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混乱 2 ☆挿絵は龍粋と出会った時の蒼です(18才くらい)
しおりを挟む翡翠は上げかけた腰を再び下ろし、目の前にいる白妙の背に手をあて、気を深く感じてみる。
心を落ち着かせ、大切な友の気配を静かに探ってみれば、白妙の胸の奥のさらに奥で、恐ろしいほど凝縮していく煮えたぎった念の流れが見えた。
翡翠《ひすい》は息をのんだ・・・・・・。
白妙は、混乱のあまり自分を見失い、念の制御ができなくなっている!
しかも、最も悪いことに、念は垂れ流されているのではなく、恐ろしいほどの力を瞬時に炸裂させようと、凝縮し続けているのだ。
下手に刺激しようものなら、針を立てられた風船のように、瞬時にはじけ飛んでしまう。
そんなことになれば、恐らく白妙は、命逢の大樹と同じように、意思のない、命だけのものに変わってしまう・・・・・・。
・・・・・・白妙の心の内は、宵闇への疑念で溢れかえり、混沌を極めていた。
一点の光すら与えない、重く冷え切った泥のような絶望にのしかかられ、口を利くことすらできず、脳裏を駆け抜けていく真っ暗な過去に問いかける。
2千年前・・・。
宵闇は、妖鬼と内通していたというのか?
彼が姿をくらましたのは、妖鬼と結託するためであったと?
邪悪な笛を吹き鳴らし、妖鬼と共に神妖界を陥れ、多くの神妖たちと・・・龍粋の命を・・・力を奪い取るために?
再び姿を現した時・・・。
宵闇は、まるで見知らぬ者のように変わってしまっていた。
あれが彼の本当の姿だというのか?
私はずっと・・・彼に、騙されていたのか。
それまでの宵闇の姿が・・・・・・全てが、偽りだったと・・・・・・?
白妙は、何もかもを放り出してしまいたかった。
この痛みごと、呪いのような憂いを全て切り捨て、ただ宵闇との美しい思い出だけを抱き、そのまま消えてしまいたい。
もう、何も考えたくない・・・・・・。
呼吸を乱し、暗く沈んだ双眸をあげると、蒼の瞳と視線が交わった。
蒼は口角を上げ薄く笑ってはいるが、その視線は非常に鋭く、身がすくむほどの怒気をはらんでいる。
強い意志をみなぎらせた赤い瞳で、白妙のぼんやりとした視線を強引にからめとると、蒼は白妙を睨みつけたまま、軽口をたたくように言った。
「ああ・・・。君はさっきまで寝てたから、聞いてなかったんだったな。・・・昨日ボクたちは、宵闇に会ったんだよ。」
宵闇の名を聞くと、白妙の瞳の奥でわずかな光が灯り、みじろいだ。
「彼はもはや、神妖なのか妖鬼なのかすらわからない存在になり果てていた。自らの意思で魂があんなに変異した者を、ボクは見た事がない。・・・彼がああなったのは、恐らく・・・・・・。」
蒼は極めて意地の悪い笑みを浮かべ、蔑むような口調で吐き捨てた。
「ねぇ、白妙。君・・・今まで考えたことはなかったのか?彼が誰かに操られているかもしれないって。・・・・・・君は本当に、宵闇を信じていたの?」
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