上 下
77 / 115

12話、ストーンフラワー(3)

しおりを挟む
 そのまま暫くは、ラーナが種を集めては、酔っぱらいのイヴァが収納魔法で詰め込む収穫? を100発ほど続けた。
 すると急にストーンフラワーの勢いが無くなってきた、リリには心なしかストーンフラワーが疲れているように見えた。

(終わりかな? もう少し欲しかったなぁ……)

 すると急にストーンフラワーが大きく膨らみだした。

「あいつら逃げる、イヴァ弓!」

 ラーナは何かを察したのか、イヴァに指示を出し自分は投げナイフを投げる。
 二体ほどの蕾を落としたところで残りが赤い種を飛ばした。
 一つはラーナへ、もう一つはあらぬ方向へと飛ばされた。
 ラーナは自分に向かってきた種を難なくキャッチをしその場に落とす。

「おっとっとー、妾の実力を見せる時が来たのぉ! ヒック」

(この酔っぱらい、大丈夫なの?)

 ふらふらとした足つきのまま、ギリギリと絞った弓を放つ、矢には紐がつけられていて綺麗に撃ち抜いた種を紐で引っ張って手元に持ってきた。

「っえ、意外なんだけど、イヴァもエルフらしい事できるんじゃん! 弓上手ぅ!」

(イヴァってもしかして優秀な子なんでは?)

「じゃろう? リリももっと褒めてもいいんじゃぞ?」
「それは遠慮しとくわ」

 リリはこれ以上褒めるとイヴァが調子に乗りそうなので言うのをやめた。

「ところでリリよ、こんなにストーンフラワーの種を集めてどうするんじゃ?」
「もちろん食べるのよ?」

 リリはキョトンとした表情で答える。

「私の話しを信じていないのかい?」

 ソフィアが話しに割り込んでくる。

「まぁまぁ、食べてみてのお楽しみってことで」

 リリは信じていない二人をなだめる。

「赤いやつ焼いた?」
「問題ない、これで完璧!」

 そう言いながらもなぜかラーナの手にはまだ2つ赤い種が握られている。

「ラーナ? その手のやつはなぁに?」

 そう言うとラーナはさっと手を後ろに隠し話す。

「こっこれは収納魔法で仕舞っとくの」
「えぇ!!」
「美味しかったらまた育てればいいと思うから……ボクが育てるからー、お願い、ダメ?」
「まじか! ラーナ食いしん坊過ぎでしょ!」

(……っでも……これって……何気にいい案なのでは?)

 リリは心のなかで何かに納得して、イヴァに聞く。

「イヴァ、生き物もしまえるの?」
「そうじゃのぉ、この中は時間が止まっとるわけじゃなく、遅くなっとるだけじゃから、時間次第じゃないかの?」

 イヴァの返事に、満面の笑みを浮かべたラーナが振り返る。
 リリはそれを見て諦めた。

(あーはいはい、これは断れないやつね、ラーナがやるんだし、まぁ危ないことにはならないでしょ、多分……)

「わかった、許可よ! 許可する!」
「ありがとう、リリ!」
「その代わり危ないと思ったら直ぐに焼くこと! これが最低限の条件だからね」

 リリは演技でうなだれるように答えた

「じゃあさ、じゃあさぁ普通の種を早く味見しよーよ! 今回も生で食べる?」
「今回は生では食べないことにするわ」
「毒があるから?」
「分かるの?」
「匂いでね!」
「わかったー!!」

 ラーナは飛び上がるようにはしゃぎ喜んでいた。
 その姿を見てリリは若干の罪悪感を感じつつも笑顔で答えた。

(ごめんね、ソフィアの前で前世の話はしたくないの)

「じゃあどうする?」
「毒は取り除いて、蒸してみようと思ってるわ」
「っえ? リリちゃん、毒が抜けるのかい? 流石は森の精霊だ、植物には詳しいんだねっ」

 ソフィアはびっくりしたように聞きかえした。

「何言ってるの? わかるわけ無いでしょ?」
「取り除くって言ってたじゃあないか」
「それはないわー、フフッ、そこはラーナの鼻が頼りに決まってるじゃない!」

 それを聞いたソフィアは、分かりやすく大きなため息をついた。

(誤魔かせた……かな?)

 ソフィアの態度を見て安心したリリは、料理の準備を始めることにする。

(よーしっ、始めよ! って言っても今日は蒸すだけなんだけどねー)

「それで? ボクはどうしたら良いの?」
「じゃあラーナはこの種から芽と緑色の部分を取り除いて食べられそうなら蒸してくれる?」
「オッケー!」
「リリ、妾はー?」

 元気な返事をするラーナと、何かをやりたがるイヴァ。

(どうしよ? マジでやることがない)


「えーっと……チーズでも焼いとく?」
「っえ! チーズ焼くのかいっ? 私も食べるー」

 ソフィアが身を乗り出して話しかける。
 リリはイヤそうに無慈悲に答えた。

「お金は貰うわよ?」
「まぁまぁいいじゃないかい、報酬出るんだろー?」

(はぁ、ふざけんな!)

「チーズは高いのよ?」
「イヴァちゃん、まずはエールとワインを出しておくれっ! チーズはもう少しだけ飲んでからにしよう」
「ソフィア名案じゃ! 妾が森で取れた秘蔵のアップルエールを出してやろう!」
「ヒューー、さっすがぁ!」

 リリの言葉など酔っ払い二人には届いていないらしい、諦めて質問を変えることにした。

「朝から二人ばっかりずるくない?」
「リリよ、クエストも終わったんじゃし、ええじゃないかー」
「わたしも秘蔵のエール飲みたいのにー」
「飲めばいいじゃろ?」
「ラーナに悪いし……」
「よいよい、妾から言ってやる!」

(この酔っぱらい共、やりたい放題じゃない!)

 さっきまでのやる気はどこ吹く風、酒の話ししかしていない二人にリリはうなだれた。
 そこにラーナがゆっくり近づいてくる、にこやかだった顔は無表情になっている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

処理中です...