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蒼の館 11

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 「2千年前。きみ緑紅石りょくこうせきを耳飾りにして常に身に着けていた。恐らく、いつでもすぐに記憶の保管が行えるようにしていたんだろう・・・・・・。」

 「覚えている。・・・・・・続きを。」

 「ん・・・。きみは自分の願いを叶えるために動き出してからというものの、この石をすっかり袋の中にしまいこんでしまったよね。それまではかなり頻繁に記憶の保管を行っていたのに、全くしなくなった・・・・・・。」

 「・・・・・・。」

 「久しぶりにきみの懐から出されたこの石が見たのは、命逢みおの大樹だ。君は大樹の巨大な枝の上でこの石を取り出し・・・・・・投げ捨てた。」

 黒は眉間にしわを寄せた。
 その瞳は疑惑に満ちている。
 恐らく、黒の記憶にはないことなのだろう。
 あおは気にせず続ける。

 「投げ捨てられた緑紅石りょくこうせきが、その後どういう経緯で照射殿にたどりついたのかは、残念ながらわからない。だってきみは、一度取り出したこの石を再び袋に押し込み、そのまま乱暴に放り投げてしまったんだ。・・・それからボクが冥府で拾って袋の口を開けるまで、石は何も見ていない。」

 あおが話し終えると、抑揚を感じさせない声で黒が問いかけた。

 「なぜ、僕は石を捨てた・・・・・・。」

 「・・・これはボクの推測になってしまうけど。きみはとても辛そうで苦しんでいるように見えた。・・・石に記憶を保管しようとして、術を発動しかけたが、すぐにやめてしまったんだ。しかも、同じことを幾度も繰り返してた。記憶を石に残すべきかどうかものすごく迷っていたんだろう。」

 「・・・・・・。」

 「結局記憶を保管せず、きみはそのまま石を捨てた。この先気が変わって記憶を残すことがないよう、手の届かないところにやりたかったのかもしれないね。君はかなり荒れていたから袋の口が開いたままになっていた。もう一つの緑紅石りょくこうせきはそこから転がり出てしまい、二つは離れ離れになったんだ・・・・・・。」

 「・・・・・・なるほどね。」

 あおが話し終えると、黒は寝台にゆっくりとうつ伏せに横たわり、目を閉じた。

 「石を拾ったのが、きみだなんて、気分は最悪だ。・・・けど、助かった。・・・ありがとう。」

 黒からの突然の感謝の言葉に、あおは背中に氷を突っ込まれたようにゾワリと肌を粟立たせ、顔をしかめた。

 うっすらと目を開け、その様子を見ていた黒は不機嫌そうに唇を尖らせる。

 「君は本当に失礼なやつだな。なんて顔をしている。・・・まあいい。とにかく、きみのおかげで少し調べてみたいことができたんだ。ただ・・・・・・」

 黒は瞳を鋭くして口を開いた。

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