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蒼の館 16
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「さぁ。必要なことは聞いた。念を繋いでさっさと子供たちのところへ戻ってやろうか。」
「・・・うん。」
海神の頭を包み込むように数回撫でてから、このうえなく名残惜しそうに身体を離し、蒼はようやく黒と向き合った。
見つめ合う二人は、黒と青の澄み切った瞳をまるで極上の宝玉のごとく赤くきらめかせる。
再び互いの色を取り戻すと、蒼は小さく息を吐いた。
「黒。遠慮はいらない。必要な時はすぐに呼べ。」
蒼が言うと、黒はふんっと小さく鼻を鳴らす。
見事なまでにひねくれ切った黒の様子に、蒼は呆れた口調で続きを口にする。
「君ときたら、全く幼子のようだな。君に不自由はさせない。・・・光弘は気が向いた時にいつでもここへ来れるようにしてある。君は常に光弘と共にいられて満足しているかもしれないが、彼はそうじゃないからね。」
「どういう意味?」
黒は傷ついた瞳を揺らし、蒼を見つめた。
どうやら言葉尻を取り違えてしまったようだ。
くしくも黒は、「お前は常に癒として傍らにいられることを喜んでいるが、光弘はそうは思ってはいない」と言われたものと、受け取っていた。
初めて黒が見せたあけすけすぎる動揺に、蒼は親しみを覚え、優し気な微笑みを浮かべた。
同時に蒼は、黒のこの仕草から、一つの事実を確信している。
光弘の心のうちを黒が正確につかめていないということは、ある一つの真実を赤裸々にさらしてしまっているのだ。
黒は光弘から名づけを受けたが、彼に対して名づけてはいない・・・・・・。
特にそのことには深い興味を示すことなく、蒼は続きを口にした。
「安心しろ。君が思っているのとは全く違う意味だよ。」
「違う?」
「光弘は、黒・・・君との時間をとても大切に想っている。今君と離れているこの瞬間も、君の身を誰よりも案じているし、酷く会いたがってるんだ。」
黒はかすかに眉を寄せた。
このうえなく切なげな表情で蒼を見つめ返す今の彼は、あまりにも無防備だ。
「君は光弘を慕っているのに、光弘が君を必要としていることには気づけないんだな。・・・・・・今彼とともにいるのは、癒だろう。・・・黒、君じゃない。」
「……。」
「君。光弘に全てを伝えていないんだろう。彼は癒と君が同じ者であることを知らないんだ。それなら、彼が君に飢えるのは当然のことじゃないか。」
蒼の言葉に黒は横目で彼をにらんで口を開いた。
「あの人に対して、品のない言い方をするな。」
その言葉を小石でも蹴飛ばすように軽く笑い飛ばすと、蒼は続きを口にする。
「・・・うん。」
海神の頭を包み込むように数回撫でてから、このうえなく名残惜しそうに身体を離し、蒼はようやく黒と向き合った。
見つめ合う二人は、黒と青の澄み切った瞳をまるで極上の宝玉のごとく赤くきらめかせる。
再び互いの色を取り戻すと、蒼は小さく息を吐いた。
「黒。遠慮はいらない。必要な時はすぐに呼べ。」
蒼が言うと、黒はふんっと小さく鼻を鳴らす。
見事なまでにひねくれ切った黒の様子に、蒼は呆れた口調で続きを口にする。
「君ときたら、全く幼子のようだな。君に不自由はさせない。・・・光弘は気が向いた時にいつでもここへ来れるようにしてある。君は常に光弘と共にいられて満足しているかもしれないが、彼はそうじゃないからね。」
「どういう意味?」
黒は傷ついた瞳を揺らし、蒼を見つめた。
どうやら言葉尻を取り違えてしまったようだ。
くしくも黒は、「お前は常に癒として傍らにいられることを喜んでいるが、光弘はそうは思ってはいない」と言われたものと、受け取っていた。
初めて黒が見せたあけすけすぎる動揺に、蒼は親しみを覚え、優し気な微笑みを浮かべた。
同時に蒼は、黒のこの仕草から、一つの事実を確信している。
光弘の心のうちを黒が正確につかめていないということは、ある一つの真実を赤裸々にさらしてしまっているのだ。
黒は光弘から名づけを受けたが、彼に対して名づけてはいない・・・・・・。
特にそのことには深い興味を示すことなく、蒼は続きを口にした。
「安心しろ。君が思っているのとは全く違う意味だよ。」
「違う?」
「光弘は、黒・・・君との時間をとても大切に想っている。今君と離れているこの瞬間も、君の身を誰よりも案じているし、酷く会いたがってるんだ。」
黒はかすかに眉を寄せた。
このうえなく切なげな表情で蒼を見つめ返す今の彼は、あまりにも無防備だ。
「君は光弘を慕っているのに、光弘が君を必要としていることには気づけないんだな。・・・・・・今彼とともにいるのは、癒だろう。・・・黒、君じゃない。」
「……。」
「君。光弘に全てを伝えていないんだろう。彼は癒と君が同じ者であることを知らないんだ。それなら、彼が君に飢えるのは当然のことじゃないか。」
蒼の言葉に黒は横目で彼をにらんで口を開いた。
「あの人に対して、品のない言い方をするな。」
その言葉を小石でも蹴飛ばすように軽く笑い飛ばすと、蒼は続きを口にする。
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