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夏休み 1

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 むせかえりそうな夏の熱気をものともせず、俺、勝、都古の3人が探検活動を満喫している場所は、俺の家をぐるりと取り囲んでいる大きな庭である。

 曾祖父そうそふの代まで植木屋を営んでいた俺の家の庭は、学校のグラウンドよりさらに広い。木々が生い茂り深く広がる裏庭を越えると、そこには畑が続いていた。
 家の表側の庭はアスファルトで舗装され、車が10台以上とめられる広さがある。
 庭の端には、教室ほどの広さのひょうたん型の池があり、くびれ部分にかかった石橋の向こう側では、サラサラと涼やかに滝が落ちていた。

 「こっちだ。あとはしょうにまかせたっ。」

 俺は小声で二人を呼び寄せると、口の前に人差し指を立てながら、1本の木を指さした。

 勝は「しょうがねえなぁ。」と言いつつ肩をすくめたが、言葉とは裏腹に獲物を目でとらえると無駄のない動きで虫取り網を手にし、気配を殺して動き始めた。

 足音を忍ばせ目的の木の下までたどり着いた勝は、真っ黒に日焼けした長い腕をスルスルと静かに伸ばしていく。
 辺りを支配していた音の波がピタリと止まり、ピリピリした静寂が3人を包み込んだ。

 直後───ヒュンッ!と虫取り網が風を切る音が鳴り、同時に狂ったようなセミの鳴き声が響き渡った。

 「よっしゃぁ!!」

 歓声とともに、俺と都古みやこは勝の元に駆け寄る。

 「ちくしょう!しょんべんひっかけられたぜ!」

 勝は思いっきり顔をしかめながら、わめきたてるセミをわしづかみにし虫かごへ突っ込んだ。

 「あははははっ!勝の大健闘のおかげで目標10匹達成だ!」

 虫かごの中は、新入りの投入で非難の声がごうごうと巻き起こり大混乱だ。
 みんなで中を覗き込んでいると、チリーン・・・チリーン・・・と、庭先から自転車のベルの音が聴こえてきた。

 「|光弘(みつひろ)だ!!」

 俺たちは声をそろえて叫ぶと、競いながら表の庭へ向かって走り出した。
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