120 / 324
水穂の告白 2
しおりを挟む
水穂は涙を流しながら、事故の後何が起こったのかを口にした。
「事故の直後から、私は真美の近くにずっといた。真美が一番辛いんじゃないかって思ったし、私ももう誰も失いなくなかったから。だけど・・・真美の気持ちは違ってた。・・・・・あの事故の時に真美が一緒に車に乗ってたって聞いて、私は真美にそのことを言ったの。」
水穂は悔しさをにじませた表情で、吐き出すように言った。
「真美は、何も言わなかった。だけど、その翌日から私に酷い嫌がらせや嘘をつくようになった。どうしてそんなことをするのか問いただしたら、真美は私に、『水穂がいなくなれば、事実を知る者はいなくなる。学校は私の味方だから。』って『水穂が悪役を引き受けてくれるから、自分はむしろ今の方が楽しい。感謝してる。』って・・・・・。それで私・・・・・。」
実際、学校に相談に行った水穂の両親は、教頭にお払い箱にされている。
彼女の絶望は、現実のものになってしまったんだ。
だが・・・・・。
「なぁ。事故の時真美が車に乗ってたって、どうしてわかったんだ?」
「同じバスに乗っていた男の子が、教えてくれたの。運転していた母親に、真美が無理に車を動かさせてその場から逃げさせるのが窓から見えたって・・・・・。」
「ふーん。そいつの名前は?」
「わからない。小学生だったけど、見たことのない子だったから。」
腑に落ちないまま、俺は話を進めた。
「ショクとはどうやって知り合ったの?」
「事故の直後、音楽室で個人練習をしていた時に突然入ってきたの。それからずっと私の悩みをきいてくれてた。真美の事を相談した時、彼は条件を守れるなら私の望みをかなえてくれるって言って・・・・・。最初は断ったけど、結局私は・・・・・。」
そこまで聞き終えると、黒衣の青年が低く水穂に問いかけた。
「お前、何もおかしいと思わなかったのか。」
「・・・・・。」
水穂が怪訝な表情で眉間に皺を寄せるのを見て、青年は小さくフッと息を吐いて口の端で笑った。
「なるほどね。」
海神に身を寄せるようにして立っている青い衣の青年もそう言うと、同じ様に笑って肩をすくめた。
「なにがおかしくて、なにがなるほどなんだ?」
勝が、全くわからないという表情で2人を見つめる。
蒼はニヤリと綺麗な顔に笑みを浮かべ、説明を始めた。
「まず、バスに乗っていた少年。これ、明らかにおかしいでしょ。」
蒼は行儀悪く机に頬杖をついた。
「見た事ない子供だったんだろ?それがなぜ、知り合いでもないこの娘にそんな話を突然するんだ?それに・・・・どんな方法を使えば、ただの人の子がバスの中から見ていただけなのに『真美が母親に無理矢理車を出させた』なんてことがわかる?」
「確かに。」
「バスの少年にしても、ショクにしても、不自然につながっていることが多すぎるのさ。」
そう言って、蒼は水穂の額に指で触れた。
「やっぱりね。」
蒼が指を引き抜くと、蠢く細い糸のようなものが、ズルリと額から抜け出した。
俺たちは息をのんだ。
「事故の直後から、私は真美の近くにずっといた。真美が一番辛いんじゃないかって思ったし、私ももう誰も失いなくなかったから。だけど・・・真美の気持ちは違ってた。・・・・・あの事故の時に真美が一緒に車に乗ってたって聞いて、私は真美にそのことを言ったの。」
水穂は悔しさをにじませた表情で、吐き出すように言った。
「真美は、何も言わなかった。だけど、その翌日から私に酷い嫌がらせや嘘をつくようになった。どうしてそんなことをするのか問いただしたら、真美は私に、『水穂がいなくなれば、事実を知る者はいなくなる。学校は私の味方だから。』って『水穂が悪役を引き受けてくれるから、自分はむしろ今の方が楽しい。感謝してる。』って・・・・・。それで私・・・・・。」
実際、学校に相談に行った水穂の両親は、教頭にお払い箱にされている。
彼女の絶望は、現実のものになってしまったんだ。
だが・・・・・。
「なぁ。事故の時真美が車に乗ってたって、どうしてわかったんだ?」
「同じバスに乗っていた男の子が、教えてくれたの。運転していた母親に、真美が無理に車を動かさせてその場から逃げさせるのが窓から見えたって・・・・・。」
「ふーん。そいつの名前は?」
「わからない。小学生だったけど、見たことのない子だったから。」
腑に落ちないまま、俺は話を進めた。
「ショクとはどうやって知り合ったの?」
「事故の直後、音楽室で個人練習をしていた時に突然入ってきたの。それからずっと私の悩みをきいてくれてた。真美の事を相談した時、彼は条件を守れるなら私の望みをかなえてくれるって言って・・・・・。最初は断ったけど、結局私は・・・・・。」
そこまで聞き終えると、黒衣の青年が低く水穂に問いかけた。
「お前、何もおかしいと思わなかったのか。」
「・・・・・。」
