双凶の妖鬼 蒼 ~再逢~

utsuro

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 少し投げやりに聞こえる言葉とは真逆に、あおの視線は柔らかく温かかい。

 「だが、彼呼迷軌以外の者には話すなよ。それはダメ・・・・。ショクやその仲間には知られたくないからね。ボクはあくまでも、海神の配下の神妖ということにしておきたい。」

 苦く笑いながら口にする蒼に、黒が苦しそうな呼吸の合間に悪態をついた。

 「だったら君は・・・・もう少し、大人しくすべきだ。誰が見たって・・・・怪しいこと、この上ない・・・よ・・・・・・」

 「黒っ。」

 ぐったりと力を抜き、そのまま意識を手放してしまった黒の手を、光弘は強く握りしめた。
 蒼は片方の眉を吊り上げ、呆れたようにため息をつく。

 「大丈夫。ボクの悪口を言って力を使い果たしたんだろう。眠っているだけだ。」

 その言葉にうなずきつつ、それでもなお不安な色をこれっぽっちも手放せずにいる光弘みつひろの瞳に、あおは柔らかく目を細める。

 思わず光弘みつひろの頭に手をのばしかけたあおは、小さく肩をすくませ手のひらを上に向けた。

 傍らで、海神わだつみがそっと息を吐き出す。

 「どうやら、もう一体・・・・強力な奴が戻ってきたみたいだ。」

 いつの間に戻って来たのか、黒の長い髪の隙間から鼻先を出したゆいが、肩の上で丸くなりながら、不機嫌そうに小さく鼻を鳴らした。

 「癒っ・・・・姉さん?」

 ずっと気になっていたのだろう。
 光弘はどう呼ぶべきか混乱しつつ、酷くほっとした表情を見せた。

 癒はすぐさま光弘みつひろに向き直ると楓乃子へと姿を変え、小さく吹き出した。

 「この姿の時はどちらでもいいけど・・・・。本来の姿の時は、癒と・・・・そう呼ばれていたいものだね。」

 楓乃子が光弘の頭をなでると、光弘はくすぐったそうに微笑んだ。

 あおは黒を光弘から預かり、小さな繭の中へと納める。

 「今日は遅い。あとはボクらに任せて、君たちはもう休め。」

 ひたすら不安な様子で光弘を見つめるている真也しんやに向かい、あおは苦笑した。

 「そんな顔をするな。神妖界最上位である海神に、双凶のボクたちまでそろっているのに、光弘を危険にさらしたりできると思うのか?」

 「そういうつもりじゃ・・・・・。」

 何かよほど気にかかることがあるのだろう。
 後ろ髪を引かれながら、それでも子供たちはどうにか納得したようだ。

 「光弘・・・・・待ってる。」

 「うん・・・・。」

 真也しんやの力ない言葉を最後に、長すぎる夜を超えた子供たちは、ようやく寝床へと帰っていく。

 一度に多くの人の熱が去ったことで、光弘みつひろの部屋はひんやりとした沈黙に包まれた。
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