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【箸休め:番外編】龍粋 8
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「まさか、こんな状況で、僕のほうがあなたに励まされるなんてね。」
黒はわずかに目を開いたが、ハハッと笑ってそう言うと最後の力を丁寧に込め始めた。
「龍粋、ありがとう。あなたはこうして消えずにいてくれた。」
黒の言葉に今度は龍粋が驚き、声を上げる。
「礼を言うべきはボクの方なのに、なぜそんな事を言う。君は本当に不器用な子だな。」
呆れた口調で言ってから、龍粋は今度は極めて落ち着いた声で柔らかく言葉を紡ぐ。
「・・・・・・不器用だけれど、とてもいい子だ。」
「そう?」
「ああ。君は本当にいい子だ。昔からずっと、そう思っていたよ。」
答えながら、龍粋の魂がにじむようにじわりと形を変え始める。
龍粋を包み込んでいる青白い光と立ち上る黒い影が、彼の魂にごくりごくりと飲み込まれ、次第に薄らぎだした。
術を施す黒の細くしなやかな指先は小さく震えている。
だが、そのひっそりとした深い哀しみに気づいてやれる者は、ここには誰一人としていなかった。
「大好きだったんだ。・・・あなたたちと過ごす時間が。」
低く掠れた黒の言葉に、龍粋が静かに返す。
「同じだよ。ボクも同じだった。」
少しの間をおいて、龍粋は深く響く声で噛みしめるように伝える。
「ありがとう・・・・・・黒。」
「・・・気づいていたの。」
黒の問いかけに、龍粋が少し笑いながら答える。
「そうじゃない。ただ、もし君が双凶の黒と呼ばれている妖鬼でないのだとしたら、他に思い当たる者がいないだろう。」
「なぜ?」
食い入るように興味深げに覗き込んでくる黒の瞳は、透き通る様な光を放つ小さな星たちを抱いている。
その目は仮面越しにこちらを真っすぐみつめてきたあの少年のまま、一つも変わるところがない。
黒の瞳を泣きたいほどの懐かしさで見つめ返し、龍粋は落ち着いた声で・・・だが少し呆れた調子で答えた。
「君は冥府を手中に収められるほど凄まじい力を持つ妖鬼だ。となれば、ボクのような塵芥のような者の耳にまでその名を轟かせている、双凶と呼ばれる最強の妖鬼のうちいずれか以外に、考えられる者はいない。蒼は知らない者ではないし、それに君は黒い衣をまとっている。他に思い当たる者はないよ。」
黒はフッと楽し気に息を吐き出し小さく笑った。
「こんな姿になった僕をそんな風に言って嬉しがらせてくれるなんて・・・あなたは相変わらず、優しい人だね。」
「事実を言っただけだ。それに、優しいのはボクじゃない。真実を伏せたまま救い続けている、君の方だ。」
黒はわずかに目を開いたが、ハハッと笑ってそう言うと最後の力を丁寧に込め始めた。
「龍粋、ありがとう。あなたはこうして消えずにいてくれた。」
黒の言葉に今度は龍粋が驚き、声を上げる。
「礼を言うべきはボクの方なのに、なぜそんな事を言う。君は本当に不器用な子だな。」
呆れた口調で言ってから、龍粋は今度は極めて落ち着いた声で柔らかく言葉を紡ぐ。
「・・・・・・不器用だけれど、とてもいい子だ。」
「そう?」
「ああ。君は本当にいい子だ。昔からずっと、そう思っていたよ。」
答えながら、龍粋の魂がにじむようにじわりと形を変え始める。
龍粋を包み込んでいる青白い光と立ち上る黒い影が、彼の魂にごくりごくりと飲み込まれ、次第に薄らぎだした。
術を施す黒の細くしなやかな指先は小さく震えている。
だが、そのひっそりとした深い哀しみに気づいてやれる者は、ここには誰一人としていなかった。
「大好きだったんだ。・・・あなたたちと過ごす時間が。」
低く掠れた黒の言葉に、龍粋が静かに返す。
「同じだよ。ボクも同じだった。」
少しの間をおいて、龍粋は深く響く声で噛みしめるように伝える。
「ありがとう・・・・・・黒。」
「・・・気づいていたの。」
黒の問いかけに、龍粋が少し笑いながら答える。
「そうじゃない。ただ、もし君が双凶の黒と呼ばれている妖鬼でないのだとしたら、他に思い当たる者がいないだろう。」
「なぜ?」
食い入るように興味深げに覗き込んでくる黒の瞳は、透き通る様な光を放つ小さな星たちを抱いている。
その目は仮面越しにこちらを真っすぐみつめてきたあの少年のまま、一つも変わるところがない。
黒の瞳を泣きたいほどの懐かしさで見つめ返し、龍粋は落ち着いた声で・・・だが少し呆れた調子で答えた。
「君は冥府を手中に収められるほど凄まじい力を持つ妖鬼だ。となれば、ボクのような塵芥のような者の耳にまでその名を轟かせている、双凶と呼ばれる最強の妖鬼のうちいずれか以外に、考えられる者はいない。蒼は知らない者ではないし、それに君は黒い衣をまとっている。他に思い当たる者はないよ。」
黒はフッと楽し気に息を吐き出し小さく笑った。
「こんな姿になった僕をそんな風に言って嬉しがらせてくれるなんて・・・あなたは相変わらず、優しい人だね。」
「事実を言っただけだ。それに、優しいのはボクじゃない。真実を伏せたまま救い続けている、君の方だ。」
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