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【番外編】年の瀬 1
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「なぁ!年末からさ、皆で集まれないかな?」
稽古を終えた直後、いつもの道場で勝は息をはずませた。
「集まるって?お前、毎年正月は家じゃなかったっけ?」
俺が問いかけると、勝は目を輝かせた。
「それがさ、年末から兄貴が嫁さんになる人を連れてくることになったんだ。で、そのままみんなでその人を連れて母さんの実家に挨拶行くんだけど、車に乗り切れないし、俺も中学2年だろ。・・・・もう一人でも大丈夫だからって言ったら、まさかの棚ぼた!留守番決定したってわけ。」
勝はニッカリ笑い、光弘を見つめた。
「光弘さ。空いてるなら、俺んち来いよ。」
勝の言葉に、光弘は嬉しそうに目を細めうなずいた。
肩の上で癒が羽を伸ばしあくびをしている。
その時になってようやく俺は、勝の意図に気づき感服した。
彼呼迷軌と関わって以降、勝は落ち着いて急激に大人っぽさを増したように思う。
いつだったか、光弘が言っていたのだ。
長い休みはあまり好きではない。
1人の時間が増えるだけ・・・・と。
癒が現れたことで光弘は独りでいるということはなくなったのだろうが、勝はそれを覚えていたから、あえて留守番したいと、自分から名乗りでたのだろう。
「あら、それなら家にこない?部屋は余ってるし、買い出しのお手伝いもお願いできるしね。」
突然、茶目っ気たっぷりの笑顔で、入口をのぞき込みながら母さんが話に入って来た。
「来年はみんな受験生だし、今年はみんなでパーッとやりましょうよ!」
「いいの?」
勝は目に星を浮かべ、母さんを見た。
「おばちゃん。俺、なんでも手伝うよ。荷物持ちも掃除も、飯だって作るからさ。」
そんな勝に母さんは嬉しそうに笑顔を向ける。
「勝君は大きくなっても本当に、いい子ね。・・・・・ありがとう。」
母さんは勝の腕をポンポンと撫でた。
「そうそう。甘酒作ったの。みんな飲んでいってね。」
そんなこんなで、俺たちは新しい年を一緒に迎えることになった。
**********************
「これは・・・凄いな。」
大晦日の夕方。
妹の遊び相手の都古を家に残し、母さんの運転で買い出しにやってきた俺たちは、家から少し離れたところにある激安スーパーで、お盆時期の流れるプールのごとく渦巻いている人込みに圧倒されていた。
「明日からお店がお正月休みに入るから、今から今年最後のたたき売りをするのよ。真也・・・勝君・・・・光弘君・・・・ターゲットは何か、わかってる?」
「肉。」
「みかん。」
「・・・・・。」
母さんの問いかけに、光弘はチョキを顔の前に出し、指を開いたり閉じたりさせた。
俺と勝は思わずクスッと笑って、光弘の頭を2人でもみくちゃにした。
光弘の身体が揺さぶられ、肩に止まっている癒が、迷惑そうに目を細めている。
「光弘は・・・」
「カニ・・・だな。」
母さんは微笑むと指でオッケーサインを作った。
「完璧よ。この三つは毎年必ずたたき売りしているから、死ぬ気でゲットしましょう。私はそれ以外の物を見定める!」
顔は笑っているのに、目は全く笑っていない。
母さん・・・・怖すぎる。
俺は気を引き締めた。
しばらくすると、さっそくみかんの特売放送が流れ出した。
「よし!んじゃ、俺行ってくる。」
勝はうきうきした表情で、山のようになってみかんに群がり始めた人込みに突っ込んでいった。
直後、今度は肉コーナーの特売放送が流れ始めた。
「光弘、俺も行くよ。」
光弘は真剣な表情でコクリと首を盾に振った。
俺は苦笑しながら、光弘の頬をつまむようにもんだ。
「お前は本当に、真面目だ。・・・無くたって死にはしないんだから。そんなに緊張しなくていいよ。」
光弘は驚いた表情をしてから、ホッとしたように少し微笑んだ。
俺がこんなことを言っても、きっと光弘は力を抜いたりできないんだろうな・・・・。
