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【箸休め:番外編】龍粋 9
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龍粋の言葉に、黒はすっと目を細めた。
「ありがとう。君は、ボクをずっと探し続けてくれていたんだろう。」
「・・・・・・本当に、あなたには叶わないね。」
「それはお互い様ということにしておくよ。君は力に似合わず、ずいぶんと謙虚な子のようだから・・・。」
「龍粋。」
あまりに切ない声で名を囁かれ、龍粋は意識を白い霞にのまれながら、祈る様に最期の言葉を紡ぐ。
「君に・・・幸せになって欲しい。ボクの最後の願いだ。」
龍粋の精神と共に、魂を取り巻いている光と影が急速に色あせていく。
立ち上る全ての光を欠片も残さずに飲み込んだ龍粋の魂は、薄青い光を放ちながらその形をハッキリと変えた。
湧き出した淡い光はしばらくすると新しい命に吸い付くようにぴたりと肌に落ちていく。
「さようなら・・・・・・龍粋。」
黒の酷く掠れた言葉だけが、透き通る静けさの中に置き去りにされ、ひっそりと薄らいで消えていった。
そこに共に戸をくぐって来た者の気配はもうない。
代わりに一人の幼い子供がふわりと浮き上がる様にして佇んでいた。
固く目を閉じたままの幼子は、与えられた光を全て余すことなく自らの身に受け入れると、間を空けず崩れるように倒れ始めた。
その小さすぎる身体をすかさず抱きとめ、清潔な布できちんとくるんでやった黒は、変わり果てた龍粋の身体をきつく抱きしめたまましばらく動けずにいた。
腕の中の幼子が、安心しきった表情でわずかに身じろぐ。
無防備な仕草に目を細めた黒は、細くゆっくり息を吐き出すと、ようやく碧を呼ぶことができた。
「黒様。」
「碧。おまえに、頼みごとができた。」
「なんなりと。」
黒は腕の中の者を酷く脆いものを扱うかのように、極めて優しい手つきで碧へと託した。
「この人を、みてやって欲しい。お前以外の者に頼むつもりはない。・・・できるか。」
碧は目を細め幼子を見つめると、「仰せのままに。」と淡々とした様子で口にした。
極めて冷静であるように見えるが、碧の胸中は激しくざわめいている。
「お前以外の者に頼むつもりはない」ということは、碧が断れば主は自らこの者を引き受けるつもりであるということなのだ。
それほど主にとって重要な者・・・。
託されたことへの大きな喜びと、少しの好奇心に胸の内をかき回されながら、碧は落ち着いた様子で問いかける。
「この方を、私はなんとお呼びすればよろしいでしょうか。」
「ありがとう。君は、ボクをずっと探し続けてくれていたんだろう。」
「・・・・・・本当に、あなたには叶わないね。」
「それはお互い様ということにしておくよ。君は力に似合わず、ずいぶんと謙虚な子のようだから・・・。」
「龍粋。」
あまりに切ない声で名を囁かれ、龍粋は意識を白い霞にのまれながら、祈る様に最期の言葉を紡ぐ。
「君に・・・幸せになって欲しい。ボクの最後の願いだ。」
龍粋の精神と共に、魂を取り巻いている光と影が急速に色あせていく。
立ち上る全ての光を欠片も残さずに飲み込んだ龍粋の魂は、薄青い光を放ちながらその形をハッキリと変えた。
湧き出した淡い光はしばらくすると新しい命に吸い付くようにぴたりと肌に落ちていく。
「さようなら・・・・・・龍粋。」
黒の酷く掠れた言葉だけが、透き通る静けさの中に置き去りにされ、ひっそりと薄らいで消えていった。
そこに共に戸をくぐって来た者の気配はもうない。
代わりに一人の幼い子供がふわりと浮き上がる様にして佇んでいた。
固く目を閉じたままの幼子は、与えられた光を全て余すことなく自らの身に受け入れると、間を空けず崩れるように倒れ始めた。
その小さすぎる身体をすかさず抱きとめ、清潔な布できちんとくるんでやった黒は、変わり果てた龍粋の身体をきつく抱きしめたまましばらく動けずにいた。
腕の中の幼子が、安心しきった表情でわずかに身じろぐ。
無防備な仕草に目を細めた黒は、細くゆっくり息を吐き出すと、ようやく碧を呼ぶことができた。
「黒様。」
「碧。おまえに、頼みごとができた。」
「なんなりと。」
黒は腕の中の者を酷く脆いものを扱うかのように、極めて優しい手つきで碧へと託した。
「この人を、みてやって欲しい。お前以外の者に頼むつもりはない。・・・できるか。」
碧は目を細め幼子を見つめると、「仰せのままに。」と淡々とした様子で口にした。
極めて冷静であるように見えるが、碧の胸中は激しくざわめいている。
「お前以外の者に頼むつもりはない」ということは、碧が断れば主は自らこの者を引き受けるつもりであるということなのだ。
それほど主にとって重要な者・・・。
託されたことへの大きな喜びと、少しの好奇心に胸の内をかき回されながら、碧は落ち着いた様子で問いかける。
「この方を、私はなんとお呼びすればよろしいでしょうか。」
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