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14話、討伐隊(6)
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「ダメだ、来る! リリは日記もって待ってて」
そう言うと、ラーナは日記をリリに投げ渡し、懐から小瓶を取り出しグイッと飲み干す。
そして傍から見たら怪我をしてしまいそうなほどの、物凄い勢いで崖を降りていった。
「ラーナ、待って!」
「リリ様、戦闘は避けられない、そうラーナは判断したのでしょう」
「行きなさいクリスタ、依頼者に死なれては困るわ」
「クラウディア様の御心のままに」
軽い会釈をしたクリスタは、ラーナを追う様にトントンと華麗に岩を渡り下っていた。
「ヴォオオォォォォー!!」
下についたラーナが大きな咆哮を上げた。
ロック鳥を誘導するためだ、ロック鳥はそれに気づいたのか、元から分かっていたのかは分からないが、一気にラーナの元へと飛びつく。
ピェエーーーー!!
何十倍もあるようなロック鳥に飛び込むラーナ。
両手には普段よりも少し大きいナイフ、そのままラーナのナイフとロック鳥の鉤爪がものすごい勢いでぶつかり合う。
ガギンッ!
鈍い音を響かせて両者が止まった。
(ラーナは怖くないの? わたしなんて隅で震えて、どっか行くのを待っていることしかできなかったのに)
「うおぉーー」
そのままラーナは両手のナイフを地面に落とすとロック鳥の方脚を掴み、背負投げのように地面に叩き落とそうとする。
しかしロック鳥は翼をはためかせて堪えた。
「簡単には倒せないか! クリスタ予定変更! このままで風切り羽を!」
「承知しました」
飛び立とうとするロック鳥と、地面に叩きつけようとするラーナ。
お互いが牽制し合いながら、大きな動きが取れないなか、ラーナの横からクリスタがロック鳥の右翼に向かって、羽のようにフワリと飛び上がる。
(流石はファンタジー、あれは前世だったら人間やめてるわ、人種と人間は別物なのかもしれないわね)
クリスタはリリの知る人間よりも三倍ほどは飛んでいる。
そのまま羽の先を数枚切り落とすと、パラパラと羽が散っていく。
「クリスタすごーい、身体能力高すぎじゃない?」
ファンタジーだからと、素直に感嘆の声を上げるリリに、クラウディアが訂正をした。
「あれはわたくしの付与魔法を施しているからですわ」
(へぇーやっぱりクラウディアって優秀なんだ。言わないけど)
「それであんなに飛べるの?」
「クリスタは音を立てず戦う暗の物、所々に色々な魔石をつけた防具をつけていますのよ、あの跳躍はエアブーツのおかげですわね」
「へぇー、魔道具ってやつ?」
「そうね、あれの魔石もわたくしが付与魔法を施しているのよ」
「すごいわね」
「わたくしは天才ですから! 褒め称えてもよろしくてよ、妖精!」
口元をモグモグさせながらリリを指差すクラウディア。
まだ、ホーリーバジルが食べきれていないらしい。
(こう言われると余計に褒める気をなくすわー、しかも食べながらなんて、お嬢様にあるまじきはしたなさね、めってしちゃうぞ)
心の中でクスクスと笑い、舌を出したリリ。
いかにも真面目に聞いています、といった表情で改めてクラウディアに聞く。
「そんなことより、クラウディアは加勢しないの?」
「そんなことって……まぁいいですわ、もちろん魔力が回復したらしますわ」
辟易した態度でクラウディアが答えた。
「すぐに回復するもんなの?」
(ってか、どういう理屈で魔力って回復するの?)
「そのために、こうやってホーリーバジルを食べているのでしょう?」
「じゃあさっさと食べたら?」
理由は分からないが、ホーリーバジルには魔力を回復させる効果があるらしい。
(だからクラウディアは葉っぱを齧っていたのね、ホーリーバジルには魔力が宿っているのかなぁ?)
「わたくしホーリーバジルの味が苦手で……だからもう少々したら参加しますわ」
「あーなるほどねー」
クラウディアは枝についていた最後の葉を摘み取り齧りだす。
その姿も、リリから見るとどこか上品で急いでいるようには見えないが、人それぞれだと納得することにした。
(あとで細かいことをイヴァとソフィアに聞いてみよ、いいことを聞いたわ!)
シュン、パッ! シュン、パッ! シュン、パッ!
モグモグするクラウディアの目線の先にはアンとイヴァ。
テレポートでクリスタが伝っていた岩を順々に渡り、どんどんと降りていた。
下にたどり着くには、もう少し時間がかかりそうだ。
「ずっと気になっていたのですが、なんであのダークエルフは、あんなにちまちまと渡っているのですの?」
「何かおかしい?」
「普通、転移ができる程の魔道士なのであれば、見えるところには移れるでしょう? 妖精あなたは理由を知っていて?」
クラウディアは、まだモグモグと口を動かしながら聞く。
(へーそーなんだ、でもこれって答えていいんだっけ? まぁいっか助けに来てくれてるわけだし悪いことにはならないでしょ?)
