263 / 324
蒼の館 13
しおりを挟む
黒の言う調べたいことが何か・・・・・・。
蒼と海神にも、もはやはっきりと分かっていた。
大樹の近くに二つの世界を繋いでいる何かが存在している可能性がある・・・と黒は言っているのだ。
何者かが命逢で緑紅石を拾い、冥府に渡ったのちに石を手放したのでないとすれば・・・石が足をはやし、一人旅よろしく冥府へ渡ったことになってしまう。
「黒。君はこのまま寝ていろ。調べたいことはわかった。ボクと海神で行く。」
蒼の言葉に、黒はふんっと短く鼻から息を吐き、そっぽを向いた。
「しなくていい。君は海神と共にすべきことがあるはず。・・・ボクの方に、つてがある。調べがついたら声をかける。」
「つてが?・・・君に?」
「蒼・・・・・・君。そんなに僕に遊んで欲しいのか。」
蒼が信じられないと本音をもらすと、黒は視線を鋭くし、蒼を思う存分睨みつけた。
だが、その瞳は子犬がじゃれ合うような無邪気さをただよわせるばかりで、みじんも殺気が含まれてはいない。
海神が小さくため息をつき、蒼の腕にそっと触れてたしなめると、全く悪びれた様子のない蒼は屈託のない笑顔を見せ、海神の頭を抱き寄せながら、頭をかいた。
「命の保証があるのなら、君と思う存分遊んでみるのも悪くはないけどね。・・・すまない。今の君は完全なはぐれ者だとばかり思っていたから、素直に驚いただけだ。他意はないよ。」
蒼が言うと、黒は不機嫌そうに鼻で笑った。
少し幼い仕草はどうやら照れ隠しでもあったのだと、続いて彼の口から紡がれた言葉が教えてくれる。
「君達は名づけを行うんじゃないのか。些事に構う必要はない。」
つまり黒は、この問題を自分に預け、蒼と海神は名づけに専念しろと言っているのだ。
「・・・伝えそびれるところだったけど、名づけを行うのならば精神体ですることを勧める。強烈だが、より深く繋がることができる。君達の関係なら・・・なにも問題はないだろう。」
黒は海神の首のあたりに目をやり、ことさら意味深げにくすりと小さく笑った。
伝えられた黒の進言に、蒼は首を傾げる。
とろりと肩を流れ落ちていく蒼の美しい白銀の髪にくぎ付けられながら、海神は少し戸惑った様子をまとっているようだ。
そのわずかな変化を見落とすことなく、蒼は海神の肩を柔らかく抱き、口を開く。
「海神、ボクも君と同じことが気になってる・・・・・・。黒、君は一体どこでそういう知識を得ているんだ。」
名づけ自体、行う者はさほど多くはないのだ。
ましてや精神体でそれを行うなど、誰がそれを知っていて黒に伝えているというのだろうか。
蒼と海神にも、もはやはっきりと分かっていた。
大樹の近くに二つの世界を繋いでいる何かが存在している可能性がある・・・と黒は言っているのだ。
何者かが命逢で緑紅石を拾い、冥府に渡ったのちに石を手放したのでないとすれば・・・石が足をはやし、一人旅よろしく冥府へ渡ったことになってしまう。
「黒。君はこのまま寝ていろ。調べたいことはわかった。ボクと海神で行く。」
蒼の言葉に、黒はふんっと短く鼻から息を吐き、そっぽを向いた。
「しなくていい。君は海神と共にすべきことがあるはず。・・・ボクの方に、つてがある。調べがついたら声をかける。」
「つてが?・・・君に?」
「蒼・・・・・・君。そんなに僕に遊んで欲しいのか。」
蒼が信じられないと本音をもらすと、黒は視線を鋭くし、蒼を思う存分睨みつけた。
だが、その瞳は子犬がじゃれ合うような無邪気さをただよわせるばかりで、みじんも殺気が含まれてはいない。
海神が小さくため息をつき、蒼の腕にそっと触れてたしなめると、全く悪びれた様子のない蒼は屈託のない笑顔を見せ、海神の頭を抱き寄せながら、頭をかいた。
「命の保証があるのなら、君と思う存分遊んでみるのも悪くはないけどね。・・・すまない。今の君は完全なはぐれ者だとばかり思っていたから、素直に驚いただけだ。他意はないよ。」
蒼が言うと、黒は不機嫌そうに鼻で笑った。
少し幼い仕草はどうやら照れ隠しでもあったのだと、続いて彼の口から紡がれた言葉が教えてくれる。
「君達は名づけを行うんじゃないのか。些事に構う必要はない。」
つまり黒は、この問題を自分に預け、蒼と海神は名づけに専念しろと言っているのだ。
「・・・伝えそびれるところだったけど、名づけを行うのならば精神体ですることを勧める。強烈だが、より深く繋がることができる。君達の関係なら・・・なにも問題はないだろう。」
黒は海神の首のあたりに目をやり、ことさら意味深げにくすりと小さく笑った。
伝えられた黒の進言に、蒼は首を傾げる。
とろりと肩を流れ落ちていく蒼の美しい白銀の髪にくぎ付けられながら、海神は少し戸惑った様子をまとっているようだ。
そのわずかな変化を見落とすことなく、蒼は海神の肩を柔らかく抱き、口を開く。
「海神、ボクも君と同じことが気になってる・・・・・・。黒、君は一体どこでそういう知識を得ているんだ。」
名づけ自体、行う者はさほど多くはないのだ。
ましてや精神体でそれを行うなど、誰がそれを知っていて黒に伝えているというのだろうか。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。
しかし、仲が良かったのも今は昔。
レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。
いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。
それでも、フィーは信じていた。
レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。
しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。
そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。
国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。
貴方の事を愛していました
ハルン
恋愛
幼い頃から側に居る少し年上の彼が大好きだった。
家の繋がりの為だとしても、婚約した時は部屋に戻ってから一人で泣いてしまう程に嬉しかった。
彼は、婚約者として私を大切にしてくれた。
毎週のお茶会も
誕生日以外のプレゼントも
成人してからのパーティーのエスコートも
私をとても大切にしてくれている。
ーーけれど。
大切だからといって、愛しているとは限らない。
いつからだろう。
彼の視線の先に、一人の綺麗な女性の姿がある事に気が付いたのは。
誠実な彼は、この家同士の婚約の意味をきちんと理解している。だから、その女性と二人きりになる事も噂になる様な事は絶対にしなかった。
このままいけば、数ヶ月後には私達は結婚する。
ーーけれど、本当にそれでいいの?
だから私は決めたのだ。
「貴方の事を愛してました」
貴方を忘れる事を。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる