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支度 2

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 「そうなんだー。」

 『面倒なこと』というものが一体どんなことなのか全く分かってもいないしょうが、真也しんやの隣で酷くいい加減な相槌をうっている。

 毛むぐりに変化へんげさせ腰のあたりまで長く伸ばした髪をしょうはことのほか気に入り、他のことなど清々しいほどすっきりと耳の中を通り抜けてしまっている。

 しょうが生返事を返していることは誰がみてもはっきりとわかるが、あお海神わだつみも特に気にした様子はない。

 こちらはこちらで極めて睦まじく、他の者の付け入る隙などまるでない世界をさっさと作り出していた。

 真也しんやは苦笑いしながら、自らの背に生えた真っ黒な翼を動かしてみる。
 毛むぐりの能力は想像以上で、重量を感じさせない大きな翼は思いのほか繊細に、真也のイメージ通りの動きを寸分違うことなく表現してくれる。

 もしやこれは、実際に飛べたりするんじゃないか?

 そんな考えに胸をときめかせていると、しょうあおからもらった髪紐を片手に、大変な上機嫌で話しかけてきた。

 「なぁ、似合うだろ?」

 しょうは高い位置で髪を一つにまとめあげながら、得意顔で声をはずませている。

 「ああ。もちろんだ。・・・・・・似合っているとも。」

 都古みやこがこれ以上ないほど意地悪な表情かおで微笑み、いたずらな返事を返したものだから、しょうは途端に不安になった。

 「真也しんや・・・。俺、なんかおかしい?」

 中学になり、かなり落ち着いて大人びたしょうは、本人は全く気づいていないようだが、実はかなり女子からの人気がうなぎ上りの優良物件となっている。
 そんな彼が幼いころと全く変わらない様子でうろたえているのは、嬉しくもありおかしくもあって、真也しんやはぷっと噴き出しながらしょうの長い髪を柔らかく手で手繰った。

 「しょうはさ。いつまでたっても、都古みやこに弱いんだな。・・・大丈夫。凄く似合ってるよ。なんならこっちの方が自然に感じるくらいだ。」

 真也しんやの言葉に、ほっとした表情になったしょうは都古を薄く睨んだ。

 「性悪都古みやこが。また俺で遊んだな。・・・あーあ、せっかく体力的に俺が勝てるようになったって、結局俺は都古みやこにはひっくり返ったって本当の意味では勝てないんだからさ。ほんと、いやんなっちゃうよ。クモにつかまって逃げらんなくなった虫の気分だ。」

 しょうの口からここぞとばかりにあふれ出した愚痴に、都古みやこは何かを思いついたようだ。
 「なるほど、悪くないな。」など言いながら楽し気に笑うと、毛むぐりにむかって話しかけ始める。

 真也しんやしょうの肩に腕をかけ、極々小さな声でささやいた。

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