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15話、とてつもなく大きな鶏肉(6)
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「どう? 出来た?」
「多分ね、ほらっ」
指さしたのは、水を張った樽、中の細切れのお肉の形がしっかりと見える。
「随分ときれいになったわね」
「ちゃんとやったからね!」
「血抜きも問題なさそうだし、作ろっか」
「オッケー!!」
リリを追いスカイロックを登っては降り、更にはロック鳥との戦闘までした後だというのにラーナの返事はいつもと変わらない。
(ちょっとラーナってば、ハイになり過ぎてない?)
実際、ラーナは目の前にある、食べきれないほどの大きな鶏肉に大興奮していた。
[2、炒めて臭みを取り、軽く潰す]
「レバーと砂肝と心臓は、とりあえず塩を振って軽く炒めといて」
「とりあえず?」
「臭みを取るためね!」
「なるほどねぇ」
「焼けて固まったところから少しづつ木ベラで潰していっていいから」
「潰していいの?」
「最後にはムースにするからね」
「わかったー!」
内臓を焼き出したラーナの前から、ジュージューと心を躍らせる音と肉とオリーブオイルの焼けるいい匂いが立ち昇る。
「しっかりと臭みと余分な水分を出しちゃってね、そうすると凄い美味しくなるんだよー」
「わかった! ボク頑張るよ!」
[3,白ワインを入れ煮込む]
「ある程度焼けたら、白ワインとわたしが潰したスパイスとハーブを入れて煮込んでね!」
「白ワインはどれぐらい入れればいいの?」
「浸かるぐらいかなぁ?」
「結構入れるんだね!」
「美味しそうでしょ?」
「うん、想像しただけで美味しそー!」
キラキラとした表情で鍋を混ぜるラーナ。
リリは微笑ましいなぁと思いながらも、暫く見ていた。
* * *
(さてと、問題なさそうだし、わたしはガランティーヌの仕込み始めるかぁ)
リリは背伸びをすると、クリスタの元へと飛んでいく。
「クリスタさん、どうですか?」
「身の一つ一つが大きいですね」
「そうよねぇ、大丈夫?」
(結構な力仕事よね、これって)
「かなり硬いので普段より難航してますが、なんとか四つ割りにはしましたのでもうすぐ終わるかと」
「じゃあ終わったらでいいので、モモ肉を一本もらってもいいですか?」
「ええ問題ありません、待たせては申し訳ないので、先に運びますよ」
クリスタはナイフを置き、軽々と大きなモモ肉を持ち上げた。
「リリ様、どちらへ置けばいいですか?」
「じゃあ、ラーナの横のあの平らな岩の上に置いてもらってもいい?」
「かしこまりました」
肉を運ぶクリスタと業務的なやり取りを交わしつつ、リリは周りを見渡す。
イヴァとクラウディア、そこに武具のメンテナンスが終わったアンが加わりの3人で宴会を始めていた。
ギスギスしているのかとリリは思ったが、思いのほか雰囲気は良く、和気あいあいと飲んでいる。
(珍しい組み合わせね、接点が一つもない!)