リリは何も考えずにサラッと答えた。
「イヴァは短い距離しか転移が使えないんだってさ、だからあの岩と岩を飛び越えるのが精一杯なんじゃない? 変わった子でしょ?」
「なにか制限でもあるのかしら? 時空魔法は禁忌に近い魔法、わたくしも専門外でよくわかりませんが……」
(禁忌って言った? めっちゃ不穏なんですけどー)
「まぁ、わからないことを気にしても無駄ですわね」
「そうねー」
そう言うと、ラーナは日記をリリに投げ渡し、懐から小瓶を取り出しグイッと飲み干す。
そして傍から見たら怪我をしてしまいそうなほどの、物凄い勢いで崖を降りていった。
「ラーナ、待って!」
「リリ様、戦闘は避けられない、そうラーナは判断したのでしょう」
「行きなさいクリスタ、依頼者に死なれては困るわ」
「クラウディア様の御心のままに」
軽い会釈をしたクリスタは、ラーナを追う様にトントンと華麗に岩を渡り下っていた。
「ヴォオオォォォォー!!」
下についたラーナが大きな咆哮を上げた。
ロック鳥を誘導するためだ、ロック鳥はそれに気づいたのか、元から分かっていたのかは分からないが、一気にラーナの元へと飛びつく。
ピェエーーーー!!
何十倍もあるようなロック鳥に飛び込むラーナ。
両手には普段よりも少し大きいナイフ、そのままラーナのナイフとロック鳥の鉤爪がものすごい勢いでぶつかり合う。
ガギンッ!
鈍い音を響かせて両者が止まった。
(ラーナは怖くないの? わたしなんて隅で震えて、どっか行くのを待っていることしかできなかったのに)
「うおぉーー」
そのままラーナは両手のナイフを地面に落とすとロック鳥の方脚を掴み、背負投げのように地面に叩き落とそうとする。
しかしロック鳥は翼をはためかせて堪えた。
「簡単には倒せないか! クリスタ予定変更! このままで風切り羽を!」
「承知しました」
飛び立とうとするロック鳥と、地面に叩きつけようとするラーナ。
お互いが牽制し合いながら、大きな動きが取れないなか、ラーナの横からクリスタがロック鳥の右翼に向かって、羽のようにフワリと飛び上がる。
(流石はファンタジー、あれは前世だったら人間やめてるわ、人種と人間は別物なのかもしれないわね)
クリスタはリリの知る人間よりも三倍ほどは飛んでいる。
そのまま羽の先を数枚切り落とすと、パラパラと羽が散っていく。
「クリスタすごーい、身体能力高すぎじゃない?」
ファンタジーだからと、素直に感嘆の声を上げるリリに、クラウディアが訂正をした。
「あれはわたくしの付与魔法を施しているからですわ」
(へぇーやっぱりクラウディアって優秀なんだ。言わないけど)
「それであんなに飛べるの?」
「クリスタは音を立てず戦う暗の物、所々に色々な魔石をつけた防具をつけていますのよ、あの跳躍はエアブーツのおかげですわね」
「へぇー、魔道具ってやつ?」
「そうね、あれの魔石もわたくしが付与魔法を施しているのよ」
「すごいわね」
「わたくしは天才ですから! 褒め称えてもよろしくてよ、妖精!」
口元をモグモグさせながらリリを指差すクラウディア。
まだ、ホーリーバジルが食べきれていないらしい。
(こう言われると余計に褒める気をなくすわー、しかも食べながらなんて、お嬢様にあるまじきはしたなさね、めってしちゃうぞ)
心の中でクスクスと笑い、舌を出したリリ。
いかにも真面目に聞いています、といった表情で改めてクラウディアに聞く。
「そんなことより、クラウディアは加勢しないの?」
「そんなことって……まぁいいですわ、もちろん魔力が回復したらしますわ」
辟易した態度でクラウディアが答えた。
「すぐに回復するもんなの?」
(ってか、どういう理屈で魔力って回復するの?)
「そのために、こうやってホーリーバジルを食べているのでしょう?」
「じゃあさっさと食べたら?」
理由は分からないが、ホーリーバジルには魔力を回復させる効果があるらしい。
(だからクラウディアは葉っぱを齧っていたのね、ホーリーバジルには魔力が宿っているのかなぁ?)
「わたくしホーリーバジルの味が苦手で……だからもう少々したら参加しますわ」
「あーなるほどねー」
クラウディアは枝についていた最後の葉を摘み取り齧りだす。
その姿も、リリから見るとどこか上品で急いでいるようには見えないが、人それぞれだと納得することにした。
(あとで細かいことをイヴァとソフィアに聞いてみよ、いいことを聞いたわ!)
シュン、パッ! シュン、パッ! シュン、パッ!
モグモグするクラウディアの目線の先にはアンとイヴァ。
テレポートでクリスタが伝っていた岩を順々に渡り、どんどんと降りていた。
下にたどり着くには、もう少し時間がかかりそうだ。
「ずっと気になっていたのですが、なんであのダークエルフは、あんなにちまちまと渡っているのですの?」
「何かおかしい?」
「普通、転移ができる程の魔道士なのであれば、見えるところには移れるでしょう? 妖精あなたは理由を知っていて?」
クラウディアは、まだモグモグと口を動かしながら聞く。
(へーそーなんだ、でもこれって答えていいんだっけ? まぁいっか助けに来てくれてるわけだし悪いことにはならないでしょ?)
リリは何も考えずにサラッと答えた。
「イヴァは短い距離しか転移が使えないんだってさ、だからあの岩と岩を飛び越えるのが精一杯なんじゃない? 変わった子でしょ?」
「なにか制限でもあるのかしら? 時空魔法は禁忌に近い魔法、わたくしも専門外でよくわかりませんが……」
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