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呼ばれてみれば 1
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「蒼っ。」
幸せすぎる温もりの中目覚めた海神は、焦りを帯びた声で、なによりも愛する者の名を呼んだ。
「・・・おはよう。」
そう言って海神の薄い瞼の上にそっと口づけを落とす蒼の表情が、この上なく嬉し気で顔色もとても良いものだったから、海神は少し安心して口を開いた。
「蒼・・・ありがとう。」
「その言葉は必要ないよ。むしろボクは謝るべきなんだから。・・・・・・君の優しさを無視して、ボクだけのわがままを・・・こうして通してしまった。」
蒼の腕の中で、海神が小さく横に頭を振ると、蒼はそれをそっと胸に押し付け、柔らかく止めてしまった。
立場が逆だったのなら、恐らく自分は海神のわがままを許してはやれなかっただろう。
今の言葉は偽りも濁りも無い、蒼のただの本心でしかないのだ。
「君は本当にいい子だ。・・・さぁ、本当はずっとこのままでいられたらいいんだけど。どうやらそうもいかないみたいだし・・・。先に不躾な誰かさんの用事を片付けてしまおうか。」
「うん。」
蒼はようやく結界を解くと、海神をしっかりと腕に抱いたまま、三毛の待つ本体へ意識を戻した。
ぐっと引き寄せるようにして身体へ精神体を戻し、ゆっくりと目を開ける。
白銀の髪を揺らし、音もなくしなやかな仕草で立ち上がった蒼は、海神へと手を差し出した。
「面倒なことは無しだ。このまま直接乗り込む。少し、急いでやった方がよさそうなんだ。」
「うん。」
立ち上がらせた海神の身体を胸に引き寄せ抱きしめると、蒼はそのまま彼らを呼ぶ者の元へと移動した・・・・・・。
さほど広くはないその部屋の中で、緊迫した様子の子供たちが立ちすくんでいるのが目に入る。
たった一日のうちにこれだけ盛りだくさんのイベントに恵まれてしまった子供たちに呆れながら、蒼はベッドの上の人影に目をやった。
光弘を大切そうに抱えた黒と蒼の視線がぶつかると、黒は小さくくいっと顎をあげ、「部屋の隅を見ろ」と生意気そうな表情でうながしてくる。
もちろん何かがいるのは分かり切っていたのだが、全くもって危険を感じるような相手ではなかったため、蒼はここでようやく、そこにいる異形に目を向ける気になった。
「エビ・・・・お前なのか。」
腕の中で、海神がにわかに身体を強張らせ、固い声音を響かせる。
その言葉で、蒼はこの異形が海神の臣下の成れの果てであることを知り、とたんに切ない気持ちになった。
一見すると海神の声も表情も常と変わらず、極めて冷たい非情のもののままだ。
だがそれは、海神の本心とは必ずしも同じものではない。
そしてそのことに、蒼が気づかないわけがなかった。
幸せすぎる温もりの中目覚めた海神は、焦りを帯びた声で、なによりも愛する者の名を呼んだ。
「・・・おはよう。」
そう言って海神の薄い瞼の上にそっと口づけを落とす蒼の表情が、この上なく嬉し気で顔色もとても良いものだったから、海神は少し安心して口を開いた。
「蒼・・・ありがとう。」
「その言葉は必要ないよ。むしろボクは謝るべきなんだから。・・・・・・君の優しさを無視して、ボクだけのわがままを・・・こうして通してしまった。」
蒼の腕の中で、海神が小さく横に頭を振ると、蒼はそれをそっと胸に押し付け、柔らかく止めてしまった。
立場が逆だったのなら、恐らく自分は海神のわがままを許してはやれなかっただろう。
今の言葉は偽りも濁りも無い、蒼のただの本心でしかないのだ。
「君は本当にいい子だ。・・・さぁ、本当はずっとこのままでいられたらいいんだけど。どうやらそうもいかないみたいだし・・・。先に不躾な誰かさんの用事を片付けてしまおうか。」
「うん。」
蒼はようやく結界を解くと、海神をしっかりと腕に抱いたまま、三毛の待つ本体へ意識を戻した。
ぐっと引き寄せるようにして身体へ精神体を戻し、ゆっくりと目を開ける。
白銀の髪を揺らし、音もなくしなやかな仕草で立ち上がった蒼は、海神へと手を差し出した。
「面倒なことは無しだ。このまま直接乗り込む。少し、急いでやった方がよさそうなんだ。」
「うん。」
立ち上がらせた海神の身体を胸に引き寄せ抱きしめると、蒼はそのまま彼らを呼ぶ者の元へと移動した・・・・・・。
さほど広くはないその部屋の中で、緊迫した様子の子供たちが立ちすくんでいるのが目に入る。
たった一日のうちにこれだけ盛りだくさんのイベントに恵まれてしまった子供たちに呆れながら、蒼はベッドの上の人影に目をやった。
光弘を大切そうに抱えた黒と蒼の視線がぶつかると、黒は小さくくいっと顎をあげ、「部屋の隅を見ろ」と生意気そうな表情でうながしてくる。
もちろん何かがいるのは分かり切っていたのだが、全くもって危険を感じるような相手ではなかったため、蒼はここでようやく、そこにいる異形に目を向ける気になった。
「エビ・・・・お前なのか。」
腕の中で、海神がにわかに身体を強張らせ、固い声音を響かせる。
その言葉で、蒼はこの異形が海神の臣下の成れの果てであることを知り、とたんに切ない気持ちになった。
一見すると海神の声も表情も常と変わらず、極めて冷たい非情のもののままだ。
だがそれは、海神の本心とは必ずしも同じものではない。
そしてそのことに、蒼が気づかないわけがなかった。
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