しかし、その姿を見ているとなぜだか可笑しくて、クスクスと笑みがこぼれた。
「美味しいものを作ってあげなきゃいけないわねぇ」
リリは小さくそう呟く。
独り言を聞いたクリスタは、モモ肉を岩の上に置くと振り向き姿勢を正しつつ聞く。
「なにかお手伝い致しましょうか?」
「提案は嬉しいんだけど忙しくない? 大丈夫?」
「解体はまもなく終わりますし、クラウディア様もあんな感じなので大丈夫です」
クリスタ自身には皮肉を言ったつもりはない、しかし身じろぎ一つせず無言で答える姿がリリにはそう見えた。
だからこそ明るくお茶目にリリは答えた。
「いやぁーこっちの連れがごめんー、それならクリスタにお願いしちゃってもいいかな?」
(あれってイヴァが始めた酒盛りにクラウディアを巻き込んだっぽいしなぁ、イヴァ! クラウディアは元とはいえ貴族様なんだから飲ませすぎないでよ)
「いえっそういう意味ではなく、あんなに楽しそうなクラウディア様は久しぶりに見ました。本当にありがとうございます」
クリスタはリリの態度から察したのか、先程の言葉を訂正しお礼を言う。
「わざわざこんなところまで助けに来てくれたんだし、こちらこそお礼を言わなきゃだよー、ありがとう」
「いえいえ……」
若干気まずい沈黙が二人の間に流れた、リリの周りは破天荒というか変な人が多い、だからこそ真面目に接してくるクリスタに違和感がぬぐえない。
それにクリスタは無表情で無感情な口調で喋るので、リリは正直苦手だった。
「……さぁ作ろっ! クリスタの大好きなクラウディア様が泣いて喜ぶような、美味しくておしゃれな料理をねっ!」
気まずい空気を振り払う様にウィンクをしたリリ。
クリスタは恥ずかしそうに下を向き、リリが見たことないような朗らかな笑顔で微笑むと小さくうなずいた。
(クリスタが笑ったとこ始めてみた! なんだぁ笑うんじゃない、表情筋が死んでるのかと思ってたわ)
よくよく考えると笑わないメイドって可笑しい、リリはクリスタは来客の応対とかしないのか疑問に思ったが、まだ聞けるほどの仲では無いので口をつぐんだ。
「では始めましょうか、リリ様どう致しますか?」
あっという間にクリスタの表情は既に普段通りに戻っていた、
【ロック鳥のガランティーヌ】
[1、もも肉を成形する]
「まずは骨を取って四角くなるように、切ったり叩いたりして広げていきたいんだけど……出来そう?」
「はい、構造は普通の鳥と同じですので、問題ありません」
「じゃあお願いするね、その間にわたしは別の仕込みをしてくるわ」
「わかりました」
丁寧なお辞儀をするクリスタの振る舞いは、やはり貴族のメイドといった所であろう、無表情なことを除けばメイドそのものだ。
(本物のメイドってこんなもんなのかなぁ?)
リリも軽くお辞儀をし、鶏もも肉に包む中身の仕込みを始めることにした。
「多分ね、ほらっ」
指さしたのは、水を張った樽、中の細切れのお肉の形がしっかりと見える。
「随分ときれいになったわね」
「ちゃんとやったからね!」
「血抜きも問題なさそうだし、作ろっか」
「オッケー!!」
リリを追いスカイロックを登っては降り、更にはロック鳥との戦闘までした後だというのにラーナの返事はいつもと変わらない。
(ちょっとラーナってば、ハイになり過ぎてない?)
実際、ラーナは目の前にある、食べきれないほどの大きな鶏肉に大興奮していた。
[2、炒めて臭みを取り、軽く潰す]
「レバーと砂肝と心臓は、とりあえず塩を振って軽く炒めといて」
「とりあえず?」
「臭みを取るためね!」
「なるほどねぇ」
「焼けて固まったところから少しづつ木ベラで潰していっていいから」
「潰していいの?」
「最後にはムースにするからね」
「わかったー!」
内臓を焼き出したラーナの前から、ジュージューと心を躍らせる音と肉とオリーブオイルの焼けるいい匂いが立ち昇る。
「しっかりと臭みと余分な水分を出しちゃってね、そうすると凄い美味しくなるんだよー」
「わかった! ボク頑張るよ!」
[3,白ワインを入れ煮込む]
「ある程度焼けたら、白ワインとわたしが潰したスパイスとハーブを入れて煮込んでね!」
「白ワインはどれぐらい入れればいいの?」
「浸かるぐらいかなぁ?」
「結構入れるんだね!」
「美味しそうでしょ?」
「うん、想像しただけで美味しそー!」
キラキラとした表情で鍋を混ぜるラーナ。
リリは微笑ましいなぁと思いながらも、暫く見ていた。
* * *
(さてと、問題なさそうだし、わたしはガランティーヌの仕込み始めるかぁ)
リリは背伸びをすると、クリスタの元へと飛んでいく。
「クリスタさん、どうですか?」
「身の一つ一つが大きいですね」
「そうよねぇ、大丈夫?」
(結構な力仕事よね、これって)
「かなり硬いので普段より難航してますが、なんとか四つ割りにはしましたのでもうすぐ終わるかと」
「じゃあ終わったらでいいので、モモ肉を一本もらってもいいですか?」
「ええ問題ありません、待たせては申し訳ないので、先に運びますよ」
クリスタはナイフを置き、軽々と大きなモモ肉を持ち上げた。
「リリ様、どちらへ置けばいいですか?」
「じゃあ、ラーナの横のあの平らな岩の上に置いてもらってもいい?」
「かしこまりました」
肉を運ぶクリスタと業務的なやり取りを交わしつつ、リリは周りを見渡す。
イヴァとクラウディア、そこに武具のメンテナンスが終わったアンが加わりの3人で宴会を始めていた。
ギスギスしているのかとリリは思ったが、思いのほか雰囲気は良く、和気あいあいと飲んでいる。
(珍しい組み合わせね、接点が一つもない!)
