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縁中て

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 ゆいが光弘の身の安全を引き受けてくれたことで、その後は順調に話が進んでいった。

 「ようやく話もまとまった。改めて皆に頼みたいことがある。」

 そう言って白妙は、赤、青、白、緑、黒の5色の石を用意した。 

 「縁中えにしあてを行う。各々子供たちの成長に力を貸してもらいたいのだ。」
 「お前から頼みとは珍しいことだな。・・・私に異論はない。」

 海神わだつみの言葉に、その場にいた全ての神妖がうなずいた。
 白妙は満足げにうなずくと、都古みやこの前に石を広げた。 

 都古が石に手をかざすと、白と赤の石が強烈な光を放った。 

 「真也しんや。次はお前だ。やってみろ。」 

 白妙に勧められるがままに、俺は石に手をかざした。 

手のひらに、ほのかな熱を感じる。
全ての石から光があふれ出し、絡み合いながら上へと昇っていく。 

「やはりな・・・・・。」 

白妙のつぶやきに、久遠がうなずく。 
次に、しょうが手をかざした。 
白い石が光った気がしたが、それを塗りつぶし噴き出すようにして、全ての光を吸い取ってしまいそうな影が黒い石から放たれた。 

「闇・・・・・か。」 

 海神が険しい表情でつぶやいた。

 「お前のような底抜けに明るい根っからの善人が闇の力を宿しているのは、見たことがない。 」

 白妙もいぶかし気に闇の光を見つめた。
 最後に光弘が手をかざす。 
 ところが、光弘のかざした手に反応する石は一つもなかった。 

 「へーぇ。」

 はやてが目を細めた。

 「信じられん。お前・・・・無色か。」
 「宵闇の魅入る者。ただものであるはずがなかったということか。」 

 加具土命かぐつちと海神の言葉に、光弘はなにがなんだかわからず、不安そうな顔をしている。 

 「縁中ては終わった。未来の執護あざねが絡む話だ。修行は明日から始める。皆の者、よろしく頼むぞ。」 
 「心得ている。」 

 白妙の言葉を最後に、妖月は解散した。
 久遠がとばりを引き下ろし結界を解除すると、妖月の神妖たちは各々散って行った。 

 「来い・・・・・・勝。」

 白妙がなぜか突然勝を呼ばわった。
 白妙と勝の周囲だけ空気が変わっていく。
 そんなに離れているわけではないのに、2人の会話や表情が急に遠く朧気に感じられた。
 恐らく、白妙がなんらかの術を使ったのだ。

 話が終わった2人は、なんとなくよそよそしい雰囲気でこちらへ歩いてきた。
 白妙は、ぎこちない様子で、翡翠ひすいに「俺たちを風呂へ案内してやってはどうか」と提案し、そのままどこかへ行ってしまった。

 「あらあら。あんなに動揺して。どうしたのでしょうね。」

 そう言って驚いた表情をみせる翡翠に連れられ、俺たちは風呂へ向かった。


************************

 「勝。お前、なぜ分かった。」
 「?なんだよ。藪から棒に・・・・・・。」

  急に白妙に呼ばれた俺は、白妙が何を言っているのか分からず、うなじに手を当て首をひねった。

 「お前・・・私が舞を舞った時、泣いていると言ったろう。なぜそう思ったのだ。」
 「なぜって・・・・・いや。お前あの時、普通に泣いてただろ。むしろなんでそんなこと俺に聞くんだよ。」
 「・・・・・・私は、術を使い仮の表情を見せていたのだ。それをお前は暴いてしまった。」

 つまり、術を使って泣いていることを隠していたのに、俺にばれた。
 どうやって術を解いてみせたんだ・・・・・答えろっ、てことか。
 そんなのむしろ、俺が聞きたいくらいなんだけど。

 俺は、少しの間考え、思いつくままに話し出した。

 「うーん。わかんないけどさ。この世界って、心が一番重要になるんだろ?このはらいってやつだって、彼呼迷軌と同調しないと上手くつかえないわけだし。」
 「何が言いたい。」
 「お前が術を使って泣いてることを隠してたんだとしたら、つまり・・・・・そういうこと、なんだろ。」

 白妙に答えながら、俺は自分の気持ちを初めて自覚していた。

 「・・・・・?」
 「俺・・・・・お前の事嫌いじゃないよ。」

 白妙が眉間に皺をよせ、先をうながすように小さく顎を上げた。 

 「あー!もう!全部言わせんのかよ!・・・・・・だからさっ。同調することが術に関係あるんだとしたら、お前と俺は同じ大きさでお互いを想ってるってことなんじゃねーの?・・・・・・違ったら・・・恥ずいけどな。」

 俺はそう言って、白妙に背を向けた。
 顔が、火が出そうなほどに熱い。
 こんな風に誰かを想ったことは、今まで一度もなかった。
 

 
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