そんなことを思いながら、俺は人込みに流されるようにして直肉コーナーへと向かった。
稽古を終えた直後、いつもの道場で勝は息をはずませた。
「集まるって?お前、毎年正月は家じゃなかったっけ?」
俺が問いかけると、勝は目を輝かせた。
「それがさ、年末から兄貴が嫁さんになる人を連れてくることになったんだ。で、そのままみんなでその人を連れて母さんの実家に挨拶行くんだけど、車に乗り切れないし、俺も中学2年だろ。・・・・もう一人でも大丈夫だからって言ったら、まさかの棚ぼた!留守番決定したってわけ。」
勝はニッカリ笑い、光弘を見つめた。
「光弘さ。空いてるなら、俺んち来いよ。」
勝の言葉に、光弘は嬉しそうに目を細めうなずいた。
肩の上で癒が羽を伸ばしあくびをしている。
その時になってようやく俺は、勝の意図に気づき感服した。
彼呼迷軌と関わって以降、勝は落ち着いて急激に大人っぽさを増したように思う。
いつだったか、光弘が言っていたのだ。
長い休みはあまり好きではない。
1人の時間が増えるだけ・・・・と。
癒が現れたことで光弘は独りでいるということはなくなったのだろうが、勝はそれを覚えていたから、あえて留守番したいと、自分から名乗りでたのだろう。
「あら、それなら家にこない?部屋は余ってるし、買い出しのお手伝いもお願いできるしね。」
突然、茶目っ気たっぷりの笑顔で、入口をのぞき込みながら母さんが話に入って来た。
「来年はみんな受験生だし、今年はみんなでパーッとやりましょうよ!」
「いいの?」
勝は目に星を浮かべ、母さんを見た。
「おばちゃん。俺、なんでも手伝うよ。荷物持ちも掃除も、飯だって作るからさ。」
そんな勝に母さんは嬉しそうに笑顔を向ける。
「勝君は大きくなっても本当に、いい子ね。・・・・・ありがとう。」
母さんは勝の腕をポンポンと撫でた。
「そうそう。甘酒作ったの。みんな飲んでいってね。」
そんなこんなで、俺たちは新しい年を一緒に迎えることになった。
**********************
「これは・・・凄いな。」
大晦日の夕方。
妹の遊び相手の都古を家に残し、母さんの運転で買い出しにやってきた俺たちは、家から少し離れたところにある激安スーパーで、お盆時期の流れるプールのごとく渦巻いている人込みに圧倒されていた。
「明日からお店がお正月休みに入るから、今から今年最後のたたき売りをするのよ。真也・・・勝君・・・・光弘君・・・・ターゲットは何か、わかってる?」
「肉。」
「みかん。」
「・・・・・。」
母さんの問いかけに、光弘はチョキを顔の前に出し、指を開いたり閉じたりさせた。
俺と勝は思わずクスッと笑って、光弘の頭を2人でもみくちゃにした。
光弘の身体が揺さぶられ、肩に止まっている癒が、迷惑そうに目を細めている。
「光弘は・・・」
「カニ・・・だな。」
母さんは微笑むと指でオッケーサインを作った。
「完璧よ。この三つは毎年必ずたたき売りしているから、死ぬ気でゲットしましょう。私はそれ以外の物を見定める!」
顔は笑っているのに、目は全く笑っていない。
母さん・・・・怖すぎる。
俺は気を引き締めた。
しばらくすると、さっそくみかんの特売放送が流れ出した。
「よし!んじゃ、俺行ってくる。」
勝はうきうきした表情で、山のようになってみかんに群がり始めた人込みに突っ込んでいった。
直後、今度は肉コーナーの特売放送が流れ始めた。
「光弘、俺も行くよ。」
光弘は真剣な表情でコクリと首を盾に振った。
俺は苦笑しながら、光弘の頬をつまむようにもんだ。
「お前は本当に、真面目だ。・・・無くたって死にはしないんだから。そんなに緊張しなくていいよ。」
光弘は驚いた表情をしてから、ホッとしたように少し微笑んだ。
俺がこんなことを言っても、きっと光弘は力を抜いたりできないんだろうな・・・・。
そんなことを思いながら、俺は人込みに流されるようにして直肉コーナーへと向かった。
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