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白妙の心 6
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蒼は彼にしては珍しく、とても真剣な表情で居住まいをただした。
「白妙・・・・・・。まず、謝罪と礼を言わせてくれ。・・・2千年前・・・海神を君に託す時、ボクは残酷な過ちを犯した。あんな約束はするべきじゃなかった。・・・後悔している。・・・本当に、すまなかった。」
蒼は白妙に深々と頭を下げ、しばらく動かなかった。
「・・・蒼。」
海神がたえきれず声をかけると、ようやく顔を上げた蒼は再び丁寧に頭を下げる。
「2千年もの間。固く約束を違えず、海神を守り育ててくれたこと・・・言葉にならないほど感謝している。本当に・・・ありがとう。」
蒼の声は、酷く震えている・・・・・・。
翡翠は、こみ上げる涙を隠したかったが、膨らみ切った熱い想いは喉の奥を怒涛の如き勢いで押し上げ、つきやぶった。
あっけなく堰をきってあふれ出してしまった涙を、とどめることなどできない。
久遠がそっと渡してくれた布で顔を覆い、翡翠は澄み切った大粒の涙をその布に吸わせ、すすり上げる。
「・・・蒼。頭をあげろ。」
蒼のついた手の辺りにポツリと澄んだ雫がにじんだのを見つめ、白妙は静かに声をかけた。
「蒼・・・。わかっているのだ・・・・・・。本当はお前、自分自身の手で幼い海神を守り、共にありたかったのだろう。その望みを捨て、私にこの子を託してくれた。・・・海神がいなければ、私は恐らく、今まで持ちこたえることなどできなかった。」
2千年前のあの時・・・・・・。
蒼は白妙に「海神を頼む」とは言わなかった。
恐らく、彼の本心がそれを言わせてはくれなかったのだ。
それほどまでに強く、蒼は海神と離れることを心の内で拒んでいたのだろう。
蒼は頭を深く下げたままだった。
白妙は翡翠に頼み、助けを借りて身体を起こすと、蒼に向かい頭を下げた。
「幼い海神の命を妖鬼の群れから守り、龍粋の願いを叶えてくれたこと。海神のため、妖鬼の王を葬ってくれたこと、心から礼を言う。」
白妙の意表をつく言葉に、海神が息をのんだ。
蒼は、ようやく顔をあげ、同時に頭を上げた白妙の瞳を真っすぐ見つめる。
「なぜ、妖鬼の王をころしたことが、海神のためだと思う?」
「・・・お前の行いを見ていれば、地位や名声には興味が薄い者であるとわかる。お前は短気で気ままで、面倒を嫌う者だ。そのお前があえて、王を殺すという面倒極まりない名声を得たことには、何か理由があるのだと思った。」
「・・・どんな理由?」
「妖鬼の王がお前の逆鱗に触れることをしたか、ただのお前の暇つぶしだったか、あるいは・・・・・・愛する幼子が平穏に生きることのできる場所を求め、そこに害をなしていた不届き者を、手っ取り早く葬ることにした・・・とかな。」
「白妙・・・・・・。まず、謝罪と礼を言わせてくれ。・・・2千年前・・・海神を君に託す時、ボクは残酷な過ちを犯した。あんな約束はするべきじゃなかった。・・・後悔している。・・・本当に、すまなかった。」
蒼は白妙に深々と頭を下げ、しばらく動かなかった。
「・・・蒼。」
海神がたえきれず声をかけると、ようやく顔を上げた蒼は再び丁寧に頭を下げる。
「2千年もの間。固く約束を違えず、海神を守り育ててくれたこと・・・言葉にならないほど感謝している。本当に・・・ありがとう。」
蒼の声は、酷く震えている・・・・・・。
翡翠は、こみ上げる涙を隠したかったが、膨らみ切った熱い想いは喉の奥を怒涛の如き勢いで押し上げ、つきやぶった。
あっけなく堰をきってあふれ出してしまった涙を、とどめることなどできない。
久遠がそっと渡してくれた布で顔を覆い、翡翠は澄み切った大粒の涙をその布に吸わせ、すすり上げる。
「・・・蒼。頭をあげろ。」
蒼のついた手の辺りにポツリと澄んだ雫がにじんだのを見つめ、白妙は静かに声をかけた。
「蒼・・・。わかっているのだ・・・・・・。本当はお前、自分自身の手で幼い海神を守り、共にありたかったのだろう。その望みを捨て、私にこの子を託してくれた。・・・海神がいなければ、私は恐らく、今まで持ちこたえることなどできなかった。」
2千年前のあの時・・・・・・。
蒼は白妙に「海神を頼む」とは言わなかった。
恐らく、彼の本心がそれを言わせてはくれなかったのだ。
それほどまでに強く、蒼は海神と離れることを心の内で拒んでいたのだろう。
蒼は頭を深く下げたままだった。
白妙は翡翠に頼み、助けを借りて身体を起こすと、蒼に向かい頭を下げた。
「幼い海神の命を妖鬼の群れから守り、龍粋の願いを叶えてくれたこと。海神のため、妖鬼の王を葬ってくれたこと、心から礼を言う。」
白妙の意表をつく言葉に、海神が息をのんだ。
蒼は、ようやく顔をあげ、同時に頭を上げた白妙の瞳を真っすぐ見つめる。
「なぜ、妖鬼の王をころしたことが、海神のためだと思う?」
「・・・お前の行いを見ていれば、地位や名声には興味が薄い者であるとわかる。お前は短気で気ままで、面倒を嫌う者だ。そのお前があえて、王を殺すという面倒極まりない名声を得たことには、何か理由があるのだと思った。」
「・・・どんな理由?」
「妖鬼の王がお前の逆鱗に触れることをしたか、ただのお前の暇つぶしだったか、あるいは・・・・・・愛する幼子が平穏に生きることのできる場所を求め、そこに害をなしていた不届き者を、手っ取り早く葬ることにした・・・とかな。」
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