私とお友達になって下さい」
やっぱり聞き間違いじゃなかったーーー!!!!私?悪役令嬢とヒロインが友達になるの?!
「えーーーっと、私とは友達にならない方が良いと思うけど……」
悪役令嬢断罪後、私の出番は無かったはずなのに、実はヒロインと友達になってたの?そんな描写一切ゲームに無かったけど!
私は心穏やかに、ウィルとの恋愛を成就させたいだけだから、出来れば、私を巻き込まずに、ヒロイン達はそっちで勝手に物語を進めて行って欲しいところ。
「やっぱり……駄目ですよね……たかが男爵令嬢が……しかも、養女で元平民の私を、公爵令嬢のティセ様がお相手にされるはずありませんよね……」
止めて!捨てられた子犬みたいにシュンっとしないで!そんな目で見ないで!
いや、想像よりも遥かに、やっぱりヒロインは良い子だし、可愛いし、友達ゼロだから友達になってくれたら嬉しいけどーーー絶対!ややこしくなるのは必須!
「変な事を言ってごめんなさい。ティセ様に助けて頂いて、嬉しかったです。今後、また虐められるかもしれませんが、ティセ様の手を煩わせないように、自分で対処出来るよう、頑張りますね」
「ーーーーいい!友達!なりましょう!」
「え?」
416
お気に入りに追加
619
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
【完結】異世界転生した先は断罪イベント五秒前!
春風悠里
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら、まさかの悪役令嬢で断罪イベント直前!
さて、どうやって切り抜けようか?
(全6話で完結)
※一般的なざまぁではありません
※他サイト様にも掲載中
【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい
三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。
そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
光の王太子殿下は愛したい
葵川真衣
恋愛
王太子アドレーには、婚約者がいる。公爵令嬢のクリスティンだ。
わがままな婚約者に、アドレーは元々関心をもっていなかった。
だが、彼女はあるときを境に変わる。
アドレーはそんなクリスティンに惹かれていくのだった。しかし彼女は変わりはじめたときから、よそよそしい。
どうやら、他の少女にアドレーが惹かれると思い込んでいるようである。
目移りなどしないのに。
果たしてアドレーは、乙女ゲームの悪役令嬢に転生している婚約者を、振り向かせることができるのか……!?
ラブラブを望む王太子と、未来を恐れる悪役令嬢の攻防のラブ(?)コメディ。
☆完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
執着王子の唯一最愛~私を蹴落とそうとするヒロインは王子の異常性を知らない~
犬の下僕
恋愛
公爵令嬢であり第1王子の婚約者でもあるヒロインのジャンヌは学園主催の夜会で突如、婚約者の弟である第二王子に糾弾される。「兄上との婚約を破棄してもらおう」と言われたジャンヌはどうするのか…
気配消し令嬢の失敗
かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。
15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。
※王子は曾祖母コンです。
※ユリアは悪役令嬢ではありません。
※タグを少し修正しました。
初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる