211 / 266
宵闇との対峙 9
しおりを挟む
蒼の腕に添えられていた、海神のしなやかな指がピクリとわずかに曲げられる。
海神の表情こそ、冷たく凪いだ海のごとく冷淡なままに見えるが、瞳の奥ではぞくりとするような怒りの炎をぎらりと揺らめかせている。
無言のまま、凍えるよう目で海神は男を見据えた。
蒼にしてみれば、猫が背の毛を逆立てたのと同じくらいに、あまりにも分かりやす過ぎる海神の変化だ。
蒼は、自分を悪し様に言われたことに海神が激昂してくれているのだとすぐさま理解すると、そのまま押し倒して抱きつぶしてしまいたいほどの喜びに胸をはじけさせ、あっけなく上機嫌になった。
無意識のうちに攻撃のための印を組もうとしていた海神の白い手をそっと握りこむと、蒼は幸せで仕方がないという笑みを浮かべながら、こわばったしなやかな指を柔らかくほどいてやる。
久遠の父は目を細め、低く柔らかい声を聞かせた。
「随分と愛らしい。お前はこのような些細なことで怒ってくれるのか・・・・・・。」
まるでいずれ海神のその想いごと、全てが自分のものになるのだと言わんばかりの口ぶりで、なまめかしく顎の先をさすっている。
せっかくの上機嫌に水を差され、蒼は不機嫌そうに一度鼻を鳴らした。
だが、腕の中の海神がいまだに寸分も怒りを納めていないことを感じ、瞬く間にふわふわとした気分に返ると、彼の身体を酷く愛おし気に腕の中に包み込む。
その様子を余すことなく目の当たりにした久遠の父は、瞬きするにも満たない刹那、苛立ちというには異常なほどの激情をわずかに瞳にちらつかせたが、それを一切態度には出すことなく、冷静に続きを口にする。
「すまないな、海神。お前を怒らせるつもりなど毛頭なかったのだ。どうやらあまりにも久々となる再会に、歓喜に酔ってあらぬことを口走ってしまったようだ。さて・・・そろそろ本題へ移ろう。今はこれを、連れに来たのだよ。」
やや後ろを振り返り、冷たい仕草で顎を上げる。
「宵闇・・・。貴様、いつまでここで遊んでいる気だ。」
男の言葉に、宵闇は苦い表情を浮かべた。
「俺がどこで何をしていようが、貴様にはかかわりのないことだろう。」
恐らく、久遠の父は、さほど気の長い質ではないのだろう。
極めて面倒くさそうに首を横に振ると、投げやりに口を開いた。
海神の表情こそ、冷たく凪いだ海のごとく冷淡なままに見えるが、瞳の奥ではぞくりとするような怒りの炎をぎらりと揺らめかせている。
無言のまま、凍えるよう目で海神は男を見据えた。
蒼にしてみれば、猫が背の毛を逆立てたのと同じくらいに、あまりにも分かりやす過ぎる海神の変化だ。
蒼は、自分を悪し様に言われたことに海神が激昂してくれているのだとすぐさま理解すると、そのまま押し倒して抱きつぶしてしまいたいほどの喜びに胸をはじけさせ、あっけなく上機嫌になった。
無意識のうちに攻撃のための印を組もうとしていた海神の白い手をそっと握りこむと、蒼は幸せで仕方がないという笑みを浮かべながら、こわばったしなやかな指を柔らかくほどいてやる。
久遠の父は目を細め、低く柔らかい声を聞かせた。
「随分と愛らしい。お前はこのような些細なことで怒ってくれるのか・・・・・・。」
まるでいずれ海神のその想いごと、全てが自分のものになるのだと言わんばかりの口ぶりで、なまめかしく顎の先をさすっている。
せっかくの上機嫌に水を差され、蒼は不機嫌そうに一度鼻を鳴らした。
だが、腕の中の海神がいまだに寸分も怒りを納めていないことを感じ、瞬く間にふわふわとした気分に返ると、彼の身体を酷く愛おし気に腕の中に包み込む。
その様子を余すことなく目の当たりにした久遠の父は、瞬きするにも満たない刹那、苛立ちというには異常なほどの激情をわずかに瞳にちらつかせたが、それを一切態度には出すことなく、冷静に続きを口にする。