水穂が怪訝な表情で眉間に皺を寄せるのを見て、青年は小さくフッと息を吐いて口の端で笑った。
「なるほどね。」
海神に身を寄せるようにして立っている青い衣の青年もそう言うと、同じ様に笑って肩をすくめた。
「なにがおかしくて、なにがなるほどなんだ?」
勝が、全くわからないという表情で2人を見つめる。
蒼はニヤリと綺麗な顔に笑みを浮かべ、説明を始めた。
「まず、バスに乗っていた少年。これ、明らかにおかしいでしょ。」
蒼は行儀悪く机に頬杖をついた。
「見た事ない子供だったんだろ?それがなぜ、知り合いでもないこの娘にそんな話を突然するんだ?それに・・・・どんな方法を使えば、ただの人の子がバスの中から見ていただけなのに『真美が母親に無理矢理車を出させた』なんてことがわかる?」
「確かに。」
「バスの少年にしても、ショクにしても、不自然につながっていることが多すぎるのさ。」
そう言って、蒼は水穂の額に指で触れた。
「やっぱりね。」
蒼が指を引き抜くと、蠢く細い糸のようなものが、ズルリと額から抜け出した。
俺たちは息をのんだ。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
20年かけた恋が実ったって言うけど結局は略奪でしょ?
ヘロディア
恋愛
偶然にも夫が、知らない女性に告白されるのを目撃してしまった主人公。
彼女はショックを受けたが、更に夫がその女性を抱きしめ、その関係性を理解してしまう。
その女性は、20年かけた恋が実った、とまるで物語のヒロインのように言い、訳がわからなくなる主人公。
数日が経ち、夫から今夜は帰れないから先に寝て、とメールが届いて、主人公の不安は確信に変わる。夫を追った先でみたものとは…
婚約者の浮気を目撃した後、私は死にました。けれど戻ってこれたので、人生やり直します
Kouei
恋愛
夜の寝所で裸で抱き合う男女。
女性は従姉、男性は私の婚約者だった。
私は泣きながらその場を走り去った。
涙で歪んだ視界は、足元の階段に気づけなかった。
階段から転がり落ち、頭を強打した私は死んだ……はずだった。
けれど目が覚めた私は、過去に戻っていた!
※この作品は、他サイトにも投稿しています。
王太子さま、側室さまがご懐妊です
家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。
愛する彼女を妃としたい王太子。
本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。
そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。
あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。
前回は断頭台で首を落とされましたが、今回はお父様と協力して貴方達を断頭台に招待します。
夢見 歩
ファンタジー
長年、義母と義弟に虐げられた末に無実の罪で断頭台に立たされたステラ。
陛下は父親に「同じ子を持つ親としての最後の温情だ」と断頭台の刃を落とす合図を出すように命令を下した。
「お父様!助けてください!
私は決してネヴィルの名に恥じるような事はしておりません!
お父様ッ!!!!!」
ステラが断頭台の上でいくら泣き叫び、手を必死で伸ばしながら助けを求めても父親がステラを見ることは無かった。
ステラは断頭台の窪みに首を押さえつけられ、ステラの父親の上げた手が勢いよく振り下ろされると同時に頭上から鋭い刃によって首がはねられた。
しかし死んだはずのステラが目を開けると十歳まで時間が巻き戻っていて…?
娘と父親による人生のやり直しという名の復讐劇が今ここに始まる。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
全力で執筆中です!お気に入り登録して頂けるとやる気に繋がりますのでぜひよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
【R18】お飾り妻は諦める~旦那様、貴方を想うのはもうやめます
無憂
恋愛
三歳の姫に十二歳の婿養子。以来十五年、正室・寧姫は上屋敷で一人寂しく過ごす、完全なるお飾りの妻と化していた。参勤交代で殿様が江戸に戻って来たが、相変わらず奥泊まりもない。お世継ぎもない不安の中、お家騒動の兆しが……。江戸時代の架空の藩、貧乏藩主と幼な妻の、年の差の恋の行方は如何に。
*藩名など、全て架空のもので、実在の藩とは関係ありません。
*エブリスタ、ムーンライトノベルズにも掲載しています。
*現代感覚だと未成年のヒロインに対する無理矢理を暗示するシーンがあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる