双凶の妖鬼 蒼 ~再逢~

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海神の羞恥 7

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 今となっては、あおについて海神わだつみが見逃すことなどあるわけがなかった。

 例え深刻ではないとしても、あおがわずかに懸念し始めるくらいには、妖力を使ってしまっているのだということを、海神わだつみははっきりと気づいていたのだ。

 妖力を使い過ぎれば心身ともに鉛のように疲れ果て酷く辛い想いをするし、もし使い切ってしまえば存在が儚くなることさえある。

 それなのに一切の躊躇をすることもなく、海神わだつみを癒すためにさらに大量の妖力を惜しげもなく使おうとするあお
 その、あまりにも健気過ぎる彼の姿に、海神わだつみは酷く切なくなってしまっていた。

 あおはそんな海神の切なさにはそっと見ないふりをして、白く滑らかな彼の手を愛おし気にとると、腕についた歯形を見つめた。
 すぐに淡く光を帯びた手のひらをそこに当て、紫に滲む酷く痛々しい傷を綺麗に消してやる。

 「あお。・・・もう、力を使うな。」

 「ダメだよ。・・・ねぇ、忘れてしまったの?きみに傷をつけていいのは、ボクだけだって言ったでしょう・・・・・・。」

 あおは傷の消えた腕に、柔らかく口づけた。

 「残念だけど、これのお仕置きは後だ。・・・きみは少し寝て。ちゃんと起こすから。・・・もうしばらく、このままでいさせてくれる?・・・まだきみに、触れていたい。」

 海神の胸の奥で、ふつりとふつりと甘い熱が湧き出してくる。
 柔らかい気持ちで胸をいっぱいに膨らませながら、海神わだつみは目を細めた。

 幸せでたまらないのだと・・・自分も同じなのだと、どうすればあおに伝えられるのか全く思いつかない。
 海神わだつみは愛おしい彼の、たくましくもしなやかな胸に顔をうずめ、背に絡めた腕で、ただ強くあおを引き寄せることしかできなかった。

 だが、そんな海神わだつみの素直過ぎる酷く追い詰められた仕草こそが、何よりも甘くあおの心を震わせるのだ。

 胸の内を海神わだつみの熱でゆったりとこのうえないほど深く温められながら、あおは彼の頭をしっかりと腕に抱いた。

 海神わだつみの髪に押し付けるようにして強く口づけ、甘く清涼とした愛おしい彼の香りを胸の隅々に行き渡るまでゆっくりと含む。
 海神のまどろみを妨げないよう、あおは柔らかな声で、瑞々しい彼の耳元にそっと声をかけた。

 「おやすみ。」

 「・・・・・・うん。」

 ああ言ってはいたが、あおが疲れ切っている海神わだつみを自ら起こすことなど、あるわけがないのだ。
 結局、一刻の後に海神わだつみが自ら重い瞼を上げるまで、幸せに包まれた二人きりの時間を妨げるものなど、なにも現れはしなかった。

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