「すまないな、海神。お前を怒らせるつもりなど毛頭なかったのだ。どうやらあまりにも久々となる再会に、歓喜に酔ってあらぬことを口走ってしまったようだ。さて・・・そろそろ本題へ移ろう。今はこれを、連れに来たのだよ。」
やや後ろを振り返り、冷たい仕草で顎を上げる。
「宵闇・・・。貴様、いつまでここで遊んでいる気だ。」
男の言葉に、宵闇は苦い表情を浮かべた。
「俺がどこで何をしていようが、貴様にはかかわりのないことだろう。」
恐らく、久遠の父は、さほど気の長い質ではないのだろう。
極めて面倒くさそうに首を横に振ると、投げやりに口を開いた。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
貧乏Ωの憧れの人
ゆあ
BL
妊娠・出産に特化したΩの男性である大学1年の幸太には耐えられないほどの発情期が周期的に訪れる。そんな彼を救ってくれたのは生物的にも社会的にも恵まれたαである拓也だった。定期的に体の関係をもつようになった2人だが、なんと幸太は妊娠してしまう。中絶するには番の同意書と10万円が必要だが、貧乏学生であり、拓也の番になる気がない彼にはどちらの選択もハードルが高すぎて……。すれ違い拗らせオメガバースBL。
エブリスタにて紹介して頂いた時に書いて貰ったもの
【R18】異世界で傭兵仲間に調教された件
がくん
BL
あらすじ
その背中は──俺の英雄であり、悪党だった。
物分かりのいい人間を演じてきた学生、イズミケントは現実で爆発事故に巻き込まれた。
異世界で放浪していたケントを魔獣から助けたのは悪党面の傭兵マラークだった。
行き場のなかったケントはマラークについていき、新人傭兵として生きていく事を選んだがケントには魔力がなかった。
だがケントにはユニークスキルというものを持っていた。精変換──それは男の精液を取り入れた分だけ魔力に変換するという歪なスキルだった。
憧れた男のように強くなりたいと願ったケントはある日、心を殺してマラークの精液を求めた。
最初は魔力が欲しかっただけなのに──
仲間と性行為を繰り返し、歪んだ支援魔法師として生きるケント。
戦闘の天才と言われる傲慢な男マラーク。
駄犬みたいな後輩だが弓は凄腕のハーヴェイ。
3人の傭兵が日常と性行為を経て、ひとつの小隊へとなっていく物語。
初投稿、BLエロ重視にスポット置いた小説です。耐性のない方は戻って頂ければ。
趣味丸出しですが好みの合う方にはハマるかと思います。
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
「俺の子を孕め。」とアルファ令息に強制的に妊娠させられ、番にならされました。
天災
BL
「俺の子を孕め」
そう言われて、ご主人様のダニエル・ラーン(α)は執事の僕、アンドレ・ブール(Ω)を強制的に妊娠させ、二人は番となる。
俺の番が変態で狂愛過ぎる
moca
BL
御曹司鬼畜ドSなα × 容姿平凡なツンデレ無意識ドMΩの鬼畜狂愛甘々調教オメガバースストーリー!!
ほぼエロです!!気をつけてください!!
※鬼畜・お漏らし・SM・首絞め・緊縛・拘束・寸止め・尿道責め・あなる責め・玩具・浣腸・スカ表現…等有かも!!
※オメガバース作品です!苦手な方ご注意下さい⚠️
初執筆なので、誤字脱字が多々だったり、色々話がおかしかったりと変かもしれません(><)温かい目で見守ってください◀
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
監禁されて愛されて
カイン
BL
美影美羽(みかげみう)はヤクザのトップである美影雷(みかげらい)の恋人らしい、しかし誰も見た事がない。それには雷の監禁が原因だった…そんな2人の日常を覗いて見ましょう〜
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる