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光弘の告白 4
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癒が何か言いたげに光弘の頬に頭を押し付けている。
そんな癒を優しくなでながら、光弘は再び口を開いた。
「姉さんは、俺をずっと守ってくれていた。姉さんを失った俺は無力で・・・・・。俺にとり憑いた悪夢が、親しくしてくれている人たちを襲うのを止めることすらできなかった。」
光弘は大きく1つ息を吐いた。
「最後に母さんが襲われ、俺は独りになった。父さんは俺を仕事場の近くへ引っ越させた。今はほとんど顔を合わせることはないけど、それでいい。父さんまで失いたくはないから。」
俺は光弘のそばに駆け寄りたい気持ちを必死でこらえ、奥歯をかみしめた。
あふれそうになる涙を必死で飲み込む。
最期まで、光弘の話を聞くんだ ・・・・・・。
「もう、誰とも親しくしないと誓ってた。でも、真也・・・勝・・・都古。3人のことだけはどうしても諦められなかった。あの雨の日。本当は離れなきゃいけなかったんだ・・・・・・。」
光弘は苦しそうな声で絞り出すように言った。
「俺はずるいよ。姉さんから生きる時間を奪っておいて、自分は・・・・・みんなと一緒の時間を手放したくないと願ってる。楽しいって思うたび、みんなに感謝するたび、棘が刺さってるみたいに胸が痛いんだ。」
光弘の瞳が再び涙でうるんだ。
「俺のわがままのせいで、みんなを・・・あの人を殺してしまうところだった。本当に・・・・・・ごめん。」
考える前に身体が飛び出していた。
俺は光弘を力いっぱい抱きしめた。
光弘。お前、なんでそんなに背負っちゃうんだよ。
なんで・・・・・そんなに優しくいられるんだよ。
お前のは、わがままって言わないんだよ。
たくさんの言葉があふれてくるのに、胸がつまって言葉にならない。
俺は、震えそうになる声をおさえながら口を開いた。
「俺、光弘を諦められない・・・・・。俺がいることでお前がこのまま苦しむことになっても。離れたくない・・・・そばにいたいんだ。」
勝が、泣いている都古の頭を腕で抱き寄せながら笑った。
「光弘がわがままなら、ここにいる全員、わがままってことだな。」
勝の言葉に、都古も力強くうなずいた。
光弘の肩の上で、癒が「自分もだ」というように、得意げに胸を逸らしている。
「癒。お前のお陰で、俺たちまたチャンスをもらえた。・・・・ありがとう。」
癒がいてくれなかったら、俺たちは今こうしていられなかった。
俺は、いまだに暗い瞳でみけんにしわを寄せている光弘の頬を、両手で包み込んだ。
「光弘。ありがとう。話してくれて・・・・そばにいてくれて・・・・・。やっぱり俺、お前のこと嫌いになんてなれないよ。離れることなんて考えたくもない。・・・・・光弘の事が大好きなんだ。」
俺はそう言って、もう一度強く光弘を抱きしめた。
勝が都古ごと俺たち3人を抱きしめる。
「強くなるよ、俺たち。光弘が心配しないですむくらいにさ。・・・・だから」
勝は、光弘の頭を引き寄せ、自分の額を光弘の額にコツンと重ねた。
「勝手に諦めて、俺たちの前から消えるのは絶対に無しだ。」
怖い位真剣な瞳で見つめられ、光弘は哀しそうな表情でうなずいた。
「それと、さっき見てて気づいたんだけど、もしかして癒って・・・・・・」
勝が口を開いて何か言っているのに、急に声が小さくなり聞こえなくなってしまった。
ぼんやりと温かく意識が包まれ、やがてみんなの姿が見えなくなった。
そんな癒を優しくなでながら、光弘は再び口を開いた。
「姉さんは、俺をずっと守ってくれていた。姉さんを失った俺は無力で・・・・・。俺にとり憑いた悪夢が、親しくしてくれている人たちを襲うのを止めることすらできなかった。」
光弘は大きく1つ息を吐いた。
「最後に母さんが襲われ、俺は独りになった。父さんは俺を仕事場の近くへ引っ越させた。今はほとんど顔を合わせることはないけど、それでいい。父さんまで失いたくはないから。」
俺は光弘のそばに駆け寄りたい気持ちを必死でこらえ、奥歯をかみしめた。
あふれそうになる涙を必死で飲み込む。
最期まで、光弘の話を聞くんだ ・・・・・・。
「もう、誰とも親しくしないと誓ってた。でも、真也・・・勝・・・都古。3人のことだけはどうしても諦められなかった。あの雨の日。本当は離れなきゃいけなかったんだ・・・・・・。」
光弘は苦しそうな声で絞り出すように言った。
「俺はずるいよ。姉さんから生きる時間を奪っておいて、自分は・・・・・みんなと一緒の時間を手放したくないと願ってる。楽しいって思うたび、みんなに感謝するたび、棘が刺さってるみたいに胸が痛いんだ。」
光弘の瞳が再び涙でうるんだ。
「俺のわがままのせいで、みんなを・・・あの人を殺してしまうところだった。本当に・・・・・・ごめん。」
考える前に身体が飛び出していた。
俺は光弘を力いっぱい抱きしめた。
光弘。お前、なんでそんなに背負っちゃうんだよ。
なんで・・・・・そんなに優しくいられるんだよ。
お前のは、わがままって言わないんだよ。
たくさんの言葉があふれてくるのに、胸がつまって言葉にならない。
俺は、震えそうになる声をおさえながら口を開いた。
「俺、光弘を諦められない・・・・・。俺がいることでお前がこのまま苦しむことになっても。離れたくない・・・・そばにいたいんだ。」
勝が、泣いている都古の頭を腕で抱き寄せながら笑った。
「光弘がわがままなら、ここにいる全員、わがままってことだな。」
勝の言葉に、都古も力強くうなずいた。
光弘の肩の上で、癒が「自分もだ」というように、得意げに胸を逸らしている。
「癒。お前のお陰で、俺たちまたチャンスをもらえた。・・・・ありがとう。」
癒がいてくれなかったら、俺たちは今こうしていられなかった。
俺は、いまだに暗い瞳でみけんにしわを寄せている光弘の頬を、両手で包み込んだ。
「光弘。ありがとう。話してくれて・・・・そばにいてくれて・・・・・。やっぱり俺、お前のこと嫌いになんてなれないよ。離れることなんて考えたくもない。・・・・・光弘の事が大好きなんだ。」
俺はそう言って、もう一度強く光弘を抱きしめた。
勝が都古ごと俺たち3人を抱きしめる。
「強くなるよ、俺たち。光弘が心配しないですむくらいにさ。・・・・だから」
勝は、光弘の頭を引き寄せ、自分の額を光弘の額にコツンと重ねた。
「勝手に諦めて、俺たちの前から消えるのは絶対に無しだ。」
怖い位真剣な瞳で見つめられ、光弘は哀しそうな表情でうなずいた。
「それと、さっき見てて気づいたんだけど、もしかして癒って・・・・・・」
勝が口を開いて何か言っているのに、急に声が小さくなり聞こえなくなってしまった。
ぼんやりと温かく意識が包まれ、やがてみんなの姿が見えなくなった。
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