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三毛におまかせ 1
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一瞬の後に、蒼は海神を連れ、彼呼迷軌の中庭から、彼の館の中へと移動していた。
細くしなやかに見えて以外にも力強い彼の腕は、しっかりと海神の腰を抱えて離さない。
「もう!蒼様ったら!また門を使わずに入ってこられたんですか!」
頬を膨らませて駆け寄ってきた可愛い従者に、蒼は困ったように笑った。
「悪い。三毛。今回ばかりは勘弁してやって。少し、急いでいるんだ。」
蒼の表情はいつもと変わらず、口調も軽いままだったが、三毛は非常に敏感に主の異変を感じとった。
瞬時に表情を引き締めると、すかさず口を開く。
「蒼様。ご入用であれば、開いている部屋にご案内いたします。」
三毛が言うと、蒼は「ありがとう。」と笑顔で答えうなずいた。
三毛が「こちらへ」と言って、すかさず二人の前に出たところで蒼は海神を伴いすぐにその後を追った。
その足取りは極めて速く、明らかに何かに急かされている。
「三毛。君は本当に、話が早くて助かる。ボクたちは、少しここを離れるから・・・君に、全てを任せたい。」
「承知いたしました。」
主から与えられたその言葉に、三毛の心は喜びに震えた。
「全てを任せる」それは彼に仕える三毛にとって、何にも勝る最上の誉め言葉に違いないのだ。
蒼は蹴破りそうな勢いで案内された部屋に入ると、瞬く間に床一面の陣を描いた。
その陣の意味するところを知り、三毛の心はますます熱くふくらんでいく。
三毛は、主である蒼が「この館を全て任せる」と彼女に言ったのだと思いこんでいたのに、話はそれどころではなかったのだ。
この陣には、精神体を離脱させる術が組まれている。
精神体が離脱している間は、本体は留守となり完全に無防備になってしまう。
蒼は彼自身と、それ以上に大切にしている海神の身体を、留守にする間、三毛に託すと言っていたのだ。
「蒼様・・・・・・。くれぐれも、お気をつけて。」
「ありがとう。頼むよ。三毛・・・・・・。」
蒼は微笑むと彼女の頭を幼子にするかのような仕草で、ぽんぽん撫でた。
陣の上に海神と二人で座り込んだ蒼は、海神から刀を借り、そこにさっと指を滑らせる。
三毛がすでに部屋の外へ下がっているのを確認すると、蒼は陣の中央に自らの血で最後の呪を描き入れた。
瞬時に激しく赤い光を吐き出し始めたこの陣は、とにかく複雑を極めていた。
身体から精神体を抜き出すと同時に、本体の守りをこれでもかというほど厳重に、幾重にも固めていく。
しかもこの陣は部屋全体に、ご丁寧にも強烈な人払いの術まで施しているのだ。
普通の者では描くこともできず、発動する妖力すらも足りない。
それどころか、一体何が組まれているものなのかすら理解できないだろう。
二人の身体は精神体になったことで、若干色味が薄らぎ、儚く透けて見える。
蒼は海神をことさら繊細で大切なものだというように、しっかりと自らに引き寄せると印を組んだ。
細くしなやかに見えて以外にも力強い彼の腕は、しっかりと海神の腰を抱えて離さない。
「もう!蒼様ったら!また門を使わずに入ってこられたんですか!」
頬を膨らませて駆け寄ってきた可愛い従者に、蒼は困ったように笑った。
「悪い。三毛。今回ばかりは勘弁してやって。少し、急いでいるんだ。」
蒼の表情はいつもと変わらず、口調も軽いままだったが、三毛は非常に敏感に主の異変を感じとった。
瞬時に表情を引き締めると、すかさず口を開く。
「蒼様。ご入用であれば、開いている部屋にご案内いたします。」
三毛が言うと、蒼は「ありがとう。」と笑顔で答えうなずいた。
三毛が「こちらへ」と言って、すかさず二人の前に出たところで蒼は海神を伴いすぐにその後を追った。
その足取りは極めて速く、明らかに何かに急かされている。
「三毛。君は本当に、話が早くて助かる。ボクたちは、少しここを離れるから・・・君に、全てを任せたい。」
「承知いたしました。」
主から与えられたその言葉に、三毛の心は喜びに震えた。
「全てを任せる」それは彼に仕える三毛にとって、何にも勝る最上の誉め言葉に違いないのだ。
蒼は蹴破りそうな勢いで案内された部屋に入ると、瞬く間に床一面の陣を描いた。
その陣の意味するところを知り、三毛の心はますます熱くふくらんでいく。
三毛は、主である蒼が「この館を全て任せる」と彼女に言ったのだと思いこんでいたのに、話はそれどころではなかったのだ。
この陣には、精神体を離脱させる術が組まれている。
精神体が離脱している間は、本体は留守となり完全に無防備になってしまう。
蒼は彼自身と、それ以上に大切にしている海神の身体を、留守にする間、三毛に託すと言っていたのだ。
「蒼様・・・・・・。くれぐれも、お気をつけて。」
「ありがとう。頼むよ。三毛・・・・・・。」
蒼は微笑むと彼女の頭を幼子にするかのような仕草で、ぽんぽん撫でた。
陣の上に海神と二人で座り込んだ蒼は、海神から刀を借り、そこにさっと指を滑らせる。
三毛がすでに部屋の外へ下がっているのを確認すると、蒼は陣の中央に自らの血で最後の呪を描き入れた。
瞬時に激しく赤い光を吐き出し始めたこの陣は、とにかく複雑を極めていた。
身体から精神体を抜き出すと同時に、本体の守りをこれでもかというほど厳重に、幾重にも固めていく。
しかもこの陣は部屋全体に、ご丁寧にも強烈な人払いの術まで施しているのだ。
普通の者では描くこともできず、発動する妖力すらも足りない。
それどころか、一体何が組まれているものなのかすら理解できないだろう。
二人の身体は精神体になったことで、若干色味が薄らぎ、儚く透けて見える。
蒼は海神をことさら繊細で大切なものだというように、しっかりと自らに引き寄せると印を組んだ。
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