双凶の妖鬼 蒼 ~再逢~

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宵闇との対峙 2

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 「海神わだつみ・・・。ボクの勘違いでなければそこにいる少女は・・・」

 「うん。」

 あおの動きを妨げることのないよう気遣いながら、海神わだつみはそちらへ注意を向ける。

 あおへ揺るぎない信頼を置いている海神わだつみは、宵闇よいやみの攻撃に対して欠片ほどの動揺も見せていない。
 落ち着いた様子で少女の正体をしっかりと見定め、口を開いた。

 「・・・ゆいだ。」

 一切の面識がないが、どこかで見たことのある顔をした美しい少女の姿だ。
 ゆいの化身なのだろうか。

 そんな中、あお海神わだつみの鋭い聴覚は、攻防の雑踏を遮り、少女と子供たちの会話を正しくとらえていた。

 「今のうちに、身体に戻れ。」

 どうやら少女は、宵闇よいやみの意識がこちらに向いている隙に、子供たちを闇の外へ逃がそうとしているようだ。
 真っすぐに真也しんやを見つめ、少女は続ける。

 「君が斬ってくれたお陰で、この領域に穴が空いた。今なら簡単に出られるはずだ。・・・それに、ここは危ない。」

 真也しんやが開けたという穴は、体裁よくふさがっているように見えるが、それは見た目だけのこと。
 縦に長く、ぎりぎりと引き裂かれた闇の帳は口を開けたままだ。
 そこから出ることは容易たやすい。

 横目でそれを確認しながら、あおはふっと笑った。
 あいかわらず、片腕は油断なく、宵闇の攻撃を極めて正確に打ち砕き続けている。

 「人の子もなかなかやるじゃないか。あんな穴を開けるなんてさ。・・・まだまだ、力の使い方が雑なのがもったいないところだけどね。」

 「・・・二年前から、彼らは妖月と執護あざねの元で修練している。」

 「・・・ん?きみは妖月なのに、そこにかかわらなくて良かったのか。」

 「・・・・・・。みずはに、代わりを頼んだ。妖力の使い方の基本であれば、彼女の方が彼らに近い感覚をもっている。」

 確かに、海神わだつみの言うことは最もであるが、つかの間いいよどんだことからも、彼の本心が別にあることは明白だ。

 海神わだつみは離れたくなかったのだ。
 あおの傍らを、片時も・・・・・・。

 海神わだつみの様子に、あおはくすりと小さな笑いをもらし、このうえなく愛おし気に空いている方の腕で彼の肩を抱いた。

 「なるほどね。どうりで人の子とは思えないほどの力を得ているわけだ。」

 「・・・だが、それにしてもこの成長は、あまりにも早すぎるように思う。」

 「君が気になるのなら、後で少し確認してみようか。」

 「うん。」

 少年たちの著しい成長に、素直に感嘆してはいるが、あお海神わだつみも、少女の意見には大いに賛成だった。

 今の彼らがここに居続けるのは、あまりにも危険がすぎる。

 得体の知れない視線が、なめまわすようにこちらを見ている嫌らしい気配がするのだ。
 この先さらに戦闘が盛り上がりを見せてしまえば、少しばかりやりにくくなるだろうというのが本音だった。
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