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光弘の告白 2
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『あの頃は何もわかってなかったけど、今ならわかるんだ。』
新しく形を作りかえていく景色の中で、光弘の声が響く。
『幼い頃の俺は見えないはずの者に、気づかずに話しかけてしまうことがあった。だから姉さんは、わざと庭先で見えない者に話しかけてくれていたんだ。祖母や近所の人に見られるように・・・・・。そうすることで、俺を守ってくれた。』
光弘の声が響くなか、周囲は色を変え、緑に包まれていく。
『俺は、そんな姉さんに結局なにもしてやれなかった。姉さんはいつも俺に笑顔を向けてくれた。いつでも俺の味方でいてくれたのに・・・・・。』
セミの声が鳴り響く。
樹々の緑の中たたずむ光弘と楓乃子の姿が現れた。
「姉さん。僕、やっぱり許せない。なんで姉さんがこんな目に合わなきゃいけないんだ。」
光弘が楓乃子の手を見つめ、険しい表情で怒りをあらわにしている。
そこには真新しい傷があり、真っ赤な血が流れていた。
「そう怒るなって。大丈夫だって言ったろ?みーくんがいつも私の分まで怒ってくれるから、私は全然腹が立たないよ。・・・・ありがとう。」
そう言って光弘の頭をなでながら幸せそうに微笑んだ楓乃子は、そこで話を終わらせようとしたようだった。
だが、そんな楓乃子に光弘が食い下がる。
「なんで知らない子供が、姉さんに石をぶつけてくるの。姉さんは何も悪い事してないのに。・・・・・なんで、お婆ちゃんは姉さんに居候なんて言うの。ご飯を1人だけ別にするの?・・・・なんで・・・なんで僕は、本当の事を・・・言いたいことを言っちゃいけないの?」
ボロボロ涙を溢しながら訴える光弘に、楓乃子は困った視線を向ける。
「姉さんと同じでいたい。悪口言われるなら、僕も一緒がいいのに・・・・・。」
楓乃子は、光弘を強く抱きしめた。
目を伏せ、暗い瞳で何か考え込んでいる楓乃子だったが、ゆっくり顔をあげると、小さく息を吐いた。
「ごめん・・・・・。これは私のわがままなんだ。私の好きにさせてくれないか・・・・・?」
楓乃子は泣きそうな瞳で、苦し気に光弘に訴えた。
それでも納得のいかない表情でいる光弘に、楓乃子は困ったように微笑んだ。
「その代わり、とっておきの秘密を教えてあげる。」
「・・・・なぁに。」
光弘は、少し唇を尖らせて楓乃子に問いかけた。
「本当はね、私は何も食べなくても平気なんだよ。」
光弘は驚いて目を見開いた。
「お腹が減ることもない。具合が悪くなったりもしない。・・・・だから、本当にお婆ちゃんのやっていることが嫌なら、食べないで残して返したって平気なんだ。それでも私は、あえて食事をしている。」
楓乃子は誇らしげに胸をそらし、得意げな顔をした。
「悪口を言われるのにどうして食べるの?」
「考えてごらん。我が家の食事は、仕事前に母さんが作り置きしてくれているだろう?そして、母さんは婆さんが私にしていることを何も知らない。私に用意した食事が残っていたり、捨てられたりしていたら、母さんはどう思うだろう。」
「母さんを心配させたくないから、お婆ちゃんに悪口言われても食べてるの?」
「・・・・・ほらね。私は、わがままだろ?」
楓乃子が微笑む。
光弘は飛びつくようにして、きつく楓乃子を抱きしめた。
「僕・・・・・姉さんが大好きなんだよ。」
楓乃子は光弘の頭を抱き寄せ、心から幸せそうに微笑んだ。
「・・・・・知ってるよ。」
その言葉を最後に、再び景色が溶けて行った。
新しく形を作りかえていく景色の中で、光弘の声が響く。
『幼い頃の俺は見えないはずの者に、気づかずに話しかけてしまうことがあった。だから姉さんは、わざと庭先で見えない者に話しかけてくれていたんだ。祖母や近所の人に見られるように・・・・・。そうすることで、俺を守ってくれた。』
光弘の声が響くなか、周囲は色を変え、緑に包まれていく。
『俺は、そんな姉さんに結局なにもしてやれなかった。姉さんはいつも俺に笑顔を向けてくれた。いつでも俺の味方でいてくれたのに・・・・・。』
セミの声が鳴り響く。
樹々の緑の中たたずむ光弘と楓乃子の姿が現れた。
「姉さん。僕、やっぱり許せない。なんで姉さんがこんな目に合わなきゃいけないんだ。」
光弘が楓乃子の手を見つめ、険しい表情で怒りをあらわにしている。
そこには真新しい傷があり、真っ赤な血が流れていた。
「そう怒るなって。大丈夫だって言ったろ?みーくんがいつも私の分まで怒ってくれるから、私は全然腹が立たないよ。・・・・ありがとう。」
そう言って光弘の頭をなでながら幸せそうに微笑んだ楓乃子は、そこで話を終わらせようとしたようだった。
だが、そんな楓乃子に光弘が食い下がる。
「なんで知らない子供が、姉さんに石をぶつけてくるの。姉さんは何も悪い事してないのに。・・・・・なんで、お婆ちゃんは姉さんに居候なんて言うの。ご飯を1人だけ別にするの?・・・・なんで・・・なんで僕は、本当の事を・・・言いたいことを言っちゃいけないの?」
ボロボロ涙を溢しながら訴える光弘に、楓乃子は困った視線を向ける。
「姉さんと同じでいたい。悪口言われるなら、僕も一緒がいいのに・・・・・。」
楓乃子は、光弘を強く抱きしめた。
目を伏せ、暗い瞳で何か考え込んでいる楓乃子だったが、ゆっくり顔をあげると、小さく息を吐いた。
「ごめん・・・・・。これは私のわがままなんだ。私の好きにさせてくれないか・・・・・?」
楓乃子は泣きそうな瞳で、苦し気に光弘に訴えた。
それでも納得のいかない表情でいる光弘に、楓乃子は困ったように微笑んだ。
「その代わり、とっておきの秘密を教えてあげる。」
「・・・・なぁに。」
光弘は、少し唇を尖らせて楓乃子に問いかけた。
「本当はね、私は何も食べなくても平気なんだよ。」
光弘は驚いて目を見開いた。
「お腹が減ることもない。具合が悪くなったりもしない。・・・・だから、本当にお婆ちゃんのやっていることが嫌なら、食べないで残して返したって平気なんだ。それでも私は、あえて食事をしている。」
楓乃子は誇らしげに胸をそらし、得意げな顔をした。
「悪口を言われるのにどうして食べるの?」
「考えてごらん。我が家の食事は、仕事前に母さんが作り置きしてくれているだろう?そして、母さんは婆さんが私にしていることを何も知らない。私に用意した食事が残っていたり、捨てられたりしていたら、母さんはどう思うだろう。」
「母さんを心配させたくないから、お婆ちゃんに悪口言われても食べてるの?」
「・・・・・ほらね。私は、わがままだろ?」
楓乃子が微笑む。
光弘は飛びつくようにして、きつく楓乃子を抱きしめた。
「僕・・・・・姉さんが大好きなんだよ。」
楓乃子は光弘の頭を抱き寄せ、心から幸せそうに微笑んだ。
「・・・・・知ってるよ。」
その言葉を最後に、再び景色が溶けて行った。
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