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脚休め 3

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 あおの言葉は極めて高慢で道理のかけらも見当たらない。

 にもかかわらず、あまりにも爽やかに、澄み切った口調ではっきりとあおが言い切るものだから、真也しんやたちはうっかりそのまま鵜呑みにし、納得してしまいそうになった。

 あおの口から吐き出された言葉の傲慢さに気づき、ぽかんとしたまま口を開けている真也しんやたちには目もくれず、海神わだつみを腕に抱え上機嫌のあおは、続きを話す。

 「ここにいていいのは、どんなに醜くても美しく生きたいと望む者・・・そしてそれを心から愉しめる者だけだ。さっきも言ったけれど、冥府は分かりやすい弱肉強食の世だ。・・・けどね、ボクは単純過ぎる力馬鹿以外の、目に見えない強さが嫌いじゃない。」

 そう言って海神わだつみを見つめるあおの目はこのうえなく優し気だ。

 明らかに海神わだつみもそこに含まれていると言っているあおの横顔に、「海神わだつみは力だって尋常でなく強いじゃないか。」という言葉を叩きつけたいのを必死で飲み込みながら、真也しんやたちは話の続きに耳をかたむける。

 「ここは、力の強弱に関係なく、心のまま楽に生きることを選べる場所なのさ。そうでなければ妖鬼として生まれ落ちた意味がない。ボクは心を醜くただれさせたものが、反吐が出るほど嫌いなんだ。・・・だからここにそういった意味での穢れが存在することは、絶対に許さない。」

 あおは少しばかり間を空けて口を開いた。

 「例えば・・・、無理やり女を捉えてきて、金儲けのために飼っている奴・・・とかね。」

 言動はいつもと変わらず、非常に軽やかで調子のいいものに感じるのだが、あおの本心はそれとは全く違うのだろう。

 内心を抑えきれなかったのか、あおはかすかな殺気を放ち瞬きほどの合間、瞳を紅くきらめかせた。

 ごくりと息をのんだ真也しんやたちにむかい、刹那のうちに殺気を打ち消したあおが、少し抑えた声で低く問いかける。

 「女たちの足には、気づいているかい。」

 「足?」

 言われてよく見て見れば、よろめきながら歩く女たちの衣の裾が上がるたび、そこから白い布に覆われた異様な状態の足先が覗く。

 「なんだ・・・?包帯?」

 「うん。」

 光弘みつひろの言葉に、海神わだつみがうなずいた。

 だが、なぜほとんどの女の足に包帯が巻かれているのか、これを見ただけではさっぱり理解ができない。
 この店の雰囲気は極めて穏やかで、包帯が必要になる状況など一向に思い浮かばないのだ。

 「あの足はね、」

 あおが言いかけた時、ちょうど人数分の団子の皿を手にした女たちがやってきた。

 「ちょうどいい。説明するのも面倒だから、案内してもらおうか。」

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