しかし、その姿を見ているとなぜだか可笑しくて、クスクスと笑みがこぼれた。
「美味しいものを作ってあげなきゃいけないわねぇ」
リリは小さくそう呟く。
独り言を聞いたクリスタは、モモ肉を岩の上に置くと振り向き姿勢を正しつつ聞く。
「なにかお手伝い致しましょうか?」
「提案は嬉しいんだけど忙しくない? 大丈夫?」
「解体はまもなく終わりますし、クラウディア様もあんな感じなので大丈夫です」
クリスタ自身には皮肉を言ったつもりはない、しかし身じろぎ一つせず無言で答える姿がリリにはそう見えた。
だからこそ明るくお茶目にリリは答えた。
「いやぁーこっちの連れがごめんー、それならクリスタにお願いしちゃってもいいかな?」
(あれってイヴァが始めた酒盛りにクラウディアを巻き込んだっぽいしなぁ、イヴァ! クラウディアは元とはいえ貴族様なんだから飲ませすぎないでよ)
「いえっそういう意味ではなく、あんなに楽しそうなクラウディア様は久しぶりに見ました。本当にありがとうございます」
クリスタはリリの態度から察したのか、先程の言葉を訂正しお礼を言う。
「わざわざこんなところまで助けに来てくれたんだし、こちらこそお礼を言わなきゃだよー、ありがとう」
「いえいえ……」
若干気まずい沈黙が二人の間に流れた、リリの周りは破天荒というか変な人が多い、だからこそ真面目に接してくるクリスタに違和感がぬぐえない。
それにクリスタは無表情で無感情な口調で喋るので、リリは正直苦手だった。
「……さぁ作ろっ! クリスタの大好きなクラウディア様が泣いて喜ぶような、美味しくておしゃれな料理をねっ!」
気まずい空気を振り払う様にウィンクをしたリリ。
クリスタは恥ずかしそうに下を向き、リリが見たことないような朗らかな笑顔で微笑むと小さくうなずいた。
(クリスタが笑ったとこ始めてみた! なんだぁ笑うんじゃない、表情筋が死んでるのかと思ってたわ)
よくよく考えると笑わないメイドって可笑しい、リリはクリスタは来客の応対とかしないのか疑問に思ったが、まだ聞けるほどの仲では無いので口をつぐんだ。
「では始めましょうか、リリ様どう致しますか?」
あっという間にクリスタの表情は既に普段通りに戻っていた、
【ロック鳥のガランティーヌ】
[1、もも肉を成形する]
「まずは骨を取って四角くなるように、切ったり叩いたりして広げていきたいんだけど……出来そう?」
「はい、構造は普通の鳥と同じですので、問題ありません」
「じゃあお願いするね、その間にわたしは別の仕込みをしてくるわ」
「わかりました」
丁寧なお辞儀をするクリスタの振る舞いは、やはり貴族のメイドといった所であろう、無表情なことを除けばメイドそのものだ。
(本物のメイドってこんなもんなのかなぁ?)
リリも軽くお辞儀をし、鶏もも肉に包む中身の仕込みを始めることにした。
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