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【箸休め:番外編】龍粋 1
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蒼の妖鬼に全てを託し身体を手放した後。
龍粋は、非常に長い年月、神妖界の大気を漂っていた。
妖力を失い、砂粒のような欠片の集まりとなり果てた龍粋の魂は、酷く脆い。
凄まじい修練を積み重ねてきた龍粋であったからこそ、かろうじてこのように未練を持ったままの状態でさまようことがゆるされたのだ。
他の者であったなら、瞬時に大気に散り果て跡形も残すことはできなかっただろう。
とはいえ神妖界最強を誇った龍粋であっても、わずかばかりの時間、薄く意識を保つだけで精いっぱいである。
不幸中の幸いにも、命を失った場所が自らの神殿からそう離れた場所でなかったため、龍粋はそれ以上魂を損なうことなく、ゆらゆらと水神殿までたどり着くことができたのだ。
自分が何者であるかすらあやふやになりかけながら、自らの部屋へ身を置いた龍粋は、引きずりこまれるように深い眠りへと落ちていった。
数十年をかけ、どうにか目覚めるまでの力を蓄えると、龍粋は申し訳程度の魂をかき集め、神妖界を束の間眺め見ては再び深い眠りにつく。
そうして繰り返し目覚めるたび、目にする神妖界は目まぐるしいほどの復活を遂げていた。
守り切れず、血にまみれさせてしまった神妖界が、かつての穏やかな情景を取り戻しゆく様は、龍粋をたまらない気持ちにさせる。
想いを伝える相手も、分かち合う相手もいないまま、龍粋はただ独り、誰に知られることなく幾度も起き伏しを繰り返していた。
そんなことをしていれば、残された魂が欠片ほどのものしかないとはいえ、いくらか外を覗けるくらいには慣れがでてくるものである。
久方ぶりというにはあまりにも長い年月を隔て、龍粋は少しの間水神殿の中を漂ってみることにした。
以前とさほど変わりないように見える神殿の長い廊下をゆらりと頼りなく進んでいると、小部屋から甘やかなささやきが聴こえてくる。
ふわりと心の淵をくすぐるられるような妙な感覚に誘われ、龍粋は特に警戒することもなく、その小部屋を覗き込んだ。
それを目にした刹那。
龍粋は、遥か以前に失ったはずの身体が深い灼熱を帯びたように錯覚し、慌てて元居た部屋へと戻った。
蒼の妖鬼と海神がこのうえなく深く愛し合っている場面に、思いがけず出くわしてしまったのだ。
あまりにも幸福なその事実に、龍粋の胸の内を破裂しそうな喜びが湧き上がる。
最愛の弟子であるあの海神が、蒼の妖鬼に見初められるなんて!
凄まじい幸せに胸をいっぱいに膨らませた龍粋は、跳ね上がる鼓動をどうにか落ち着かせると、無理やり浅い眠りについた。
龍粋は、非常に長い年月、神妖界の大気を漂っていた。
妖力を失い、砂粒のような欠片の集まりとなり果てた龍粋の魂は、酷く脆い。
凄まじい修練を積み重ねてきた龍粋であったからこそ、かろうじてこのように未練を持ったままの状態でさまようことがゆるされたのだ。
他の者であったなら、瞬時に大気に散り果て跡形も残すことはできなかっただろう。
とはいえ神妖界最強を誇った龍粋であっても、わずかばかりの時間、薄く意識を保つだけで精いっぱいである。
不幸中の幸いにも、命を失った場所が自らの神殿からそう離れた場所でなかったため、龍粋はそれ以上魂を損なうことなく、ゆらゆらと水神殿までたどり着くことができたのだ。
自分が何者であるかすらあやふやになりかけながら、自らの部屋へ身を置いた龍粋は、引きずりこまれるように深い眠りへと落ちていった。
数十年をかけ、どうにか目覚めるまでの力を蓄えると、龍粋は申し訳程度の魂をかき集め、神妖界を束の間眺め見ては再び深い眠りにつく。
そうして繰り返し目覚めるたび、目にする神妖界は目まぐるしいほどの復活を遂げていた。
守り切れず、血にまみれさせてしまった神妖界が、かつての穏やかな情景を取り戻しゆく様は、龍粋をたまらない気持ちにさせる。
想いを伝える相手も、分かち合う相手もいないまま、龍粋はただ独り、誰に知られることなく幾度も起き伏しを繰り返していた。
そんなことをしていれば、残された魂が欠片ほどのものしかないとはいえ、いくらか外を覗けるくらいには慣れがでてくるものである。
久方ぶりというにはあまりにも長い年月を隔て、龍粋は少しの間水神殿の中を漂ってみることにした。
以前とさほど変わりないように見える神殿の長い廊下をゆらりと頼りなく進んでいると、小部屋から甘やかなささやきが聴こえてくる。
ふわりと心の淵をくすぐるられるような妙な感覚に誘われ、龍粋は特に警戒することもなく、その小部屋を覗き込んだ。
それを目にした刹那。
龍粋は、遥か以前に失ったはずの身体が深い灼熱を帯びたように錯覚し、慌てて元居た部屋へと戻った。
蒼の妖鬼と海神がこのうえなく深く愛し合っている場面に、思いがけず出くわしてしまったのだ。
あまりにも幸福なその事実に、龍粋の胸の内を破裂しそうな喜びが湧き上がる。
最愛の弟子であるあの海神が、蒼の妖鬼に見初められるなんて!
凄まじい幸せに胸をいっぱいに膨らませた龍粋は、跳ね上がる鼓動をどうにか落ち着かせると、無理やり浅い眠りについた。
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