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3話、革鎧(6)”料理パート”
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心の中でコックの姿をしたリリが、腰にサロンを巻きコック帽を被る。
①革鎧を塩茹でし、下味? をつける。
(まずは革鎧を食べられるようにしなきゃね)
酸化した油や古くなった塩を取り除き、獣人の使っていたものなのであれば、獣臭がするであろう、料理の邪魔になるそれは取り除きたい。
もちろん革鎧を柔らかくし、味をつける事で食べやすく、美味しくするのが最大の目的だ。
「じゃあラーナさん、塩を鍋に入れて」
「たくさんでいい?」
「んー、今回は好きな濃さでいいわ! 強めにお願いね」
「ん、わかった!」
ラーナは鉄で出来たヤスリを出すと、ガリガリと塩を削りだす。
(っあ、ヤスリで削るんだ……)
1時間後
②一度お湯を変え味付けをする
「なんか、いい匂いがしてきたよ、もう良いんじゃない?」
確かに煮込み始めとは違い、鍋からは微かに牛の匂いがする。
ラーナにはこれがいい匂いに感じるらしい。
しかしリリには少し獣臭い気がするので、水を変え再度煮込むことにした。
「まだ早いわ、もうちょっと柔らかくなるまで待ったら、お湯を変えましょ」
「そしたら、もう食べれる?」
期待の眼差しを向けてくるラーナ。
しかしリリはそのキラキラした視線を振り払う必要がある。
(まだまだかなりかかる、とは言いずらい……)
「ごめんね、ラーナには残念だけど、そこから更に味付けするわ!」
「えー、もういいよー、食べようよー」
ラーナが駄々をこねる。
態度には示さないが目と顔は一切笑っていない「早く食べられるようにしてくれ」というプレッシャーをひしひしと感じる。
「ダメよ、ぜぇーたいに美味しくないもの!」
「……わかった」
しかし食べるなら美味しいものがいい、それが二人の共通認識。
なのでリリに従い、ラーナは鞄に手を入れスパイスを探り出した。
「何入れるの?」
「スープのために改めて塩でしょ」
「うん」
ラーナは不安そうにしながらも、リリの話しを聞く。
「あとは、ローズマリーとローリエね」
「はぁーい、リリー、ボク辛いのがいい!」
(オークの辛さの基準が分からないから怖いわね、でもまぁ今回はいっか)
「良いわよ、ペペロンチーノ(唐辛子)も入れましょ、わたしの飲める辛さにしてね」
「はぁーい、ピクシーって辛いのだめなの?」
「どうだろ? 食べたことないからなぁ」
ピクシーになって初めての食事。
どんな舌をしていて、どんなものが美味しく感じるのか、全く持って分からない
(甘いものとか、酸っぱいものが好きなのかな? 花の蜜とか木の実食べてるイメージあるし)
少し考えてみるが、結論など出る訳ない。
「ラーナさんの感性に任せるわ! 元々これは、ラーナさんの為に作ってるんだし」
「わかった!! 一応はピリ辛にしとくね!」
今回のメインはリリではなくラーナだ。
リリはそれを十二分に分かっているからこそラーナのなるべく好きな味付けにすることにする、ラーナの方もリリに気を使ってくれている。
リリからしたら、革鎧など食べたくないから、余計なお世話と言えば余計なお世話なのだが……
更に1時間後
ついにラーナの表情が目に見えて曇り始めた、空腹から体調に影響が出ているわけではない。
精神的に限界が近いのかもしれないとリリは感じた。
③柔らかくなるまで煮込み続ける
「流石にもういいんじゃない? ボクもうお腹が限界だよー」
「もう少し、もう少しだけ」
煮込んでるうちに、リリの中でこだわりが出てきた。
(煮込めば煮込むほど柔らかくなりそうなんだけどなぁ……)
当初のリリが考えた最低限の時間予定よりも煮込む時間が長くなっているのは確かだ。
正直、全然足りないとは思っているが、空腹のラーナを考えると、早ければ早いほど良いに決まっている。
悩むリリに、ラーナの方から提案をして来た。
「じゃあ取ったサソリを茹でててもいい?」
「毒を抜いてあるならいいわよ」
「やったぁ、さっそっり! さっそっり!」
嬉々としてサソリを茹でる少女がそこにはいた。
ラーナのテンションが高か過ぎるので、リリはサソリについては気にしないことにした。
更に1時間後
肌寒く感じるほど日が傾いてきた。
「……サソリ食べたら。余計に、おなか空いた……」
(少しだけ食べるとそうなるわよね、気持ちはわかる!)
