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帰宅
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長い一日を終え、俺たちは自分たちの世界へ帰ることになった。
都古の家へ戻ると、あの屋台の骨付き肉をはじめ、餅やらなんやら、たくさんのお土産が用意されていた。
「残念ながら、綿氷のような簡易術式を用いたものはここを出ると解けてしまうので、持ち帰ることができません。が、こちらは持ち帰っても大丈夫。水妖の強力な術です。そう簡単に解けるものではありませんので。」
そう言って翡翠から渡されたのは、竹でできた水筒だった。
「この水筒の中は、命逢の水源へと繋がっています。みずはから、あなたがたへの贈り物だそうです。」
俺たちはお礼を言って受け取った。
みずはの可愛らしい笑顔が思い出される。
「さて、本題だけど。君たちには明日から早速修行に入ってもらいたい。細かいことは、追って連絡する。大変だと思うがよろしく頼む。」
俺たちは久遠の言葉に真剣な表情でうなずいた。
ようやく、光弘の心に触れられる場所まできたんだ。
もう、絶対に離したくない。
「真也君。都古がお世話になります。ご家族の皆様にもよろしくお伝えくださいね。」
そう言って、翡翠が少し寂しそうな顔で、都古の髪を撫でた。
「癒。光弘を頼んだぞ。」
白妙がそう言った瞬間、癒の身体が束の間ぼんやりと光を帯びた。
白妙と久遠たちが、いぶかし気に癒を見た。
「あらあら。ようやく癒にも加護が与えられたようですね。」
「今回ばかりは、彼呼迷軌の意図がわからん。」
「全く同感だ。」
「ともかく、加護が与えられたのであれば、癒も単独で彼呼迷軌の門を自由に
行き来できるようになったということ。いまは頼もしいことだと喜んでおくしかあるまい。」
どうやら、白妙たちにとっても今の状況は普通とは言えないみたいだ。
俺は若干の不穏な空気を感じながら、3人に挨拶をし帰路についた。
************************************
子供たちが帰り、白妙、久遠、翡翠の3人は今後のことに頭を悩ませていた。
宵闇の存在だけではない。
彼呼迷軌の、暴走とも言える動きには全く理解ができなかった。
彼呼迷軌は善の気が固まり形を成したようなもの。
それ自体に人格はないが、悪意など負の存在に対しての反応には敏感だ。
にもかかわらず、彼呼迷軌は光弘に無色の術を使わせた。
あれは人に耐えられる術ではない。
癒がいなければ、危うく光弘は命を落とすところだったのだ。
「なにか、私たちの目に映っていないものがあるのかもしれないね。」
久遠の言葉に、白妙と翡翠はうなずいた。
「みずはの配下に妖しい動きがあったようです。宵闇のことはもちろんですが・・・・・気になりますね。」
「それに、あの癒だ。あれは底が見えない。」
光弘が自分の記憶を消し、宵闇を封じようとした時。
癒の使った術は、とても繊細で高度なものだった。
言霊の術の流れの速さと形を読み取り、正しく逆の力で撃ち砕く。
言葉で言うのは簡単だが、これを行うには最低でも魂の流れを自ら操れるだけの能力と、緻密な計算、繊細な妖力のコントロールが必要なのだ。
妖月の中でも、これを行えるものは少ないだろう。
ましてや何の準備もなく、唐突になせる者などいるはずもなかった。
現にあの時、白妙は動けずにいたのだ。
「一体・・・・・あれは何者なのだ。」
光弘に対する異常なまでの執着といい、癒にはあまりに謎が多すぎた。
だが、今はその力にすがるより他に手はない。
白妙はため息をついた。
頭の片隅を勝の顔がよぎる。
何か、良くないことが起きようとしている。
悪意ある霧に気づかぬうちに包まれているような嫌な感覚に、白妙は表情を堅くした。
都古の家へ戻ると、あの屋台の骨付き肉をはじめ、餅やらなんやら、たくさんのお土産が用意されていた。
「残念ながら、綿氷のような簡易術式を用いたものはここを出ると解けてしまうので、持ち帰ることができません。が、こちらは持ち帰っても大丈夫。水妖の強力な術です。そう簡単に解けるものではありませんので。」
そう言って翡翠から渡されたのは、竹でできた水筒だった。
「この水筒の中は、命逢の水源へと繋がっています。みずはから、あなたがたへの贈り物だそうです。」
俺たちはお礼を言って受け取った。
みずはの可愛らしい笑顔が思い出される。
「さて、本題だけど。君たちには明日から早速修行に入ってもらいたい。細かいことは、追って連絡する。大変だと思うがよろしく頼む。」
俺たちは久遠の言葉に真剣な表情でうなずいた。
ようやく、光弘の心に触れられる場所まできたんだ。
もう、絶対に離したくない。
「真也君。都古がお世話になります。ご家族の皆様にもよろしくお伝えくださいね。」
そう言って、翡翠が少し寂しそうな顔で、都古の髪を撫でた。
「癒。光弘を頼んだぞ。」
白妙がそう言った瞬間、癒の身体が束の間ぼんやりと光を帯びた。
白妙と久遠たちが、いぶかし気に癒を見た。
「あらあら。ようやく癒にも加護が与えられたようですね。」
「今回ばかりは、彼呼迷軌の意図がわからん。」
「全く同感だ。」
「ともかく、加護が与えられたのであれば、癒も単独で彼呼迷軌の門を自由に
行き来できるようになったということ。いまは頼もしいことだと喜んでおくしかあるまい。」
どうやら、白妙たちにとっても今の状況は普通とは言えないみたいだ。
俺は若干の不穏な空気を感じながら、3人に挨拶をし帰路についた。
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子供たちが帰り、白妙、久遠、翡翠の3人は今後のことに頭を悩ませていた。
宵闇の存在だけではない。
彼呼迷軌の、暴走とも言える動きには全く理解ができなかった。
彼呼迷軌は善の気が固まり形を成したようなもの。
それ自体に人格はないが、悪意など負の存在に対しての反応には敏感だ。
にもかかわらず、彼呼迷軌は光弘に無色の術を使わせた。
あれは人に耐えられる術ではない。
癒がいなければ、危うく光弘は命を落とすところだったのだ。
「なにか、私たちの目に映っていないものがあるのかもしれないね。」
久遠の言葉に、白妙と翡翠はうなずいた。
「みずはの配下に妖しい動きがあったようです。宵闇のことはもちろんですが・・・・・気になりますね。」
「それに、あの癒だ。あれは底が見えない。」
光弘が自分の記憶を消し、宵闇を封じようとした時。
癒の使った術は、とても繊細で高度なものだった。
言霊の術の流れの速さと形を読み取り、正しく逆の力で撃ち砕く。
言葉で言うのは簡単だが、これを行うには最低でも魂の流れを自ら操れるだけの能力と、緻密な計算、繊細な妖力のコントロールが必要なのだ。
妖月の中でも、これを行えるものは少ないだろう。
ましてや何の準備もなく、唐突になせる者などいるはずもなかった。
現にあの時、白妙は動けずにいたのだ。
「一体・・・・・あれは何者なのだ。」
光弘に対する異常なまでの執着といい、癒にはあまりに謎が多すぎた。
だが、今はその力にすがるより他に手はない。
白妙はため息をついた。
頭の片隅を勝の顔がよぎる。
何か、良くないことが起きようとしている。
悪意ある霧に気づかぬうちに包まれているような嫌な感覚に、白妙は表情を堅くした。
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