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宵闇との対峙 9
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蒼の腕に添えられていた、海神のしなやかな指がピクリとわずかに曲げられる。
海神の表情こそ、冷たく凪いだ海のごとく冷淡なままに見えるが、瞳の奥ではぞくりとするような怒りの炎をぎらりと揺らめかせている。
無言のまま、凍えるよう目で海神は男を見据えた。
蒼にしてみれば、猫が背の毛を逆立てたのと同じくらいに、あまりにも分かりやす過ぎる海神の変化だ。
蒼は、自分を悪し様に言われたことに海神が激昂してくれているのだとすぐさま理解すると、そのまま押し倒して抱きつぶしてしまいたいほどの喜びに胸をはじけさせ、あっけなく上機嫌になった。
無意識のうちに攻撃のための印を組もうとしていた海神の白い手をそっと握りこむと、蒼は幸せで仕方がないという笑みを浮かべながら、こわばったしなやかな指を柔らかくほどいてやる。
久遠の父は目を細め、低く柔らかい声を聞かせた。
「随分と愛らしい。お前はこのような些細なことで怒ってくれるのか・・・・・・。」
まるでいずれ海神のその想いごと、全てが自分のものになるのだと言わんばかりの口ぶりで、なまめかしく顎の先をさすっている。
せっかくの上機嫌に水を差され、蒼は不機嫌そうに一度鼻を鳴らした。
だが、腕の中の海神がいまだに寸分も怒りを納めていないことを感じ、瞬く間にふわふわとした気分に返ると、彼の身体を酷く愛おし気に腕の中に包み込む。
その様子を余すことなく目の当たりにした久遠の父は、瞬きするにも満たない刹那、苛立ちというには異常なほどの激情をわずかに瞳にちらつかせたが、それを一切態度には出すことなく、冷静に続きを口にする。
「すまないな、海神。お前を怒らせるつもりなど毛頭なかったのだ。どうやらあまりにも久々となる再会に、歓喜に酔ってあらぬことを口走ってしまったようだ。さて・・・そろそろ本題へ移ろう。今はこれを、連れに来たのだよ。」
やや後ろを振り返り、冷たい仕草で顎を上げる。
「宵闇・・・。貴様、いつまでここで遊んでいる気だ。」
男の言葉に、宵闇は苦い表情を浮かべた。
「俺がどこで何をしていようが、貴様にはかかわりのないことだろう。」
恐らく、久遠の父は、さほど気の長い質ではないのだろう。
極めて面倒くさそうに首を横に振ると、投げやりに口を開いた。
海神の表情こそ、冷たく凪いだ海のごとく冷淡なままに見えるが、瞳の奥ではぞくりとするような怒りの炎をぎらりと揺らめかせている。
無言のまま、凍えるよう目で海神は男を見据えた。
蒼にしてみれば、猫が背の毛を逆立てたのと同じくらいに、あまりにも分かりやす過ぎる海神の変化だ。
蒼は、自分を悪し様に言われたことに海神が激昂してくれているのだとすぐさま理解すると、そのまま押し倒して抱きつぶしてしまいたいほどの喜びに胸をはじけさせ、あっけなく上機嫌になった。
無意識のうちに攻撃のための印を組もうとしていた海神の白い手をそっと握りこむと、蒼は幸せで仕方がないという笑みを浮かべながら、こわばったしなやかな指を柔らかくほどいてやる。
久遠の父は目を細め、低く柔らかい声を聞かせた。
「随分と愛らしい。お前はこのような些細なことで怒ってくれるのか・・・・・・。」
まるでいずれ海神のその想いごと、全てが自分のものになるのだと言わんばかりの口ぶりで、なまめかしく顎の先をさすっている。
せっかくの上機嫌に水を差され、蒼は不機嫌そうに一度鼻を鳴らした。
だが、腕の中の海神がいまだに寸分も怒りを納めていないことを感じ、瞬く間にふわふわとした気分に返ると、彼の身体を酷く愛おし気に腕の中に包み込む。
その様子を余すことなく目の当たりにした久遠の父は、瞬きするにも満たない刹那、苛立ちというには異常なほどの激情をわずかに瞳にちらつかせたが、それを一切態度には出すことなく、冷静に続きを口にする。
「すまないな、海神。お前を怒らせるつもりなど毛頭なかったのだ。どうやらあまりにも久々となる再会に、歓喜に酔ってあらぬことを口走ってしまったようだ。さて・・・そろそろ本題へ移ろう。今はこれを、連れに来たのだよ。」
やや後ろを振り返り、冷たい仕草で顎を上げる。
「宵闇・・・。貴様、いつまでここで遊んでいる気だ。」
男の言葉に、宵闇は苦い表情を浮かべた。
「俺がどこで何をしていようが、貴様にはかかわりのないことだろう。」
恐らく、久遠の父は、さほど気の長い質ではないのだろう。
極めて面倒くさそうに首を横に振ると、投げやりに口を開いた。
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