二人の影が伸び、焚き火がパチッ、パチッと音を立てる、そんな中でラーナがぼそりと呟いた。
(これで計3時間超え。そろそろやるしかない、か)
「わかったわ、チェックしてみよ? どう?」
「確かに……柔らかくはなってる」
ラーナが塊を持ち上げて革鎧に爪を立てた、しっかりと鋭い爪が食い込んでいる。
「よしっ! それじゃあ盛り付けて食べてみましょ」
「う、うん……やっとだ」
「遅くなってごめんね、すこしこだわっちゃった」
「ん? 全然いいよ! ボクのためだもんね」
「ありがとう!」
「でもこれ、本当に食べられるの?」
「問題ない……はずよ」
(異世界で初の料理! 料理って言っていいかは分かんないけど……)
初めての食材が革鎧とは予想外も予想外だが、こんな一面の砂漠で食べられる可能性があるものを見つけられただけでも奇跡だ。
リリはそう自分に言い聞かせ納得することにした。
『完成!!』
①革鎧を塩茹でし、下味? をつける。
(まずは革鎧を食べられるようにしなきゃね)
酸化した油や古くなった塩を取り除き、獣人の使っていたものなのであれば、獣臭がするであろう、料理の邪魔になるそれは取り除きたい。
もちろん革鎧を柔らかくし、味をつける事で食べやすく、美味しくするのが最大の目的だ。
「じゃあラーナさん、塩を鍋に入れて」
「たくさんでいい?」
「んー、今回は好きな濃さでいいわ! 強めにお願いね」
「ん、わかった!」
ラーナは鉄で出来たヤスリを出すと、ガリガリと塩を削りだす。
(っあ、ヤスリで削るんだ……)
1時間後
②一度お湯を変え味付けをする
「なんか、いい匂いがしてきたよ、もう良いんじゃない?」
確かに煮込み始めとは違い、鍋からは微かに牛の匂いがする。
ラーナにはこれがいい匂いに感じるらしい。
しかしリリには少し獣臭い気がするので、水を変え再度煮込むことにした。
「まだ早いわ、もうちょっと柔らかくなるまで待ったら、お湯を変えましょ」
「そしたら、もう食べれる?」
期待の眼差しを向けてくるラーナ。
しかしリリはそのキラキラした視線を振り払う必要がある。
(まだまだかなりかかる、とは言いずらい……)
「ごめんね、ラーナには残念だけど、そこから更に味付けするわ!」
「えー、もういいよー、食べようよー」
ラーナが駄々をこねる。
態度には示さないが目と顔は一切笑っていない「早く食べられるようにしてくれ」というプレッシャーをひしひしと感じる。
「ダメよ、ぜぇーたいに美味しくないもの!」
「……わかった」
しかし食べるなら美味しいものがいい、それが二人の共通認識。
なのでリリに従い、ラーナは鞄に手を入れスパイスを探り出した。
「何入れるの?」
「スープのために改めて塩でしょ」
「うん」
ラーナは不安そうにしながらも、リリの話しを聞く。
「あとは、ローズマリーとローリエね」
「はぁーい、リリー、ボク辛いのがいい!」
(オークの辛さの基準が分からないから怖いわね、でもまぁ今回はいっか)
「良いわよ、ペペロンチーノ(唐辛子)も入れましょ、わたしの飲める辛さにしてね」
「はぁーい、ピクシーって辛いのだめなの?」
「どうだろ? 食べたことないからなぁ」
ピクシーになって初めての食事。
どんな舌をしていて、どんなものが美味しく感じるのか、全く持って分からない
(甘いものとか、酸っぱいものが好きなのかな? 花の蜜とか木の実食べてるイメージあるし)
少し考えてみるが、結論など出る訳ない。
「ラーナさんの感性に任せるわ! 元々これは、ラーナさんの為に作ってるんだし」
「わかった!! 一応はピリ辛にしとくね!」
今回のメインはリリではなくラーナだ。
リリはそれを十二分に分かっているからこそラーナのなるべく好きな味付けにすることにする、ラーナの方もリリに気を使ってくれている。
リリからしたら、革鎧など食べたくないから、余計なお世話と言えば余計なお世話なのだが……
更に1時間後
ついにラーナの表情が目に見えて曇り始めた、空腹から体調に影響が出ているわけではない。
精神的に限界が近いのかもしれないとリリは感じた。
③柔らかくなるまで煮込み続ける
「流石にもういいんじゃない? ボクもうお腹が限界だよー」
「もう少し、もう少しだけ」
煮込んでるうちに、リリの中でこだわりが出てきた。
(煮込めば煮込むほど柔らかくなりそうなんだけどなぁ……)
当初のリリが考えた最低限の時間予定よりも煮込む時間が長くなっているのは確かだ。
正直、全然足りないとは思っているが、空腹のラーナを考えると、早ければ早いほど良いに決まっている。
悩むリリに、ラーナの方から提案をして来た。
「じゃあ取ったサソリを茹でててもいい?」
「毒を抜いてあるならいいわよ」
「やったぁ、さっそっり! さっそっり!」
嬉々としてサソリを茹でる少女がそこにはいた。
ラーナのテンションが高か過ぎるので、リリはサソリについては気にしないことにした。
更に1時間後
肌寒く感じるほど日が傾いてきた。
「……サソリ食べたら。余計に、おなか空いた……」
(少しだけ食べるとそうなるわよね、気持ちはわかる!)
二人の影が伸び、焚き火がパチッ、パチッと音を立てる、そんな中でラーナがぼそりと呟いた。
(これで計3時間超え。そろそろやるしかない、か)
「わかったわ、チェックしてみよ? どう?」
「確かに……柔らかくはなってる」
ラーナが塊を持ち上げて革鎧に爪を立てた、しっかりと鋭い爪が食い込んでいる。
「よしっ! それじゃあ盛り付けて食べてみましょ」
「う、うん……やっとだ」
「遅くなってごめんね、すこしこだわっちゃった」
「ん? 全然いいよ! ボクのためだもんね」
「ありがとう!」
「でもこれ、本当に食べられるの?」
「問題ない……はずよ」
(異世界で初の料理! 料理って言っていいかは分かんないけど……)
初めての食材が革鎧とは予想外も予想外だが、こんな一面の砂漠で食べられる可能性があるものを見つけられただけでも奇跡だ。
リリはそう自分に言い聞かせ納得することにした。
『完成!!』
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